まさかの米大統領 トランプ氏の公約とあやうさ② 軍事・外交 歳出削減やめ、増強へ
「とてつもなく強力で機敏な米軍が今ほど求められているときはない」。米太統領選で当選した共和党のドナルド・トランプ氏は論戦で、こう繰り返し主張しました。
オバマ政権は、ブッシユ前政権が強行したイラク、アフガニスタンでの戦争で財政危機が深刻化したことを受けて、歳出の自動削減を進めています。トランプ氏は、削減対象から軍事費を外すことを求め、陸海空軍、海兵隊の増強、ミサイル防衛システムへの投資を公約しました
IS掃討を強化
米軍主導の有志連合がイラクやシリアで行う過激組織ISの掃討作戦についても「攻勢的な軍事作戦を追求し、ISを壊滅させる」としています。
論戦では、トランプ氏と、民主党のクリントン前国務長官とが、「米軍の再建が必要だ」と競い合うように訴えました。
選挙最終盤にニューヨークで行われた反戦デモに参加した男性(32)は「イラク戦争を終わらせると言ったオバマ氏の下でも米国は戦争を続けている。戦線を広げ、軍需産業がもうかる仕組みを温存する候補者しかいない」と苦悩の表情を浮かべていました。
「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は同盟国との関係でも「米国の核心的利益を守る」と主張。米国が日本や韓国、欧州諸国などを守る一方で、これらの国は対価を払っていないとし、米軍駐留経費の負担などを求める姿勢です。
米欧関係の要と位置付けてきた北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れだ」と発言。ただしどのようなNATO像を描くのかは明らかではありません。
米大統領選挙の民主、共和の両候補の掲げる米軍増強などの公約に抗議するひとたち=11月2日、ニューヨーク(島田峰隆撮影)
温暖化対策撤退
国際的な影響が懸念されるのは地球温暖化対策です。米国は世界第2位の温室効果ガス排出国です。トランプ氏は「温暖化はでっち上げ」と強調。国連の温暖化対策への資金拠出を取りやめ、国内の排出規制などオバマ氏が出した大統領令を撤回するとしています。
米国内からは「世界を破局に導くのか、前進させるのかが間われる」(自然保護団体シエラクラブ)と批判が出ています。
トランプ氏は、ロシアとの関係改善や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接交渉を示唆。両国からは、トランプ氏を「称賛」する動きがあります。トランプ氏が主張するイラン核合意の撤回は、イスラエルが歓迎。
他方イスラム教徒の入国禁止、メキシコ国境への壁建設などの主張には、偏狭な排外主義や差別を助長するとの批判があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月12日付掲載
トランプは日本から米軍を撤退させる気がさらさら無いのに、「同盟国の負担をもっと増やさないと撤退も辞さない」と言う。
その圧力に屈して、負担を増やしてはいけない。
「とてつもなく強力で機敏な米軍が今ほど求められているときはない」。米太統領選で当選した共和党のドナルド・トランプ氏は論戦で、こう繰り返し主張しました。
オバマ政権は、ブッシユ前政権が強行したイラク、アフガニスタンでの戦争で財政危機が深刻化したことを受けて、歳出の自動削減を進めています。トランプ氏は、削減対象から軍事費を外すことを求め、陸海空軍、海兵隊の増強、ミサイル防衛システムへの投資を公約しました
IS掃討を強化
米軍主導の有志連合がイラクやシリアで行う過激組織ISの掃討作戦についても「攻勢的な軍事作戦を追求し、ISを壊滅させる」としています。
論戦では、トランプ氏と、民主党のクリントン前国務長官とが、「米軍の再建が必要だ」と競い合うように訴えました。
選挙最終盤にニューヨークで行われた反戦デモに参加した男性(32)は「イラク戦争を終わらせると言ったオバマ氏の下でも米国は戦争を続けている。戦線を広げ、軍需産業がもうかる仕組みを温存する候補者しかいない」と苦悩の表情を浮かべていました。
「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は同盟国との関係でも「米国の核心的利益を守る」と主張。米国が日本や韓国、欧州諸国などを守る一方で、これらの国は対価を払っていないとし、米軍駐留経費の負担などを求める姿勢です。
米欧関係の要と位置付けてきた北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れだ」と発言。ただしどのようなNATO像を描くのかは明らかではありません。
米大統領選挙の民主、共和の両候補の掲げる米軍増強などの公約に抗議するひとたち=11月2日、ニューヨーク(島田峰隆撮影)
温暖化対策撤退
国際的な影響が懸念されるのは地球温暖化対策です。米国は世界第2位の温室効果ガス排出国です。トランプ氏は「温暖化はでっち上げ」と強調。国連の温暖化対策への資金拠出を取りやめ、国内の排出規制などオバマ氏が出した大統領令を撤回するとしています。
米国内からは「世界を破局に導くのか、前進させるのかが間われる」(自然保護団体シエラクラブ)と批判が出ています。
トランプ氏は、ロシアとの関係改善や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接交渉を示唆。両国からは、トランプ氏を「称賛」する動きがあります。トランプ氏が主張するイラン核合意の撤回は、イスラエルが歓迎。
他方イスラム教徒の入国禁止、メキシコ国境への壁建設などの主張には、偏狭な排外主義や差別を助長するとの批判があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年11月12日付掲載
トランプは日本から米軍を撤退させる気がさらさら無いのに、「同盟国の負担をもっと増やさないと撤退も辞さない」と言う。
その圧力に屈して、負担を増やしてはいけない。