トランプ現象② 経済政策 レーガン再来
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さんに聞く
派手な立ち居振る舞いで、国民を「扇動」し、大統領の座を射止めたドナルド・トランプ氏ですが、彼の政権では、新自由主義的経済政策に逆戻りする可能性が高いといえましょう。上下両院は、共和党が多数を握りました。民主党オバマ政権によって8年間実行されてきた政策がすべて消え去り、もとのもくあみになることが予想されます。
トランプ氏は、オバマ大統領による大統領令をすべて撤廃するといっています。オバマ大統領は、共和党のいやがらせで法律にならなかった「中間層重視の経済政策」を大統領令によってさまざまに実施してきました。こうした措置が廃止される可能性があります。
トランプ氏は、レーガン大統領を理想の大統領としているようです。レーガンとそれに続くブッシュ共和党政権(1981~93年)は12年間に、軍拡によって、ソ連を解体に追いやる作戦をとりました。トランプ大統領は、ISは、オバマ政権がつくり出したなどというデマを吹き散らしながら、IS退治に軍事的行動を起こそうと考えるでしょう。軍事費の上昇は避けられません。
トランプ氏当選に抗議する高校生=9日、カリフォルニア州バークレー(ロイター)
法人税引き下げ
経済政策でトランプ政権が実行するのは、法人税減税です。富裕者優遇税制の強力な実行です。2013年1月に成立した、米国納税者救済法によって、レーガン政権以来ようやく富裕層増税の第一歩が記されたのですが、レーガン減税の再来によって、連邦財政赤字の拡大は不可避です。米国社会の格差と貧困がいっそう拡大されることが懸念されます。
また、財務長官として、ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースなど大手金融機関の最高経営責任者や経営幹部の名が挙がっています。そうなれば金融制度の規制緩和がもたらされることになるでしょう。
10年にオバマ政権は、ドッド・フランク法を成立させ、ポルカー・ルールの制定によって、金融危機の再来を防ごうとする法律ができました。共和党の選挙綱領では廃止がうたわれています。金融の自由化・規制緩和で再び金融危機が勃発(ぼっぱつ)する可能性が生み出されるでしょう。
オバマケア廃止
さらに、10年に成立し、14年に本格的導入がおこなわれたケア適正化法(オバマケア)が、廃止に追い込まれる可能性があります。オバマケアは、確かに完全な医療保険制度ではありません。民間の保険会社から保険を購入するのが基本ですから、単一基金の国民皆保険制度とは異なります。保険料の高さも問題となっていますが、これを国民皆保険制度の方向に改革するのではなく、逆方向にもっていかれる可能性があります。オバマケアは確かに問題も多い健康保険ですが、実際に動き出しています。これを廃止して、かつてのように働き盛りの人々を再び無保険状況に追いやる事態については、多くの批判が噴出するでしょう。
また、トランプ氏は4日に発効したパリ協定から離脱することを考えています。20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みとなる重要な協定です。今世紀中に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることをめざします。ジョージ・W・ブッシュ政権はクリントン政権下で成立した京都議定書から01年に離脱を宣言しました。トランプ氏は同じことをしようとしています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月17日付掲載
白人中間層の不満を解決すると期待を集めて当選したトランプ氏。
しかし、実際にやろうとしている事は、富裕層を優遇して中間層を痛めつける政策。
まさに「だまし討ち」です。
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さんに聞く
派手な立ち居振る舞いで、国民を「扇動」し、大統領の座を射止めたドナルド・トランプ氏ですが、彼の政権では、新自由主義的経済政策に逆戻りする可能性が高いといえましょう。上下両院は、共和党が多数を握りました。民主党オバマ政権によって8年間実行されてきた政策がすべて消え去り、もとのもくあみになることが予想されます。
トランプ氏は、オバマ大統領による大統領令をすべて撤廃するといっています。オバマ大統領は、共和党のいやがらせで法律にならなかった「中間層重視の経済政策」を大統領令によってさまざまに実施してきました。こうした措置が廃止される可能性があります。
トランプ氏は、レーガン大統領を理想の大統領としているようです。レーガンとそれに続くブッシュ共和党政権(1981~93年)は12年間に、軍拡によって、ソ連を解体に追いやる作戦をとりました。トランプ大統領は、ISは、オバマ政権がつくり出したなどというデマを吹き散らしながら、IS退治に軍事的行動を起こそうと考えるでしょう。軍事費の上昇は避けられません。
トランプ氏当選に抗議する高校生=9日、カリフォルニア州バークレー(ロイター)
法人税引き下げ
経済政策でトランプ政権が実行するのは、法人税減税です。富裕者優遇税制の強力な実行です。2013年1月に成立した、米国納税者救済法によって、レーガン政権以来ようやく富裕層増税の第一歩が記されたのですが、レーガン減税の再来によって、連邦財政赤字の拡大は不可避です。米国社会の格差と貧困がいっそう拡大されることが懸念されます。
また、財務長官として、ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースなど大手金融機関の最高経営責任者や経営幹部の名が挙がっています。そうなれば金融制度の規制緩和がもたらされることになるでしょう。
10年にオバマ政権は、ドッド・フランク法を成立させ、ポルカー・ルールの制定によって、金融危機の再来を防ごうとする法律ができました。共和党の選挙綱領では廃止がうたわれています。金融の自由化・規制緩和で再び金融危機が勃発(ぼっぱつ)する可能性が生み出されるでしょう。
オバマケア廃止
さらに、10年に成立し、14年に本格的導入がおこなわれたケア適正化法(オバマケア)が、廃止に追い込まれる可能性があります。オバマケアは、確かに完全な医療保険制度ではありません。民間の保険会社から保険を購入するのが基本ですから、単一基金の国民皆保険制度とは異なります。保険料の高さも問題となっていますが、これを国民皆保険制度の方向に改革するのではなく、逆方向にもっていかれる可能性があります。オバマケアは確かに問題も多い健康保険ですが、実際に動き出しています。これを廃止して、かつてのように働き盛りの人々を再び無保険状況に追いやる事態については、多くの批判が噴出するでしょう。
また、トランプ氏は4日に発効したパリ協定から離脱することを考えています。20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みとなる重要な協定です。今世紀中に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることをめざします。ジョージ・W・ブッシュ政権はクリントン政権下で成立した京都議定書から01年に離脱を宣言しました。トランプ氏は同じことをしようとしています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月17日付掲載
白人中間層の不満を解決すると期待を集めて当選したトランプ氏。
しかし、実際にやろうとしている事は、富裕層を優遇して中間層を痛めつける政策。
まさに「だまし討ち」です。