尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

笹子トンネル事故ー「民営化」と「世襲」

2012年12月02日 21時59分19秒 | 社会(世の中の出来事)
 中央道笹子トンネル事故には、本当にゾッとした人が多いと思う。そんなに使ったトンネルではないが、僕も何度も通っている。数日前にはJR京葉線の電車が突然止まってしまい、2時間後に高架の線路を歩いて最寄駅まで行くという事故があった。東京で電車に乗っていると、「人身事故」が非常に多いだけでなく、最近は「車両故障」により動かなくなってしまうことが本当に多くなったように思う。昔はそういう事故が少なかった。利益至上主義なのか、「団塊」世代の退職後に技術が伝承されていないのか、現場力を削ぐことを続けて来てゆとりのない職場が多くなってしまったためか、とんでもないミスが多発する社会になってきている。外国のニュースを見ると、時々ビルが倒れたり、橋が落ちたりすることがある。中国の高速鉄道事故など今も記憶に新しい。そういうことは日本では少なく、政治家はダメでも現場の力が素晴らしいという社会だったのだが。「腐敗」のために工事費が着服されて手抜き工事が行われている…ということは日本では多分まずない。しかし、地震や台風の多い国だから、建設から時間が経って当初の想定より早く問題が生じている場合も多いだろう。メンテナンス面で予算や人手が足りなくなって、現場では心配していたけれど、下の声が上に通らないという職場も多いのではないか。

 最近は工場の大規模事故も多くなってきた。9月には姫路で日本触媒の工場で爆発事故があり消防士一人が亡くなったという事故があった。4月には三井化学岩国大竹工場で爆発事故があり社員一人が亡くなっている。昨年11月にも日ソー徳山工場で爆発事故と、本当にひんぱんに大事故が起こっている。こういうのも何か日本社会が深い所でおかしくなり始めている感じがして怖い。思えば、2005年4月25日に起こった、JR西日本の福知山線脱線事故が始まりだった。「国鉄民営化」というものが、「国労つぶし」であり労働運動への攻撃だったことは、今では中曽根元首相なんかも公然と認めていることである。それ以後、「民営化」と「派遣」で働くという意味が大きく変えられてしまった。「まともな労働運動」がない職場では、「過労死」と「事故」が多発するということが、われわれが見てきたこの20年間なのではないか。

 そう考えてみると、今回の事故をきっかけにして、小泉内閣で進められた「道路公団民営化」を改めて問い直す必要があるのではないか。高速道路(自動車専用道)を地域ごとに分社化しても、相互の競争は起こらない。社長や役員の数が一杯増えるだけで。まあサービスエリア整備の競争はあるかもしれないが。道路公団民営化を実質的に仕切っていた猪瀬某氏に是非見解をうかがいたいところである。

 それにしても小泉政権は「自己責任」を主張していたと思うけど、御大の小泉氏初め、福田康夫、中川秀直、武部勤など幹事長、官房長官を務めた人物がどんどん息子に「世襲」させていくのは、彼らの言っていた「自己責任」というのが何だったのかをよく表している。もちろん安倍氏も自身が世襲議員。世襲というのは、親が国会議員だったということではなく、後援会ぐるみ「相続税のかからない財産」を受け継いで、「父がお世話になりました」とだけ演説して議員になれるような仕組みを指している。「立候補の自由」がある、「小さい時から政治を見て来て経験がある」などと言う人がいるが、別にそのことを否定するわけではない。党が他の選挙区から出せばいいだけである。政治家になりたいんだったら、親の選挙区以外の「公募」に応じるように党で決めればいい。福田の息子は広島で、武部の息子は群馬で、中川の息子は東京でなどなど。小泉進次郎も小泉城下町みたいな横須賀で出ないで、自民がなかなか勝てない岡田副首相の三重や玄葉外相の福島で出ればいいのである。比例もあるんだからチャレンジすればいいではないか。
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