尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

リニア新幹線、いるのかな?

2013年09月19日 21時35分49秒 | 社会(世の中の出来事)
 JR東海が計画しているリニア中央新幹線の最終ルートが18日に発表され、来年度に着工されるとのことである。前から「リニアっているのかなあ」と思っていたけど、今回の決定を見て改めて考えて思うところを書いておきたい。

 まず僕は「時速500キロ、名古屋まで40分」を聞いた時に、すぐに「それは早すぎるでしょう」と思った。何で名古屋まで40分で行かなくてはならないのか。まずこの時点で、「いやあ、それはすごい技術だ、人類の夢の実現だ。」なんて思う人もいるのかもしれない。そういう人とは、立ってる基盤が違うと思う。そういう風に思う人もあっていいけど、世の中はいいことばかりは起こらない。だから夢のようなすごい技術が実現した時には、なんか良くないことも起こると僕は思うのである。それにいくら何でも、時速500キロなんて人間社会を生きる技術としては必要なんだろうか。(宇宙飛行をするんだったら必要だろうけど。)

 このリニア新幹線と言う新技術への根本的な疑問がある。僕も詳しく知らなかったのだが、電力をものすごく使うというのである。大阪まで全線開業時には、現在の新幹線の1.4倍の電力がいるという。(東京新聞9.19)JR東海の山田社長は「電力のない状態のシナリオに基づいていない。日本が立ち直るための手段が講じられるはず」と発言しているそうだ。これは「画期的な自然エネルギー」が開発されているだろうということではないだろう。多分、原発が再稼働されていて「安定的な電力」は確保されているだろうという意味なんではないか。

 また、南アルプスに長大なトンネルを掘るなど、9割が地下かトンネルという難工事になる。山田社長は「地質、地形も調査しているが、掘り返してみないと何とも言えない」と言っている。何とかなるメドがあるんなら、そういうだろう。できないということはないのかもしれないが、工期や建設費が大幅な見直しを迫られるのは必至と僕は思っている。日本列島を「逆くの字」に曲げている糸魚川・静岡構造線を掘り進もうというのである。そんなに簡単に行くのか。「日本列島をなめんなよ」という思いがよぎるんだけど。

 それに対し、もちろん利点も強調されている。JR東海としては、南海トラフの超巨大地震が発生して東海道新幹線が被害を受けた時に、日本の東西をつなぐ大動脈になるということを強調している。また事実上、首都圏と中京圏が合体し一大商圏が誕生するということも言われている。しかし、これらはどうも僕にはよく納得できない。それはリニア新幹線が出来ていれば、人の移動はできるだろう。でもリニア貨物なんてあるのか。ないんでしょ。「物流」が東名高速(または中央高速)に頼らざるを得ないのなら、経済治事情は従来とそれほど変わらないはずではないのか。人間だけ動けても、「モノ」が伴わなければ、「ストロー効果」、つまり中央が地方の人や情報を吸い上げるだけのものになる可能性が強い。

 また利点難点は別として、新技術には夢がある、その研究や着工から新しい技術や経験が生まれるんだという意見もあるだろう。確かに東京、名古屋間を40分で結ぶ必要は少ないかもしれない。でも「北京・上海間」とか「モスクワ・サンクトペテルブルク間」「ニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルス間」などがリニア技術で結ばれたら、それはその国に取って、また世界経済に取って大きな意味があるのではないか。その技術を日本が開発すれば、世界に売り込めるチャンスとなる。まさに「夢と実益を兼ねた新技術」だと言われると、まあそういう面もあるとは思う。

 でも僕は人口減少下の日本で、これほどの巨大プロジェクトがいるのか、どうしても疑問なのである。今、朝6時に東京駅から「のぞみ」に乗れば、7時36分に名古屋に着く。品川(リニア新幹線の始発駅)は6時7分なので、そこから1時間半かからない。どこが不足なのか。電磁波の問題、騒音の問題なども持ち上がってくるかもしれない。問題点や巨大建設費に見合う利点があるのだろうか。まあ、そういう問題点はいろいろあると思うんだけど、僕が一番言いたいのは、いまだって十分以上に新幹線は速い、もうこれ以上すごい新技術なんているんだろうかという点である。ごく素朴に考えて、時速500キロの乗り物を実用化する必要があるのだろうかということである。

(補足)1987年の「国鉄の分割民営化」からもう四半世紀以上がたっている。なんとなく「民営化は成功」みたいに思って(思わされて)いるかもしれない。「国営」か「公社」か「民営」かということは、経営形態の問題だから、うまく行くならどれでも二義的な問題だと思っている。しかし民間企業なら、株式を公開しそれを買い取った国民が、利潤を配当として受け取れたり経営を監視できなければならない。しかし、7社に分割された旧国鉄のうち、株が上場されているのはJR東日本、JR東海、JR西日本の3社に過ぎない。他の北海道、四国、九州の三島会社とJR貨物が上場される日は多分来ないのではないか。JR東海、つまり東海旅客鉄道の9月19日付終値は1万2580円。前日から310円上がっているが、今日は全般的に上昇した日なので、リニアが原因で大きく株価が動いたというわけでもないだろう。ちなみに年初には7040円だったので、大きく上げている。これは「アベノミクス」相場で、このくらい上げている会社は多い。配当はない。JR東日本は8610円で、3月期の配当は120円。JR西日本は4295円で、配当110円。一方、今年の夏、JR北海道の事故、故障がよく起こった。僕はリニアへの投資や株主への配当ではなく、国鉄は「分割」せずに、本州の会社が島の会社を支える仕組みの方が全国民的にはベターだったのではないかと思うものである。またそれは別として、配当もない会社がこれほどの巨大投資を行うのは民間会社としてどうなのかと思うものである。そんなカネがあるなら配当に回せと思う人は、ここの株は買わないのかもしれないが。
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