貯まったフェアプレーポイントでお徳にベスト16進出を手に入れませんか?
昨晩のポーランド戦。1点を先制されたものの、セネガルvsコロンビアの途中経過を知った西野監督の判断によりそのまま15分間ボールを回し続けて試合をクローズ。ブーイングを受けながら最少得点差で負けに行き、フェアプレーポイントでセネガルを上回り決勝トーナメント進出という、最高に皮肉が利いた試合でした。
これもすべてはコロンビアのおかげ。初戦はコロンビアが自滅してくれて、第2戦はコロンビアがポーランドをGL敗退に追い込み、第3戦ではコロンビアがセネガルを倒してくれました。日本とコロンビアは国交樹立110周年を迎える旧知の間柄。第3戦の西野監督はそんな親日国のコロンビアが勝ってくれることにすべてを賭け、試合に負けてギャンブルに勝ったのです。
それではここで
JFAが掲げる「リスペクト宣言」をご覧ください。
『「フェアで強い日本を目指す」。リスペクトは、世界からも認められた日本が誇る価値です。日本人らしさを出して戦っていくことが大事です。それがサッカー、スポーツの価値を高めていくことにつながります。こういったことはまさに今の社会に必要なことです。社会からサッカーが尊敬され、サッカーが文化となる。サッカーから、スポーツ、そして日本社会にこういった価値観を広めていきたいと考えています。』
フェアで強い日本。
日本人らしさ。
今の社会に必要なこと。
こういった価値観を広めていきたい。
これらを昨日の試合と照らし合わせると、なるほど矛盾点は見つかりません。勇ましく勝ちに行くより、目先の利益のために負けることも辞さない。これは今の日本社会を取り巻く価値観のひとつとなっているようにも思います。つまり西野監督はこのリスペクト宣言を粛々と遂行したに過ぎないのです。形骸化した強さを、見かけだけのフェアプレーを、JFAが望む形でロシアの地で実現させたわけです。JFAにとってこれほど優秀な監督はいないでしょうね。そうかそうか、これでよかったんだね。
ってなる!?いやーならないわ。
我が家の次男は昨日の試合終了後、「クソサッカーだったね」「長谷部より香川の方がイケメンだと思ってたけどそうでもなかった」「明日のテスト、中止にならないかな」などと呟きお布団へ消えて行きました。夢を抱いたサッカー少年の彼が、いろんな意味で不憫でなりません。
数年前、なでしこジャパンがロンドン五輪でドロー狙いの試合をしたことがありますけど、GL2位通過の場合は移動なし、1位通過だと長距離移動が発生するというシチュエーションで、勝つためにコンディション維持を重視した結果の決断でした。決勝トーナメントへ2位で進出するため、五輪で優勝するためにあえてドローにするという判断をしたわけです。
今回の西野監督の戦略はこれとはまったく違います。決勝トーナメント進出という結果に拘りW杯で「負けに行った」という試合。追い付くことすら放棄した事実。それにより目標は達成したものの、何か大切なものを失ったような気がします。
田嶋会長にお聞きしたい。
【JFAサッカー行動規範】の最初に記されている言葉は『最善の努力』。「どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする」とありますが、昨日の代表はどうだったでしょうか。あえて負けに行く試合をW杯という晴れの舞台で披露したのは、今の日本代表における最善の努力だったのですか。日韓W杯4位という好成績を残しながらその結果がまったく評価されていない韓国をJFAはどう分析しているのでしょうか。
文句ばかり言ってても仕方がないので、がんばって昨日の試合を擁護してみます。
ヨハン・クライフは言いました。「美しく敗れる事を恥と思うな、無様に勝つことを恥と思え」。でもこれ、実は負け惜しみの言葉なのです。クライフはどんなことをしてでも勝ちたかった。負けてしまった自分を正当化するための発言がいつしか曲解され、「無様な勝利より、美しく敗れる方がいい」と解釈されてしまったわけです。でも本当は勝った方が良いに決まっています。あの言葉の本質は「恥ずかしい勝ち方しやがって」というクライフの負け惜しみなのです。ですからクライフ流に考えれば日本の戦い方は正しいとも解釈できます。実に無様で恥ずかしい勝利でした。
…あれ?
でもよく考えてみると勝ってない。ドローでもない。ポーランド戦はただただ無様に負けただけなんですよね。他力本願で決勝トーナメントには進めましたけど、我々はW杯という大舞台でポーランドに無様に負けたのです。世界の評価がそれを物語っています。
『「日本の馬鹿らしさが歴史に刻まれる」「警告数とフェアプレーは同価値?」日本がフェアプレー規則の問題を提起』(GOAL.COM)
『日本代表、世紀の“茶番”に英解説陣から総スカン「次のラウンドでボコボコにされればいい」』(GOAL.COM)
コロンビアに勝った時、私はこんなことを書いていました。
「勝っても負けても結果以外は何も残らない、何も継承できない大会なのだから、試合だって内容なんてどうでもいい。とにかく結果だけに一喜一憂すれば良いんじゃないでしょうか。」
ギャンブルに勝ったに過ぎないベスト16。負け試合だったのだから喜べません。昨日の結果による決勝トーナメント進出をどう受け止めればいいのでしょう。
関東地方は史上最も早い梅雨明けとなりました。晴れやかなお天気とは裏腹に、私の気持ちはまだ整理がつきません。