工藤鍼灸院・院長のひとりごと2

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お芝居から学ぶ

2007年07月17日 20時40分37秒 | 鍼灸・東洋医学
私、昨日は久しぶりの完全オフでございました。
朝から妻に連れられまして、家族みんなで温泉で大衆演劇を観て参りましたよ。妻と娘はこういうの大好きなんですよね。おばさん化も甚だしいなぁ(・_・;)
そのお芝居の最中に栃木県にも例の地震の余波が襲って参りまして、かなり長い時間横にゆさゆさと揺れておりました。あれだけ大勢の人がいる場所で大きな地震に遭遇すると結構恐いものですねぇ。すごくびっくりしました。

新潟県、長野県の皆様、地震で大変だった事と思います。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

でね、この手のお芝居を私は初めて見たのですが、演劇の出し物はお涙頂戴の人情モノ。定番中の定番の演目だそうでございます。
主人公が按摩さんを頼んだら、年老いた盲目の按摩のばあちゃんがやって参りましてね。実はそのばあちゃんが主人公の生き別れた母親だった・・・とまぁ、そんなお話でございました。主人公はばあちゃんの身の上話を聞いて自分の母親だと気付きます。盲目のばあちゃんも薄々気付いてはいるのですが、目が見えないので確かめようがない。お客さん、あんたは私の息子じゃないか!?とばあちゃんは詰め寄るのですが、母を捨てた身である主人公は「いや違う、そんな奴は知らない」とシラを切り通そうと致します。身勝手な理由で母を捨てた主人公の心の葛藤を見事に演じておりました。私の後ろで観ていたおばちゃんは号泣しておりましたよ(^^;)
妻がはまるのもよくわかります。思っていたより楽しかったです(^ー^)

さてさて。

昨日のお芝居では按摩さんのばあちゃんは目が見えないという理由から「これでもかっ!」というほどの貧乏を演じておりましたが、実は日本においては室町時代以前から視覚障害者の社会的地位は意外と高く保たれており、按摩や鍼医、琵琶法師、三味線奏者などの職がきちんと用意されておりました。その頃の名残りは現代の鍼灸師にも存在し、数年前までは健常者の鍼灸学校を増やしてはいけないという決まりがあったくらいです。日本に視覚障害者の鍼灸師が多いのは、そういう時代背景の影響でもあるわけですね。
盲人の最高位は「検校(けんぎょう)」という位で、管鍼の名手であった杉山和一もこの称号を得ていたらしいです。検校にもなると社会的地位もかなり高く、江戸時代には大名クラスと同じような身分だったのだとか。これ、かなりすごいですよ。

それでね、ここまでの内容だと「昔の日本は障害者も暮らしやすい世の中だったのかなぁ」って思いませんか?障害があっても健常者と同じ水準で暮らす事ができる素晴らしい世の中だった・・・少なくとも僕はずっとそう思っていたんです。

ところが先日、衝撃的なお話を伺って参りました。

江戸時代までの聴覚障害者は視覚障害者とは比べものにならない程に社会的地位が低く、極端に言えば「人間として扱われていなかった」のだとか。耳が聞こえないと人とのコミュニケーションが図れないから、というのがその理由なのだそうでございます。
ひどい話ですが、実際にそういう世の中だったのだとか。

そういえば、へレン・ケラーの有名な言葉にこんなものがありました。
「Blindness cuts you off from things.Deafness cuts you off from people.」
目が見えない事はあなたと物を切り離す事。耳が聞こえない事はあなたと人を切り離す事。

現代社会では視覚から得る言語情報の教育が進んでいます。文字の筆記や読解はもちろん、手話による会話だって成立する世の中です。しかしながら、それでもなお聴覚を失うと極めて大きな孤独感を無条件に感じるのだそうです。これは耳が遠くなったお年寄りの方でも同じ事で、耳が遠くなってから友達が減ったというお話は患者さんからもよく伺います。
何百年も昔には今のような聴覚障害者用の教育プログラムもないですし、一般人は文字の読み書きができない人も多かった世の中です。障害の程度として社会的に深刻だったのは物とのつながりを断たれる『視覚障害』ではなく、人とのつながりを断たれる『聴覚障害』だったんですね。
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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-07-17 21:52:20
人とのつながりを断っているという点では今の若者はある意味で障害を抱えているとも言えますね。

大変興味深い内容でした!
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Unknown (ひな)
2007-07-18 09:34:33
視覚障害者だって、社会的地位はそう高くないですよ、今も昔も・・・。
それは、資格を取って就職を探すときにとても感じます。
返信する
Unknown (院長)
2007-07-18 16:37:21
>ひなさん
お久しぶりでございます。
視覚障害者の方が就職先を探すのは大変な事だと思います。いざ就職しても、就業形態で晴眼者と差をつけられるというお話はよく伺います。ひなさんをはじめとする視覚障害者の方々のご苦労、お察しします。
職業柄、僕も多くの視力障害者の先生と接する機会がございます。やはり「職に就く」という段階では少なからず皆さんお悩みになっていらっしゃる様子ですが、僕の親しくさせて頂いているご開業の先生方は勉強熱心な方が多く、社会的不安を感じさせないほど性格的に前向きで、非常に明るい方が多い事に驚かされます。こういう先生だから患者さんに慕われるんだろうなぁと感心すると同時に、技術的な面も含めて見習わなければならない点がたくさんあるように日々感じております。

>Unknownさん
山田君、座布団一枚(笑)。
そういう考え方もできますねぇ~。
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