まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ① 経済 自動車産業を取り戻せ
「もう、あなた方の仕事は失わせない。われわれは前よりも強く、より良く、より大きな自動車産業をミシガンに取り戻す」―
再び偉大な国に
8日投開票の米大統領選で勝利し、次期大統領となる共和党のドナルド・トランプ氏は7日夜から8日未明、ミシガン州グランドラピッズで開かれた選挙戦の最後の集会でこう訴えました。「米国を再び偉大に」と書かれた帽子などを身に着けた聴衆は、大きな歓声と拍手を同氏に送りました。
トランプ氏は「雇用を取り戻すために、米企業の法人税率を35%から15%に下げる。中間層への大規模な減税もする。(争った民主党候補の)ヒラリー・クリントン氏は、あなた方の税金を大いに上げたいのだ」と強調し、聴衆のクリントン氏へのブーイングをあおりました。
今回の大統領選では、国内で深刻化し続ける経済格差や雇用の喪失の解決策の提示が、有権者が最も注目する事項の一つでした。
実業家のトランプ氏は、「アウトサイダー」(部外者)の立場で、上院議員や国務長官を歴任したクリントン氏など既存政治家に、雇用の海外流出の責任があると主張。経済的閉塞(へいそく)感や現在の政治状況に不満・怒りを抱く白人中間層を中心とする有権者の心をつかみ、ミシガンを含む民主党の強い州を制し、勝利を決定づけました。
トランプ氏は選挙戦で自身の経済政策として、法人税の大幅減税や規制緩和によって米大企業が生産拠点を国内にとどめて事業を拡大し、それらが良質な雇用増と賃金上昇、経済格差の縮小につながると語ってきました。
大統領選の最後の集会で演説する共和党のトランプ候補=11月8日、米ミシガン州・グランドラピッズ(ロイター)
トリクルダウン
しかし、同氏の掲げる経済政策は「トリクルダウン(大企業や富裕層の富が潤えばその恩恵が下位にも滴る)」理論の典型です。
ワシントン・ポスト紙(電子版)10月11日付によると、トランプ氏が「中間層のために」と述べる減税政策では、2025年までに富裕層上位1%の所得が14%増える一方で、残りの99%の所得は0・7~0・8%しか増えないとされています。
米「経済政策研究所」(EPI)は9日に声明を発表し、トランプ氏の経済政策はこれまで何十年も共和党が追求した方法で、「大多数の米労働者の賃金上昇は生みだせなかった」と指摘。「中間層の経済的成功の方策にならない」と述べています。
米最大の労働組合全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・C10)のトラムカ議長は同日の声明で、「大統領選は終わったが、われわれは勤労者の勝利のため、これまで以上に熱心に取り組んでいく」と表明しました。
◇
世界に衝撃を与えたトランプ氏の米大統領選の勝利。同氏の経済や外交・軍事などの公約・主張を振り返り、その危うさや不確かさ、米国内の受け止めをみていきます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月11日付掲載
経済が閉塞的状況だけに、「税金を下げる」って受けますよね。
でも、それは「小さい政府」。決して中間層の暮らしは良くならない。
「もう、あなた方の仕事は失わせない。われわれは前よりも強く、より良く、より大きな自動車産業をミシガンに取り戻す」―
再び偉大な国に
8日投開票の米大統領選で勝利し、次期大統領となる共和党のドナルド・トランプ氏は7日夜から8日未明、ミシガン州グランドラピッズで開かれた選挙戦の最後の集会でこう訴えました。「米国を再び偉大に」と書かれた帽子などを身に着けた聴衆は、大きな歓声と拍手を同氏に送りました。
トランプ氏は「雇用を取り戻すために、米企業の法人税率を35%から15%に下げる。中間層への大規模な減税もする。(争った民主党候補の)ヒラリー・クリントン氏は、あなた方の税金を大いに上げたいのだ」と強調し、聴衆のクリントン氏へのブーイングをあおりました。
今回の大統領選では、国内で深刻化し続ける経済格差や雇用の喪失の解決策の提示が、有権者が最も注目する事項の一つでした。
実業家のトランプ氏は、「アウトサイダー」(部外者)の立場で、上院議員や国務長官を歴任したクリントン氏など既存政治家に、雇用の海外流出の責任があると主張。経済的閉塞(へいそく)感や現在の政治状況に不満・怒りを抱く白人中間層を中心とする有権者の心をつかみ、ミシガンを含む民主党の強い州を制し、勝利を決定づけました。
トランプ氏は選挙戦で自身の経済政策として、法人税の大幅減税や規制緩和によって米大企業が生産拠点を国内にとどめて事業を拡大し、それらが良質な雇用増と賃金上昇、経済格差の縮小につながると語ってきました。
大統領選の最後の集会で演説する共和党のトランプ候補=11月8日、米ミシガン州・グランドラピッズ(ロイター)
トリクルダウン
しかし、同氏の掲げる経済政策は「トリクルダウン(大企業や富裕層の富が潤えばその恩恵が下位にも滴る)」理論の典型です。
ワシントン・ポスト紙(電子版)10月11日付によると、トランプ氏が「中間層のために」と述べる減税政策では、2025年までに富裕層上位1%の所得が14%増える一方で、残りの99%の所得は0・7~0・8%しか増えないとされています。
米「経済政策研究所」(EPI)は9日に声明を発表し、トランプ氏の経済政策はこれまで何十年も共和党が追求した方法で、「大多数の米労働者の賃金上昇は生みだせなかった」と指摘。「中間層の経済的成功の方策にならない」と述べています。
米最大の労働組合全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・C10)のトラムカ議長は同日の声明で、「大統領選は終わったが、われわれは勤労者の勝利のため、これまで以上に熱心に取り組んでいく」と表明しました。
◇
世界に衝撃を与えたトランプ氏の米大統領選の勝利。同氏の経済や外交・軍事などの公約・主張を振り返り、その危うさや不確かさ、米国内の受け止めをみていきます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月11日付掲載
経済が閉塞的状況だけに、「税金を下げる」って受けますよね。
でも、それは「小さい政府」。決して中間層の暮らしは良くならない。