宇宙のこっくり亭

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中国の思想

2011年10月31日 | 東洋思想

中国の思想といえば、「儒・仏・道」の三教だ。日本でも神道と仏教が混ざりあってコンガラがっているように、中国でも、儒教・道教・仏教の三教がフクザツに混ざりあっている。

良くも悪くも、現実主義者だというのが、中国人の特徴。中国と言っても広いけど、全般的な傾向として、中国人は伝統的に「この世」しか見ていない。

インド人は輪廻転生、イスラム教徒やキリスト教徒は天国や地獄を、大昔から気にしてきた。それに比べて、中国人は、もともと「あの世」にあまり関心のない人々。これについては、「中国は気候風土に恵まれているから、砂漠や熱帯のような厳しい環境に生きる人々と違って、あの世に憧れなくてすんでいた。だから、あの世の話に興味がないのだろう」と言われている。

そんな中国人の宗教は、なんといっても「道教」だ。道教の特徴は、「不老長生」を説くこと。元気で長生きして、子孫を増やし、この世において繁栄することを目指している。仙人の修行をするのも、道教だ。不老長寿の仙丹を練ったり、気功パワーで瓦を叩き割ったりするのも、道教だ。

そんな道教と並ぶ存在なのが、「儒教」。これは、もともと「先祖供養」がメインの宗教だ。 巫者が出てきて先祖の魂を招く、「招魂」の儀式を行う。そうすると、先祖の魂はときどき、この世に戻ってこれるのである。そして自分も、子孫に供養してもらうことを期待する。こうして代々、受け継がれていく。

その後、孔子が出てきてから、儒教は学問として体系化されていった。これまた、父母に孝養し、先祖を祀るのが人間としての務め。

儒教も道教も、基本的に「この世」しか見ていない。「あの世」とか「生まれ変わり」とか、そういう話をしないのが特徴だ。

そんな中国人を大きく変えたのが、インドから伝来した仏教。この仏教は、海を渡って東南アジアから、砂漠のシルクロードを通って中央アジアから、それぞれ中国に入ってきた。これは、三国志の劉備や曹操より、ちょっと後の時代のこと。

仏教のおかげで、中国でも「輪廻転生」が知れ渡るようになった。この世のことしか考えないのが特徴だった中国人が、良いところに生まれ変わりたい、極楽往生したいと願うようになったのだから、まさしく思想革命。「来世はどこに生まれ変わるか」というような話が中国人の日常会話にも出てくるようになり、なんだかインド人みたいになってきた。

仏教が大流行して、すっかり仏教国になった中国。南も北も、お寺だらけになった。あまりにも大勢が出家して坊さん・尼さんになってしまうので、このままじゃ世の中が成り立たんわいとばかりに、皇帝が廃仏毀釈をなんども起こした。それでも、しばらく経てば元通りになった。

すっかり仏教国と化した中国。ところが、そのままでは終わらなかった。なんと、千年前の宋の時代あたりから、儒教が、だんだん巻き返してきたのである。このままじゃ、仏教にとてもかなわないと知った儒教の先生方は、思い切った巻き返しに出てきた。

なんと、儒教の先生方は、もとはといえば占いの本だった「易経」を、根本経典に据えることにした。易者が、筮竹をふるって「吉兆の卦が出ましたぞ・・・!」とかなんとか言ってる、あれだ。占いの本とはいえ、バカにできない。「陰陽五行」の世界観の元ネタが、この易経なのだ。“yin & yang”といえば、欧米人でもみんな知ってるほど有名。これこそ、中華伝来の世界観とするにふさわしいアルよ・・・と、儒教の先生方は判断した。
 
こうして、儒教は、陰陽2元の世界観をベースにして、新しい儒教に生まれ変わった。新たな東洋思想の始まりだ。やがて、それは日本や朝鮮も巻き込んで、東アジアの正統になっていった・・・。

というわけで、中国の宗教史の流れをざっくりと言えば、大体そんな感じになる。