毎度おなじみの福岡ハカセのエッセイを続けて2冊読んでみた。
「生命と記憶のパラドクス」は一般週刊誌で最も売れている「週刊文春」連載のエッセイをまとめた本、一方「生命の逆襲」は「週刊AERA」に連載中の「ドリトル先生の憂鬱」をまとめた一冊である。(「遺伝子はダメなあなたを愛している」の続編)
毎週やってくる締切、テーマーも同じ”生命”、活字も殆ど同じ量の連載エッセイを、福岡ハカセはどうやって脳内で整理して、すみ分けているのか不思議である。フェルメール、動的平衡、レーウェンフック、昆虫・・・と、福岡ハカセ自身を分析するおなじみのキーワードがここでも頻出しているのだが、内容が全くかぶっていない。だから、何冊読んでも鮮度が落ちずに日々発見になる。そのうえ、驚異的なのはすべてにおいて質が高いことだ。文章力、表現力は勿論だが、身近な話題から生命科学の扉が開き、最後には鮮烈なオチが待っている。
考えてみれば、科学もののエッセイとして、米国のスティーヴン・ジェイ・グールドが有名であるが、日本でも過去には寺田寅彦や中谷宇吉郎のような物理学者にして情緒があり本質をついている名文筆家がいて、現代でも愛読されている。福岡ハカセの文章には、生物学者らしくセンス・オブ・ワンダーに満ちている。世界は、こんなにも美しく不思議なあり方だったことに気づかされる。
ところで、これだけ次々と書く本、書く本のすべてが売れまくっている福岡ハカセの著作物の中で、初版3000部で終わり、そのまま消えて絶版となった本がある。化学同人という小さいが化学・生物系にはおなじみの出版社から上梓された「ヒューマン・ボディ・ショップ」である。思い出すのも悲しいがハカセがとても好きだというその本を、私は偶然4年前に図書館から借りて読んでいたのだが、今日的な生命倫理の問題を含むとても読み応えのある本だった。それが、最近、リニューアルをして「すばらしい人間部品産業」として再出版されたとのこと。今度こそ、広く読まれることを期待したい。
そして現在、福岡ハカセはNYロックフェラー大学に客員教授として赴任している。彼にとって最も売れなかった本は、しかし生命は動的平衡であるという彼の主張の原点となった。そして、ハカセは理系を”卒業”して、マウスを使ったりする分子生物学者から文化や社会とのかかわりの中で生命観を深める生物学者になることを決意したそうだ!新生ハカセの登場を乞うご期待。
■アーカイヴ
・「動的平衡」福岡伸一
・「ノーベル賞よりも億万長者」
・「ヒューマン ボディ ショップ」A・キンブレル著
・「ルリボシカミキリの青」福岡伸一著
・「ダークレディとよばれて」ブレンダ・マックス著
・「フェルメール 光の王国」
・「遺伝子はダメなあなたを愛している」
□ハカセにお薦めしたい記憶にまつわる本
・「暗いブティック通り」パトリック・モディアノ著
・「奪われた記憶」ジョナサン・コットン著
「生命と記憶のパラドクス」は一般週刊誌で最も売れている「週刊文春」連載のエッセイをまとめた本、一方「生命の逆襲」は「週刊AERA」に連載中の「ドリトル先生の憂鬱」をまとめた一冊である。(「遺伝子はダメなあなたを愛している」の続編)
毎週やってくる締切、テーマーも同じ”生命”、活字も殆ど同じ量の連載エッセイを、福岡ハカセはどうやって脳内で整理して、すみ分けているのか不思議である。フェルメール、動的平衡、レーウェンフック、昆虫・・・と、福岡ハカセ自身を分析するおなじみのキーワードがここでも頻出しているのだが、内容が全くかぶっていない。だから、何冊読んでも鮮度が落ちずに日々発見になる。そのうえ、驚異的なのはすべてにおいて質が高いことだ。文章力、表現力は勿論だが、身近な話題から生命科学の扉が開き、最後には鮮烈なオチが待っている。
考えてみれば、科学もののエッセイとして、米国のスティーヴン・ジェイ・グールドが有名であるが、日本でも過去には寺田寅彦や中谷宇吉郎のような物理学者にして情緒があり本質をついている名文筆家がいて、現代でも愛読されている。福岡ハカセの文章には、生物学者らしくセンス・オブ・ワンダーに満ちている。世界は、こんなにも美しく不思議なあり方だったことに気づかされる。
ところで、これだけ次々と書く本、書く本のすべてが売れまくっている福岡ハカセの著作物の中で、初版3000部で終わり、そのまま消えて絶版となった本がある。化学同人という小さいが化学・生物系にはおなじみの出版社から上梓された「ヒューマン・ボディ・ショップ」である。思い出すのも悲しいがハカセがとても好きだというその本を、私は偶然4年前に図書館から借りて読んでいたのだが、今日的な生命倫理の問題を含むとても読み応えのある本だった。それが、最近、リニューアルをして「すばらしい人間部品産業」として再出版されたとのこと。今度こそ、広く読まれることを期待したい。
そして現在、福岡ハカセはNYロックフェラー大学に客員教授として赴任している。彼にとって最も売れなかった本は、しかし生命は動的平衡であるという彼の主張の原点となった。そして、ハカセは理系を”卒業”して、マウスを使ったりする分子生物学者から文化や社会とのかかわりの中で生命観を深める生物学者になることを決意したそうだ!新生ハカセの登場を乞うご期待。
■アーカイヴ
・「動的平衡」福岡伸一
・「ノーベル賞よりも億万長者」
・「ヒューマン ボディ ショップ」A・キンブレル著
・「ルリボシカミキリの青」福岡伸一著
・「ダークレディとよばれて」ブレンダ・マックス著
・「フェルメール 光の王国」
・「遺伝子はダメなあなたを愛している」
□ハカセにお薦めしたい記憶にまつわる本
・「暗いブティック通り」パトリック・モディアノ著
・「奪われた記憶」ジョナサン・コットン著