千の天使がバスケットボールする

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「起業家」藤田晋著

2013-10-27 15:28:59 | Book
起業家。
カイシャを設立して起業しても、10年生存率は70%。3割のカイシャが廃業もしくは倒産していることになる。しかし、この数字は、創設時にデーター収録をされている企業から算出されているので、実際は登記してから3年以内に5割のカイシャが活動していないともきく。起業するのは比較的簡単だが、その後、カイシャを継続して成長させて”起業家”になるのは実に困難な道でもある。

藤田晋さんは、利用者が多いアメーバーブログで知られる株式会社サーバーエージェントの代表取締役。2000年に当時26歳で史上最年少で東証マザーズに上場。5億4000万年前のカンブリア紀は、生物の爆発的進化がはじまった。この頃の海には、不思議な形の生物たちで溢れていて、当時の生物の化石はまるで「進化の試行錯誤」を物語るようだという。ネットバブルの時代は、まさにIT進化の試行錯誤を見ているのようだった。

現在、1973年生まれの彼は、40歳になるという。その間、10年以上、ネットバブル崩壊、業界の低迷からようやく光がさし再びネットバブルが盛り上がると、同じ六本木ヒルズ族で隣人だった村上世彰の村上ファンドは終焉。そして、朋友の堀江貴文によるライブドア事件、逮捕。私生活でもとびきり美しい女優と結婚し、結婚式の模様を報じるテレビのレポーターは、まるで小さな王国に嫁いだお姫様のようだと伝えていた。すぐに離婚してしまったが、相手の女優にとってはIT王国という一国の王妃になるような夜だったのかもしれない。

華やかな業界で、私生活はいろいろありそうだが、ずっと順調だったようにみえていた株式会社サーバーエージェントと経営してきたその社長。しかし、実際は、実にきわどい道をスリリングに歩いていたことがわかる。業界自体の低迷もさることながら、買収話もされるお誘いから、する持込案件まで。会社の黎明期からライバルでありながら尊敬もしていた親友の逮捕。危険な誘惑も甘いお誘いもあり、そんな混迷な若過ぎるカイシャの中でいらだち、怒り、そして自身の社長の退任までかけたアメーバーブログへの傾斜。

平凡なサラリーマンの息子として福井県で育ち、実直で温厚そうな風貌からは想像できなかった強靭なタフさが伝わってくる。又、謙虚ながらアグレッシブに果敢にせめる人。そして狂おしいほどの情熱。経営者というよりも「起業家」を名乗る彼の情熱は、周囲の人をも熱狂にまきこんでいくのだろう。しかも、自慢めいた印象はないのだが、、成功者への報酬のようなトロフィー妻、最高級のマンション、高級車、芸能人との交際や財界人とのつながりも魅力的に待っている。起業をめざす人にとっては、彼はカリスマでありながらも言葉使いも普通の青年のようで身近に感じるかもしれない。

本書を手に取ったのは、実は興味の対象が藤田晋さん個人でもなければ会社でもなかった。実力主義で社員の入れ替わりが早いと聞くIT業界の中で、株式会社サイバーエージョエントは終身雇用制をうちだした。これまで、優秀な人材をヘッドハンティングしても、企業風土になじむのに時間がかかり、又そういう人は育てば会社を離れていくのを見ていて、自社で育てて長く勤めてもらった方が会社にとってもよいことに気がついたからだ。そして、IT業界の会社自体が昔の高度成長期の会社のようなものだから、終身雇用制がふさわしいという。従来の会社への忠誠心を求めるわけでも、社員を家族と感じている度量もないのが今時だと思うが、その結果、社内結婚が増えたという思わぬ効果?もあったそうだ。

今、株式会社サーバーエージェントには、おしゃれで公私ともに全方向に手を抜かない「キラキラ女子」がその中核を占めていると日経新聞でもとりあげられている。藤田社長は「顔採用」とよく言われているそうだが、勿論こんな噂は否定している。こういった情熱的な社長のもとでやりがいのある仕事、仕事を楽しめる女子が集まり会社を支えているのだろう。公私ともに充実している女子はキラキラしている。
ちなみ、「10年以上生き残る会社」の条件として、

1.先駆者として早く参入していること
2.自社のコアコンピタンスを認識して資源を集中投下していること

そして最後に経営者が明確にヴィジョンを打ち出していることだそうだ。