尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

日程をどうするか-都立高入選ミス問題⑥

2014年06月11日 23時57分44秒 |  〃 (東京・大阪の教育)
 さて東京の入選ミス問題。入選の複雑な問題点などは書いてきたので、その改善に関してどうするべきか、少し書いておきたい。現時点では、第一次募集の学力検査が、2月24日(火)と発表されているが、発表日は未定とされている。

 さて、自分の考えを先に書いておくと、「学力検査は22~25日の、水、木、金曜日のいずれかに行う」というのが一番いいのではないかと思う。発表日は、本来は一週間後が一番いいが、以後の日程が厳しくなるし、私立の二次募集などに影響するので、「学力検査の翌週の6日目」が良いのではないかと思う。

 ということで、来年の東京の学力検査日である24日は本当は変えた方がいい。理由は二つあり、一つは高校、中学の月曜日の授業確保である。もっとも中学の場合、この時点では私立高の入試や発表で、事実上中学3年の授業は平常には出来ない。高校でも、学年制の場合は、卒業を控えた3年(定時制では4年)の授業は終わり、卒業判定も終わっているはずである。だから、「高校1、2年生の授業確保」が一番の眼目となる。

 「学力低下論議」というのも「つくられた世論」ではないかと思うが、この10数年、授業確保の名目で生徒も教師も振り回されてきた。だけど、ただ授業時間だけ増やされても迷惑千万、「ハッピーマンデー」とやらの「学力低下政策」をそのままにしておいて、いたずらに他の曜日の授業をしてもムダ。学校行事などにも影響されるが、まあほとんどの学校では月曜日のクラスだけ極端に授業数が少ないのである。中高は教科担任制で、同学年の授業は一人の教師が全部担当している場合が多い。月曜日の授業が増えないと、学習内容が確保できない。だから、定期テストの試験範囲は「一番授業進度が遅いクラス」に合わせて決められる。できるだけ月曜日に行事等は入れない。そういう配慮をすべきなのである。

 入選前日は半日程度の授業をつぶして準備を行うことになる。だから「火曜日の学力検査」も望ましくはない。それに、カーペンターズじゃなくても「雨の日と月曜日は」気分が冴えないはずである。(今年は月曜から採点を開始したことがミス多発の一因かもしれない。)中学生の気分が一番冴えるのも、水曜、木曜あたりではないだろうか。受検する生徒のことを考えても、週の半ば頃に学力検査をもってきたいところである。(土曜日にやった年があるわけだが、生徒も教員も疲れているところに学力検査日を設けるべきではない。)ということで、都教委が「日で固定する」といった時に僕が質問したように、「曜日で固定する」という方が明らかに望ましいのではないか。

 日本の各地方では様々な高校入試のやり方があり、卒業式を先に行い、3月に新入生の選抜を行うところもある。だけど、東京では私立高校や私立中学が多く、近県私立高の入試、都内私立高の入試、都立高の学力検査と順番が決まっている。その間をぬって、都立の推薦、私立中の入試、都立中高一貫校の選抜などが組み込まれ、都立一次が終われば、私立の二次募集、都立の分割後期募集ともはや順番が変更できないほど、立て込んだ日程が組まれている。毎年、公私で生徒受入数の調整も行われ、私立も都立発表まで入学金納入を猶予するなど、様々な事情が入り組んでいる。だから、2月下旬に都立高校の一次募集を行うという大枠は変更が難しい

 ここで考えておくべき問題が幾つかある。一つは「推薦選抜のあり方」である。「都立高改革」により「学校の個性化」が進んだとして、推薦選抜制度が拡充されてきた。でも、学校によっては、推薦、分割前期、分割後期と3学期は入選漬けである。その度に準備がある。本番がある。採点があり、入力チェックがある。都教委は採点ミスの一因に「慣れ」とか「高校入試は受検生にとって1回しかない機会であるにもかかわらず、教員が、自分自身が行う採点業務が受検生の人生に影響するとの認識が希薄である」などと教員側に問題があるかに言っている。これがウソなのは明白である。「高校入試は受検生にとって3回もある」という仕組みを作っておいて、そういうことを言わないでほしい。

 現在の仕組みが現場にとってあまりにも負担が多いのは明白だろう。「推薦+一次募集」または「分割前期+分割後期」の2種類に統一すべきではないか。つまり、分割募集を行う高校は推薦選抜を行わなくていいのではないか。特に「普通科高校は推薦選抜はいらない」と思う。当初は商業科を除く職業科で実施され、やがて商業科に、そして普通科にも推薦選抜が広がって行った。しかし、コース制高校など特別な例外を除き、普通科はそれこそ一般的な教科を学習し、進路希望も大学進学が多いという学校である。「推薦」の意味はどこにある?入試を突破すればいいのではないか。例えば、都立高で最難関とされる日比谷でも、2割の生徒(63名)を推薦で合格させている。もし推薦制度がなかったら、難関私立を受験して、受かればそっちに行ってしまう生徒も多いだろう。早めに「日比谷高校に行きたい」という生徒を囲い込んでい置く必要も判らないではない。でも、本来は学力検査一本でもいいのではないだろうか。(ところで、スポーツ推薦などの面倒くさいシステムも、もう止めるほうがいいだろう。)

 もう一つ、今回の端緒を作った荻窪高校は「三部制定時制単位制高校」だった。学年制高校なら、進学校でなくても3学年の授業は2月上旬には終わり、一部の追加指導対象生徒は除いて、2月下旬には卒業判定も終わっているはずである。だから、卒業学年の授業を主に担当していた教員は、クラス担任などの仕事はあるとしても授業がない時期になる。(もっとも3年だけしか授業をしていない教員はほとんどいないと思うが。でも授業のほとんどが終わっている教員もかなりいるはずだ。)採点はそれらの教員が中心となり実施している学校が多いはずだ。ところで、単位制三部制の学校は、卒業学年だけの授業がほとんどない(と思う)。だから、採点担当者も授業を行わないといけない。それなら、三部制の単位制高校は、学力検査は行わないか、または3教科で行う。さらに言えば、「マークシート方式を試行する」といった対応を検討すべきではないだろうか。日程のことだけで長くなってしまったので、今回はこれで終わり、次回は「チェック体制」の問題を。ちょっと細かい話になり、多くの人には関心がない話になったかもしれない。
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