尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「北のミサイル」より「オスプレイ」が危ない-北朝鮮問題②

2017年08月15日 23時13分14秒 |  〃  (国際問題)
 「北朝鮮のミサイル」というと、今にも頭上に落ちてくるんじゃないかと本気だか何だか異様に心配する人がいる。そう心配していたら、交通事故にあう確率の方がずっと高いに決まってるんだから、おちおち外出もできない。じゃあ自宅に引きこもっていたとしても、隕石が落ちてくるかもしれない。一体、隕石が自宅に落ちる確率とミサイルが自宅に落ちる確率はどっちが高いだろうか

 まあ、それでも「万が一」ということは否定できないというようなことを言う人もいる。万が一というか、億が一というか、それは無論ないとは言えない。それは以下のような場合である。
①「日本が直接ミサイルの目標になる
②「日本上空を通るミサイルが途中で空中分解する
③「一段目のロケットの切り離しが遅れて、日本の領海内に落ちる

 ①はありえないが、それは後で考える。②と③も考えにくいだろう。技術的な確かさを担保できない場合は、なんだかんだ理由を付けて発射を見送るに決まってる。恩恵的に自分たちが実験を中止するならメンツは保てる。でも4発発射すると豪語して、多少着水地点がずれる程度ならともかく、大きな失敗を起こしてしまえば内外の信用失墜は計り知れない。(③の一段目ロケットが日本の領土内に落下した場合、その確率は非常に低いだろうが、直撃されたら大被害を出すのは間違いない。)

 だから、もし発射されたなら、それは「何ごともなく日本上空を通り過ぎて行く」可能性が圧倒的に高いはずである。ただ問題があるとすれば、日本海で米艦による迎撃作戦が行われて、それが中途半端に「成功」してバラバラになった部品が日本領土に落下するという事態である。もし迎撃作戦を行う場合は太平洋でやってもらいたいもんだと思う。

 日本政府は「国民の生命を守る」と意気込んで、ミサイル発射とともに避難するようなことを言っているわけだけど、それは無理だろうって。数分で通り過ぎて行くというのに。大地震による大津波は、何十分かの余裕があるとされる。集中豪雨による土砂崩れの場合でも、完全に避難するのは難しいではないか。「ミサイル発射で避難」って、一体マジメに国民の避難を求めているのか。

 日本国民の生命を守るというなら、どうして日本政府はオスプレイの訓練を認めているんだろうか? オスプレイ(垂直離着陸機V22=オスプレイは猛禽類のミサゴを意味する英語)だって、米軍の正式装備品なんだから、そうむやみに事故ばかり起こすというもんでもないだろう。でも今までの経緯から、相当の事故歴があるのは間違いない。昨年は沖縄で、つい最近はオーストラリアで事故が落ちた。ミサイルが来るなどと騒ぐ前に、オスプレイ事故対策の方もやらないとおかしい。

 もちろん、ミサイルやオスプレイよりも、大地震や集中豪雨の方がはるかに危険。さらに、住んでいる場所にもよるけど、日本国民大多数という意味では、事故や事件や災害で死ぬよりも、ガンや心臓病や脳血管障害や肝臓や腎臓などの疾病で亡くなる場合が多いに決まってる。ミサイルを心配する前に、自分の生活習慣を見直さないと生命を守れないという人の方が圧倒的に多いだろう。

 日本周辺で「大陸間弾道ミサイル」を持っている国は北朝鮮だけではない。ロシアも中国も持ってる。もちろんアメリカ軍にも装備されている。米軍は「日本を守る」側かもしれないけど、反中国的なことを言う人はかなりいるんだから、どうして北朝鮮のミサイルだけ心配するんだろうか。中ロは安保理常任理事国だから、「一応理性的に行動する」とあまり理由なく前提にしてるんだろうか。

 それに対して「北朝鮮は何をするか判らない恐ろしい国」ということなんだと思う。昔の「キューバ危機」の際は、キューバにソ連の核ミサイルが持ち込まれた。それにアメリカは猛反発したけど、米軍のミサイルはキューバに展開可能なんだから、アメリカは「自分でやっても、やられるのは嫌」という意識なんだと思うしかない。北朝鮮の場合も、その気になれば米軍はずっと前から北を攻撃可能である。それにいら立つ北側が自分で大量破壊兵器を開発してしまった。

 それは国際的に認められないけれど、一応「防衛的反応」として理解は可能なんじゃないだろうか。それは「容認できる」ということではなく、「道筋を理解はできる」ということである。これは大きく違うし、ちゃんと弁別しないといけない。だから「北朝鮮が日本をむやみやたらに攻撃する」という事態も起きない。そりゃあ、ものすごくたくさんの核兵器と長距離弾道ミサイルが余るぐらいあれば、「行き掛けの駄賃」的にやたらに発射する誘惑にかられるかもしれない。

 でも、北朝鮮は国力的に米軍に対抗できる軍事力を持つことはできない。「やられたら、やり返せるぞ」「核兵器も持ったんだぞ」を抑止力にできると思ってるけど、米軍を完全に撃破することはできない。確かに「大量破壊兵器」を開発はしてるけど、それは現在も将来も「米軍の先制攻撃に対する抑止力」以上のものにはならない。「虎の子」のミサイルを日本なんかに撃ち込んで、「自滅」するわけがないじゃないか。攻撃力を持ってるのは米軍なんだから、米軍を攻撃する方が優先である。

 つまり、北朝鮮は「恐ろしい国」かもしれないけど、「何をするか判らない」というわけではない。「拉致問題」もあって、日本では北朝鮮は日本を敵国としていると思っている人が多いのかもしれない。だが、「拉致」も韓国への浸透を狙った作戦の一環だった。(キム・ヒョンヒは日本人のパスポートを持ち日本人に成りすました。)非人道的で許しがたい出来事だが、独裁者からすれば「理解可能な作戦」だということになるだろう。むやみに「北のミサイルが怖い」なんて思ってるだけだと、国際問題の理解がずれてしまうのではないだろうか。
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