千の天使がバスケットボールする

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『キャロル』

2016-09-25 16:59:24 | Movie
人類はいつから恋愛感情を知ったのか。
そんな素朴な疑問から、つい最近知ったのだが、変形菌に詳しい方によると、変形菌は雌雄が明確にわかれていないためにプラスとマイナスという表現を使うそうだが、プラスどうしでつながっていく同性愛のような行動をとる変形菌が必ず出現するとのこと。えっっ!あの単純な変形菌で、とかなり驚いたのだった。

1952年のニューヨーク。
クリスマスシーズンを迎えたハイクラスなデパートで働くテレーズ(ルーニー・マーラ)は、美しい女性に目を奪われる。ミンクのコートをはおった女性(ケイト・ブラシェット)、透明な肌に鮮やかな真紅の口紅、そして輝く金髪が映えるその人はキャロル。そのキャロルの娘へのクリスマスプレゼントとして鉄道の模型をすすめるテレーズは、写真家を夢見る平凡で貧しい娘。そんなテレーズの人生を変えたのは、キャロルが売り場に忘れていったまだぬくもりが残っているようなグレーの皮の手袋だった。。。

アメリカという国の代名詞は、いつの頃か「自由な国」というキャッチフレーズである。
しかし、1950年当時は同性愛者は、社会的に許されない存在だった。そんな社会で出会ったキャロルとテレーズ。一目でキャロルに心を奪われたテレーズが、その心の動きが初恋であり、又、忘れ物の手袋を自宅まで届ける情熱が、まぎれもない激しい恋なのだということすら気がついていない。しかし、社会に居場所を許されないふたりは、心を自ら葬るしかないのだろうか。

キャロルとテレーズ。すべてが対照的なふたりが、対極の軸となり物語が進行していく。それぞれの衣装や暮らしぶり、たたずまい、ふるまい、それらがお互いの魅力をひきたて美しく物語りはすすんでいく。しかも、車でふたりが逃避行のように南に向かって旅にでる場面は、まるでレトロな絵画のような美しさに少しずつ緊張感がはらんでいく。脚本、衣装、背景を含めてまぎれもなく名作であることを確信してくれる場面の数々は、『エデンの彼方に』を彷彿させて、同じ監督だったということを後で知った。そして何よりも主演を演じるケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの素晴らしい演技がいつまでも余韻を残す。


「やっぱり、ある一定の確率で同性愛者って現れるのよねぇ~。」
そう微笑んで彼女は、変形菌の観察を続ける。そして、キャロルとテレーズの最後の決断は、映画を観る私たちに、自分の人生を歩むことの大切さを思い出させてくれた。

原作:キャロル『(CAROL)』
監督:トッド・ヘインズ
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ
原作:パトリシア・ハイスミス

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