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パレスチナのガザ地区と呼ばれる地域(英語ではガザ・ストリップ)は、現在イスラエルの占領下におかれている。幅10キロメートル、長さ40キロメートルの細長い長方形のわずか約360 km2ほど(東京23区の6割)の地域に150万人の住民が生活しているが、約7割の人々はイスラエル領地域から住居を追われて避難してきたパレスチナ難民である。このような事情で、ガザが抵抗の拠点として不幸な歴史がつくられてきたのは事実である。作家のサラ・ロイのご両親は、ホロコーストから奇跡に近いような確率で生き残ったポーランド系ユダヤ人の移民で、彼女自身は1955年に米国で生まれた。そのような事情を背負ったユダヤ人というバックボーンをもちながら、尚且つホロコーストの苦難の体験を両親から受け止めながら、著者はイスラエルのパレスチナ占領を痛烈に批判する研究者である。本書を読んで、私としては”信頼のおける”研究者とも言いたい。
彼女の優れているところは、なんといっても1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の間で同意されたオスロ合意(「暫定自治政府原則の宣言」)の巧妙なパレスチナ側の戦略と欺瞞を見事に喝破している点にある。
1.イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互に承認する。
2.イスラエルが入植した地域から暫定的に撤退し5年にわたって自治政府による自治を認める。その5年の間に今後の詳細を協議する。
この和平合意とも語らえる握手は、結局、パレスチナ自治政府の樹立後、イスラエルの都合のよい時だけあたかも巧妙にガザ地区が占領下には置かれていないかのように、相手を独立した主権として扱い、恩知らずのパレスチナ人が平和を望む小さなイスラエルを攻撃する犯罪者というイスラエルの脚本どおりにプロバガンダを推進してきた。ハマース政権によるイスラエルへの攻撃は、殆どイスラエルの軍事行動への応酬なのだが、イスラエル軍の攻撃の報道はされずに、民間人を含む多くの犠牲者を伴うハマース側の幹部暗殺事件も正当な一方的措置と軽視され、事実解明に国連ものりだしてきたのはつい最近のことである。著者は、この「オスロ合意」がイスラエルにとって都合よく何度も使われてきたと具体的に指摘していく。また、ブッシュ政権の置き土産として07年開催された中東和平国際会議で決まった80億ドルもの口封じの援助金には、対テロ政策の費用が含まれている。これによってハマースなどの反イスラエル分子をテロ対象者として、パレスチナ人がパレスチナ人による占領への抵抗を取り締まるシナリオができた。スポンサーは、国際社会で新聞などの報道を文字通りに読み流す我々である。観客のチケット代、すなわちパレスチナへの経済援助は、輸入品の多くがイスラエル製品であることから、確実にイスラエルの経済(だけを)を予定どおり底上げしている。
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本書を読んで思い出したのが、評論家のパレスチナ人であるエドワード・W・サイードとイスラエルに移住したピアニストのダニエル・バレンボイムとの対談「音楽と社会」である。多くの示唆を含んだこの本もお勧めしたい。
イスラエル側の手続き変更により境界線でじっと待たされる『シリアの花嫁』。最後に彼女は、勇気ある一歩を踏み出すという楽観的な展開で映画は終わっている。古い家父長制度をめぐる夫婦間の争い、アラビア語とヘブライ語の混在、イスラエル社会に同化して進学していく若者、ロシア人の妻をもつ異文化への拡散など、日本にもありそうな多くの”境界”が描かれていて、地味ながら作品の評価が高いのは当然だろう。しかし、優れた映画の感動が本質をそらすことにならないようにするためにも、「ホロコーストからガザへ」は参考になる。
■こんなアーカイヴも
・「バレンボイム/サイード 音楽と社会」A・グゼリアン編
・音楽と和平を考える
・「なぜアーレントが重要なのか」
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【イスラエル軍、准将ら将校2人を処罰 ガザの人口密集地攻撃で】
2010年2月2日エルサレム(CNN)より
イスラエル軍が2008年末から09年1月に実施したパレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃で、同軍は1日、人口密集地域への砲撃を許可したとして将校2人を処罰したと発表した。国連への報告書で明らかにした。
処罰されたのは准将と大佐の2人だが、処分の内容は不明。ガザ住民の生命を脅かす方法を命じたことは権限外の決定と処罰の理由を述べている。国連は、砲弾は国連パレスチナ難民救済事業機関の現地本部にも着弾したと主張している。同機関の敷地内には当時、600─700人の住民が避難していた。 国連は、砲撃には非人道兵器とされる白リン弾も使われたとしているが、イスラエル軍報道官は将校2人の処罰は白リン弾の使用とは無関係と地元紙に説明している。 ガザへの攻撃では、パレスチナ人約1400人、イスラエル人13人が死亡。国連人権理事会調査団は先に報告書を発表し、このガザ攻撃や同自治区を支配するイスラム強硬派ハマスによるイスラエルへのロケット弾攻撃も戦争犯罪に同等と結論付けていた。
イスラエルは、ガザでの作戦はハマスのロケット弾攻撃から国民を守るために必要で相応だったとし、国連人権理の報告書に反論していた。 10/2/2