尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

2012年・キネマ旬報ベストテン発表

2013年01月12日 01時09分14秒 | 映画 (新作日本映画)
 11日は山田洋次監督の新作「東京家族」の試写に行っていて遅くなったので、ブログは書かない予定だったけど、キネ旬のベストテンが新聞のサイトにあったので、紹介しておきたい。なお、「東京家族」について簡単に書くと、これは小津安二郎監督の大傑作「東京物語」のリメイクだった。山田監督にとって松竹の先輩である小津監督にオマージュを捧げた作品だという話は知っていたけど、まるきりリメイクだとは思っていなかった。もちろん現代に合わせて変えている。さすがに子供5人は多すぎるので、子どもは3人。長男の医者の住んでいる場所は下町から「つくし野」(東急田園都市線)に。熱海の温泉が…まあ、これは見てのお楽しみ。原節子の役もお楽しみ。まあ非常に興味深く見られるが、原節子と笠智衆と杉村春子が、いかにとんでもなく素晴らしかったかは身に沁みてわかった。元の「東京物語」を見てから見るべきだろう。

 ところで、今回のキネ旬ベストテンを見て、前代未聞の大記録に驚いた。主演女優賞が安藤サクラ(「かぞくのくに」)、助演女優賞も安藤サクラ(「愛と誠」など)って、同じ人が両方取ってるじゃないか。安藤サクラ(1986~)という人は、奥田瑛二と安藤和津の次女だけど、園子温監督の4時間にもなる「愛のむきだし」でとても印象的な助演をしていた。助演タイプかと思っていたら、「かぞくのくに」という特別な設定の主演にめぐり合った。なお、主演男優賞は森山未來(「苦役列車」)、助演男優賞は小日向文世、監督賞は周防正行、脚本賞は内田けんじ新人女優が橋下愛新人男優が三浦貴大というのは、とても納得。

 で、肝心のベストテンだけど、キネマ旬報のベストテンは歴史が長く、何しろ1924年、つまり大正13年から続いている。(ただし戦時中に中断あり。)ベストテン選出はお遊びみたいなものだけど、キネ旬は様々な人が投票していて、一応権威の高いものとされている。毎日映画コンクールは選考委員会審議があるが、キネ旬ベストテンは投票を機械的に計算しただけなので、案外予想外の結果になることもあるが、そこも面白い。毎年2月5日に、ベストテン特集号が出るが、僕は今でもそれだけは買う。40年分くらいそろっている。

 日本映画は、(1)かぞくのくに(2)桐島、部活やめるってよ(3)アウトレイジ ビヨンド(4)終(つい)の信託(5)苦役列車(6)わが母の記(7)ふがいない僕は空を見た(8)鍵泥棒のメソッド(9)希望の国(10)夢売るふたり

 太字が見た映画で、リンクを貼ったのはブログで感想を書いたもの。「アウトレイジ・ビヨンド」を逃したが、これは前作も見てないので続編からは思った。来月早稲田松竹で2本やるからそこで見たい。「苦役列車」「鍵泥棒のメソッド」は、僕はそれほど面白くなかった。

 外国映画は、】(1)ニーチェの馬(2)別離(3)ヒューゴの不思議な発明(4)ル・アーヴルの靴みがき(5)ミッドナイト・イン・パリ(6)アルゴ(7)戦火の馬(8)ドライヴ(9)J・エドガー(10)裏切りのサーカス

 「アルゴ」はまだ見てない。「戦火の馬」は見逃し。「ドライブ」は書いたけど、他は書いてない。「ドライブ」と一緒に書いた「ヘルプ」は何故落ちてるんだろう。「ニーチェの馬」は僕には面白くなかった。「ヒューゴの不思議な運命」「ル・アーヴルの靴みがき」は悪くないけど、それほど評価しない。クリント・イーストウッドの「J・エドガー」は失敗作だと思う。フーヴァー長官について有名なエピソードだけつづられていて、知らない人には衝撃かもしれないが、この種の現代史に関心がある人ならだれでも知ってるような話ばかりで、伝記映画というものは難しい。まあ、「サッチャー」よりはいいけど。メリル・ストリープがそっくりだというだけの映画で、近年になくつまらない映画で、見なくていいというよりは、これでサッチャーという偉大な女性首相がイギリスにはいたんだねなどと思い込みかねないので、若い人は見てはならない映画だと思うくらい。こうしてみると、ベストテン的に評価される映画は、案外落としてないものだと思った。なお、20本中、13本は株主優待で見てるので、株もバカにできない。
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