きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

トランプ現象② 経済政策 レーガン再来

2016-11-18 13:09:18 | 国際政治
トランプ現象② 経済政策 レーガン再来
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さんに聞く


派手な立ち居振る舞いで、国民を「扇動」し、大統領の座を射止めたドナルド・トランプ氏ですが、彼の政権では、新自由主義的経済政策に逆戻りする可能性が高いといえましょう。上下両院は、共和党が多数を握りました。民主党オバマ政権によって8年間実行されてきた政策がすべて消え去り、もとのもくあみになることが予想されます。
トランプ氏は、オバマ大統領による大統領令をすべて撤廃するといっています。オバマ大統領は、共和党のいやがらせで法律にならなかった「中間層重視の経済政策」を大統領令によってさまざまに実施してきました。こうした措置が廃止される可能性があります。
トランプ氏は、レーガン大統領を理想の大統領としているようです。レーガンとそれに続くブッシュ共和党政権(1981~93年)は12年間に、軍拡によって、ソ連を解体に追いやる作戦をとりました。トランプ大統領は、ISは、オバマ政権がつくり出したなどというデマを吹き散らしながら、IS退治に軍事的行動を起こそうと考えるでしょう。軍事費の上昇は避けられません。



トランプ氏当選に抗議する高校生=9日、カリフォルニア州バークレー(ロイター)

法人税引き下げ
経済政策でトランプ政権が実行するのは、法人税減税です。富裕者優遇税制の強力な実行です。2013年1月に成立した、米国納税者救済法によって、レーガン政権以来ようやく富裕層増税の第一歩が記されたのですが、レーガン減税の再来によって、連邦財政赤字の拡大は不可避です。米国社会の格差と貧困がいっそう拡大されることが懸念されます。
また、財務長官として、ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースなど大手金融機関の最高経営責任者や経営幹部の名が挙がっています。そうなれば金融制度の規制緩和がもたらされることになるでしょう。
10年にオバマ政権は、ドッド・フランク法を成立させ、ポルカー・ルールの制定によって、金融危機の再来を防ごうとする法律ができました。共和党の選挙綱領では廃止がうたわれています。金融の自由化・規制緩和で再び金融危機が勃発(ぼっぱつ)する可能性が生み出されるでしょう。

オバマケア廃止
さらに、10年に成立し、14年に本格的導入がおこなわれたケア適正化法(オバマケア)が、廃止に追い込まれる可能性があります。オバマケアは、確かに完全な医療保険制度ではありません。民間の保険会社から保険を購入するのが基本ですから、単一基金の国民皆保険制度とは異なります。保険料の高さも問題となっていますが、これを国民皆保険制度の方向に改革するのではなく、逆方向にもっていかれる可能性があります。オバマケアは確かに問題も多い健康保険ですが、実際に動き出しています。これを廃止して、かつてのように働き盛りの人々を再び無保険状況に追いやる事態については、多くの批判が噴出するでしょう。
また、トランプ氏は4日に発効したパリ協定から離脱することを考えています。20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みとなる重要な協定です。今世紀中に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることをめざします。ジョージ・W・ブッシュ政権はクリントン政権下で成立した京都議定書から01年に離脱を宣言しました。トランプ氏は同じことをしようとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月17日付掲載


白人中間層の不満を解決すると期待を集めて当選したトランプ氏。
しかし、実際にやろうとしている事は、富裕層を優遇して中間層を痛めつける政策。
まさに「だまし討ち」です。
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トランプ現象① 米社会の危機感を反映

2016-11-17 14:14:56 | 国際政治
トランプ現象① 米社会の危機感を反映
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さんに聞く


排外主義的な主張を繰り広げてきたドナルド・トランプ氏が次期米大統領になったことについて、アメリカ経済の研究者、萩原伸次郎・横浜国立大学名誉教授に聞きました。

トランプ氏を大統領候補に選出した7月の共和党全国大会は従来とまったく様相が異なりました。米国社会の危機が共和党大会に反映し、今までまったく政治経験のない、実業家であるトランプ氏が選出され、大統領に当選したといえます。
トランプ氏は、候補者選びの段階から、従来の共和党主流派候補を派手な立ち振る舞いでこき下ろしました。ブッシュ元大統領が起こしたイラク戦争は間違いだったと批判。グローバリズムには懐疑主義的立場を示し、労働者の利益にならない環太平洋連携協定(TPP)に反対しました。今までの共和党では考えもつかない政治姿勢を「吹き散らし」、共和党一般党員の支持を獲得してきました。




(左から)米次期大統領に選出されたトランプ氏とプリーバス共和党全国委員長、ペンス次期副大統領=9日、ニューヨーク(ロイター)

共和党信頼失う
ブッシュ元大統領の弟であるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、サウスカロライナ州予備選で早々と撤退しました。「ティーパーティー」のヒーローと言われたテッド・クルーズ氏は、最後まで食い下がりましたが、結局、トランプに勝つことはできませんでした。意味することは、いままで共和党が米国の当然の政策として実施してきたことがことごとく崩れ、国民の信頼を大きく失ってきたことがあげられるでしょう。
イラク戦争に突き進んだ米国では、多くの若い兵士の命が奪われ、あるいは、帰国しても精神的に病んで日常生活に支障をきたす多くの人々が生み出されました。2010年11月の連邦議会選挙で、オバマ政権の政策を批判して、登場した「ティーパーティー」の運動も13年には極端な運動に走り、減税の終了と歳出の自動削減が重なって財政緊縮から景気が急激に悪化する「財政の崖」の懸念を引き起こしました。予算執行を妨害し、さらには連邦機関が一時閉鎖されて国民の評判を落としていきました。
今年7月の党大会ではトランプ氏が大統領候補に選ばれることを快く思わない、ブッシュ一族が大会をボイコットするという異例な事態が発生しました。12年の大統領選挙でオバマ氏の対立候補だったミット・ロムニー氏はトランプ氏を支持せず、保守の小政党、リバタリアン党から立候補するゲーリー・ジョンソン氏を支持するとして、党大会に出席しませんでした。クルーズ氏は大会3日目「指名を獲得したトランプ氏を祝福する」と切り出したまではよかったのですが、いつになってもトランプ支持の表明がなく、会場から「トランプ!トランプ!」と催促される始末でした。

「違い」アピール
トランプ氏の作戦はあえて共和党主流派と仲たがいをすることで、自分を従来の共和党候補とは違うように国民に見せ、自分が米国労働者の味方だと演出することだったといえるでしょう。したがって、大会が分裂気味で険悪な様相でも何ら気にせず、むしろ既成の政治家との違いをアピールして国民の支持を拡大することを考えたということでしょう。民主党のヒラリー・クリントン候補に対しては、「既成の政治家」「米国史上最悪の国務長官」とこき下ろしました。最終盤では連邦捜査局(FBI)のコミー長官がクリントン氏のメール公私混同問題の再調査を表明したことをフルに活用しました。「うそつき」というレッテル貼りを繰り返しながら、大統領の座を射止めました。(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月16日付掲載


共和党の大統領候補でありながら、従来の共和党の政策に一線を画するような振る舞い。
まさに「小泉旋風」のようですね。トランプ氏も、これからの政策に注視する必要があります。

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まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ③ 新たなたたかいへ 国民に危機感「共闘を」

2016-11-14 17:08:57 | 国際政治
まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ③ 新たなたたかいへ 国民に危機感「共闘を」

上着を通して風の冷たさが感じられる9日夜の首都ワシントン、前日の米大統領選に勝利した共和党で実業家のドナルド・トランプ氏が開業したホテル前に、市民が大挙して押しかけていました。「私の大統領じゃない」などと書かれたプラカードが見られ、通常のデモではあまり聞かない汚い言葉で同氏を非難するコールが響き渡っていました。

各地で続くデモ
参加者の一人、幼い娘を抱くケレン・フィッシャーさん(35)は対抗馬だった民主党ヒラリー・クリントン氏の支持者。
「大統領選の結果にものすごく驚いています。多くの人たちは世の中に対する恐れや憎しみの気持ちで、トランプ氏に投票したのでしょうか」と語りました。
選挙期間中、トランプ氏の移民、イスラム教徒、女性、マイノリティーへの差別的発言・公約が繰り返されました。これらが、新政権の下で実施されるのではないかと危機感を覚える市民のデモは、9日以降も各地で続いています。
クリントン氏と民主党の予備選を激しく争った自称、民主的社会主義者のバーニー・サンダース上院議員は同日、声明を発表。勤労世帯の生活改善のための政治を真剣に追求する範囲においてはトランプ氏に協力すると述べた上で、「人種・性差別、外国人敵視、反環境保護的な政策には、精力的に反対する」と表明しました。
サンダース氏が設立した草の根の運動団体「われわれの大変革」も、「あなたが優先してほしいわれわれのたたかいは何か、あなたにとって何が重要か」と、トランプ新政権の下での運動について意見を寄せることを国民に呼びかけています。



トランプ氏の差別的発言・公約などに猛抗議する市民=9日、ワシントン(洞口昇幸撮影)

運動が試される
米誌『ネーション』(電子版)は9日付で、トランプ氏の勝利による悲しみで閉じこもり、イスラム教徒の米国人や中南米系米国人、性的少数者などトランプ氏の姿勢に最も恐怖を感じている人々を見捨てることになれば、「歴史はわれわれを決して許さないだろう」と強調。人種、政治思想、宗教などの違いを超えた広範な共闘を提案しています。
同誌は、次の米大統領選までの今後の4年間で「われわれのこれまでにない運動が試される。たたかいにようこそ」と結びました。
来年1月20日に大統領に就任するトランプ氏に何を求めていくのかー。前述のフィッシャーさんは、「トランプ氏を支持した人たちに向けて、大統領として発するメッセージをこれまでとは変えてほしい」と答えました。(おわり)
(この連載はワシントン支局の洞口昇幸、島田峰隆が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月13日付掲載


過激な発言を繰り返してきたトランプ氏。大統領に選ばれてからは、発言を控えていますが、実際の政策を注視していく必要があります。
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まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ② 軍事・外交 歳出削減やめ、増強へ

2016-11-13 10:43:55 | 国際政治
まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ② 軍事・外交 歳出削減やめ、増強へ

「とてつもなく強力で機敏な米軍が今ほど求められているときはない」。米太統領選で当選した共和党のドナルド・トランプ氏は論戦で、こう繰り返し主張しました。
オバマ政権は、ブッシユ前政権が強行したイラク、アフガニスタンでの戦争で財政危機が深刻化したことを受けて、歳出の自動削減を進めています。トランプ氏は、削減対象から軍事費を外すことを求め、陸海空軍、海兵隊の増強、ミサイル防衛システムへの投資を公約しました

IS掃討を強化
米軍主導の有志連合がイラクやシリアで行う過激組織ISの掃討作戦についても「攻勢的な軍事作戦を追求し、ISを壊滅させる」としています。
論戦では、トランプ氏と、民主党のクリントン前国務長官とが、「米軍の再建が必要だ」と競い合うように訴えました。
選挙最終盤にニューヨークで行われた反戦デモに参加した男性(32)は「イラク戦争を終わらせると言ったオバマ氏の下でも米国は戦争を続けている。戦線を広げ、軍需産業がもうかる仕組みを温存する候補者しかいない」と苦悩の表情を浮かべていました。
「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は同盟国との関係でも「米国の核心的利益を守る」と主張。米国が日本や韓国、欧州諸国などを守る一方で、これらの国は対価を払っていないとし、米軍駐留経費の負担などを求める姿勢です。
米欧関係の要と位置付けてきた北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れだ」と発言。ただしどのようなNATO像を描くのかは明らかではありません。



米大統領選挙の民主、共和の両候補の掲げる米軍増強などの公約に抗議するひとたち=11月2日、ニューヨーク(島田峰隆撮影)

温暖化対策撤退
国際的な影響が懸念されるのは地球温暖化対策です。米国は世界第2位の温室効果ガス排出国です。トランプ氏は「温暖化はでっち上げ」と強調。国連の温暖化対策への資金拠出を取りやめ、国内の排出規制などオバマ氏が出した大統領令を撤回するとしています。
米国内からは「世界を破局に導くのか、前進させるのかが間われる」(自然保護団体シエラクラブ)と批判が出ています。
トランプ氏は、ロシアとの関係改善や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接交渉を示唆。両国からは、トランプ氏を「称賛」する動きがあります。トランプ氏が主張するイラン核合意の撤回は、イスラエルが歓迎。
他方イスラム教徒の入国禁止、メキシコ国境への壁建設などの主張には、偏狭な排外主義や差別を助長するとの批判があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月12日付掲載


トランプは日本から米軍を撤退させる気がさらさら無いのに、「同盟国の負担をもっと増やさないと撤退も辞さない」と言う。
その圧力に屈して、負担を増やしてはいけない。
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まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ① 経済 自動車産業を取り戻せ

2016-11-11 15:26:04 | 国際政治
まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ① 経済 自動車産業を取り戻せ

「もう、あなた方の仕事は失わせない。われわれは前よりも強く、より良く、より大きな自動車産業をミシガンに取り戻す」―

再び偉大な国に
8日投開票の米大統領選で勝利し、次期大統領となる共和党のドナルド・トランプ氏は7日夜から8日未明、ミシガン州グランドラピッズで開かれた選挙戦の最後の集会でこう訴えました。「米国を再び偉大に」と書かれた帽子などを身に着けた聴衆は、大きな歓声と拍手を同氏に送りました。
トランプ氏は「雇用を取り戻すために、米企業の法人税率を35%から15%に下げる。中間層への大規模な減税もする。(争った民主党候補の)ヒラリー・クリントン氏は、あなた方の税金を大いに上げたいのだ」と強調し、聴衆のクリントン氏へのブーイングをあおりました。
今回の大統領選では、国内で深刻化し続ける経済格差や雇用の喪失の解決策の提示が、有権者が最も注目する事項の一つでした。
実業家のトランプ氏は、「アウトサイダー」(部外者)の立場で、上院議員や国務長官を歴任したクリントン氏など既存政治家に、雇用の海外流出の責任があると主張。経済的閉塞(へいそく)感や現在の政治状況に不満・怒りを抱く白人中間層を中心とする有権者の心をつかみ、ミシガンを含む民主党の強い州を制し、勝利を決定づけました。
トランプ氏は選挙戦で自身の経済政策として、法人税の大幅減税や規制緩和によって米大企業が生産拠点を国内にとどめて事業を拡大し、それらが良質な雇用増と賃金上昇、経済格差の縮小につながると語ってきました。



大統領選の最後の集会で演説する共和党のトランプ候補=11月8日、米ミシガン州・グランドラピッズ(ロイター)

トリクルダウン
しかし、同氏の掲げる経済政策は「トリクルダウン(大企業や富裕層の富が潤えばその恩恵が下位にも滴る)」理論の典型です。
ワシントン・ポスト紙(電子版)10月11日付によると、トランプ氏が「中間層のために」と述べる減税政策では、2025年までに富裕層上位1%の所得が14%増える一方で、残りの99%の所得は0・7~0・8%しか増えないとされています。
米「経済政策研究所」(EPI)は9日に声明を発表し、トランプ氏の経済政策はこれまで何十年も共和党が追求した方法で、「大多数の米労働者の賃金上昇は生みだせなかった」と指摘。「中間層の経済的成功の方策にならない」と述べています。
米最大の労働組合全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・C10)のトラムカ議長は同日の声明で、「大統領選は終わったが、われわれは勤労者の勝利のため、これまで以上に熱心に取り組んでいく」と表明しました。

世界に衝撃を与えたトランプ氏の米大統領選の勝利。同氏の経済や外交・軍事などの公約・主張を振り返り、その危うさや不確かさ、米国内の受け止めをみていきます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月11日付掲載


経済が閉塞的状況だけに、「税金を下げる」って受けますよね。
でも、それは「小さい政府」。決して中間層の暮らしは良くならない。
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