チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

戦いすんで

2012年04月19日 09時23分05秒 | 日記
舞台で使ったきものや帯、下着や半襟が戻ってきた
仕事を終えてほっとした表情がある
下着は女優たちの体を毎日包んでいた
半襟はかすかな面積ではあるがライトを当てられ
存在感を示していた

帯は女優が動くたびに自分自身も演技するような輝きを見せていた
きものは言うに及ばず主役級

ご苦労様

楽屋では一つ一つ着付師がアイロンをかけ丁寧に扱っていた
小さな面積の半襟一枚にも毎日ベンジンで汚れを拭き
「明日もがんばれ」という思いでぴしっとたたむ
1週間でベンジン一本使い切っている

晒しの袋を作りその中に綿を入れてベンジンを含ませる
その布できものの襟や半襟をを叩くようにして汚れを取る
役者が脱いだ後は
彼らは着付師の手によってオーバホールされる
そして次の日に向けてパワーを蓄積するのだ

大正昭和初期のきものや帯の数々が
舞台にのりライトを浴び人様の拍手を受け
この世に生まれていたことを喜んでくれたに違いないと感じる
というのは
日に日にきものが輝いてきたからだ

どういう素性の人が古着屋にきものを売ったのか
其れは知るよしもないが
物言わぬきものや帯はただだまって流れに身を任せ
大舞台で脚光を浴びていた
元の持ち主は当然知るよしもない

演じるのは役者であるが
その役者の輝きを引っ張り出すのは衣装だと分かる

色がいい柄が面白い組み合わせが意表つく
衣装自身がこの瞬間をいかに楽しんでいるかが分かる
衣装は役者を客観的に見ていると言うことも

我を出しすぎる女優にはそれなりの衣装の報復もある
なかなか面白い

でも今は何も言わず主張もせず静かに横たわっている
お疲れ様
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