最近「暴虐の雲 光を覆い 敵の嵐は 荒れ狂う」なんて一人で口ずさむことが増えている。「ワルシャワ労働歌」である。そんなもんは知らない人が多いだろうが、昔の「革命歌」である。もちろん僕もそういう歌を歌って闘っていたわけではなく、要するに歴史的知識として知ってるだけである。「左翼運動」の中で歌われたもので、調べてみるとポーランドの運動家によって1880年頃に書かれ、1905年の第一次ロシア革命時のポーランド独立運動(当時ポーランドはロシア帝国の支配下にあった)で歌われたという。日本語の歌詞は鹿地亘(かじ・わたる)と出ていた。興味深い人物なんだけど、今は関係ないから省略する。
もちろんトランプ政権の「暴虐」を憂うあまり、つい「敵の嵐は荒れ狂う」と思うわけである。メロディが判らないという人は、検索すればYouTubeが出てくる。多分「インターナショナル」の次ぐらいに知られた革命歌だろう。それに続く歌詞は「怯まず進め 我等が友よ 敵の鉄鎖を 打ち砕け 自由の火柱 輝かしく 頭上高く 燃え立ちぬ…」となる。とにかく日々凄まじい暴挙が連続し、息つぐヒマもないが、もちろんアメリカ人もただ黙っているのではなく、4月5日には全米1200ヶ所以上で反トランプデモが開かれ、60万人以上が参加したという。それを聞くと「怯まず進め 我等が友よ」と言いたくなるじゃないか。
いま日本のみならず全世界で「トランプ関税」で大騒ぎである。それももちろん大問題で次回以後に書くつもりだが、1期目もひどかったが、予想を遙かに上回る事態が起きている。今までの「国際的常識」からすると、賛成とか反対とか以前に「想定外」というか、「あり得ない」発想なので理解不能である。それにこっちが「理解」しても、あっちは何も変わらなそうである。何でもトランプ流は「ディール」が好きらしいが、ディール(取引)というのは「ウィン・ウィン」(双方に利益)のはずである。トランプ政権は一方的に自分たちのみが「ウィン」な政策ばかりで、これではディールではなく「脅迫」なのである。
4月4日付朝日新聞では「武藤容治経済産業相は3日未明にもラトニック米商務長官とオンラインで会談したが、聞き入れてもらえなかった。交渉の糸口すらみえない状況に、経産省の幹部は「独裁政権のようだ」と皮肉まじりに話す」という記事が載っている。未だにこんなレベルの認識なんだから日本政府にも呆れてしまう。「独裁政権のよう」じゃなく、紛れもなく「独裁政権そのもの」なのである。大統領令で何でもやるつもりで、もはや議会も司法も眼中にないのである。
その結果、とても文明国ではあり得ない人権侵害が起きている。日本だって「人質司法」や「非人道的な入管」があり他国のことを言えるような立派な国じゃないけれど、マサチューセッツ州タフト大学のトルコ人大学院生ルメイサ・オズトゥルタという女性に起こったことは想像を絶している。合法的な留学生ビザで滞在していた彼女は3月25日に、突如覆面の私服男女に囲まれリュックと携帯電話を奪われた挙句、後ろ手錠を掛けられて拘束されたのである。この女性は大学の出版物でイスラエルのガザ攻撃を糾弾する記事の執筆に参加しただけだというが、本人に通告することなく突然に滞在資格が取り消されたのだという。
イスラエルを批判すると「ハマス支援」とみなして「テロ支援者」扱いするのは、言論の自由、表現の自由に反することだが、仮にそのことは問わないとしても、滞在資格を取り消したなら本人に「○日以内に出国すべし」と通告するのが常識だろう。その出国命令に従わなかったから拘束するという国はあるだろうが、何も知らせず路上で覆面集団が襲うというのは麻薬ギャングしかやらない手段である。(最近見た『エミリア・ペレス』を思い出す。)そして、そのまま彼女の行方は弁護士にも不明となって、後に3千キロ以上離れた移民管理施設で勾留されていたと判明したという。(東京新聞3.29・師岡カリーマのコラム参照)
いくら何でもアメリカは「自由の国」であり「三権分立」を世界で初めて確立した国家である。最後は連邦最高裁が憲法無視の独裁政権にストップを掛けるだろうと信じたいところではある。ところがさらに恐るべき事態が進行しているのである。トランプ大統領はかつて自分に関する様々な疑惑を追及した法律家たちを狙い撃ちする大統領令を連発しているというのである。ロシアとの関連疑惑を捜査した元検事のワイスマン弁護士の所属事務所は、大統領令で政府との契約を解除されたのである。
大統領令によれば、この法律事務所と取引がある企業と連邦政府との契約も見直すよう命じられたという。すでにそういう弁護士事務所が5つにも上るらしい。ただ連邦政府が契約を解除するだけならともかく、トランプに目を付けられたら他の顧客も失いかねない。こうなると誰もトランプ政権を相手取った訴訟なんか引き受けてくれないのではないか。もちろんアメリカだって弁護士なしでも訴訟を提起出来るだろうが、同じようなことは裁判官にも起こるだろう。最終的に連邦最高裁に持ち込まれたときには、第1期トランプ政権で任命された保守派優位の最高裁はトランプ寄りの判決になる可能性が高い。
それを考えると、多くの裁判官は反トランプ判決を下すことに尻込みするのではないだろうか。イスラエルが支配するヨルダン川西岸地区やガザ地区、あるいは中国にすっかり支配され尽した香港。それらのケースを見聞きしてきて、もちろんそれは認められないことなんだけど、打つ手がない状況である。しかし、アメリカが完全に独裁国家になってしまったとしたら、その重大性、危険性は他のどこの国とも比べようがない悪影響を世界中に及ぼすことになる。そして僕は第2期トランプ政権は政策的な間違いを越えた明らかな危険性を持っていると判断している。そのうち何とかなるだろうと傍観している段階ではない。
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