きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の問題⑮・⑯

2011-05-21 19:35:26 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の問題⑮・⑯

公的就労事業実施を
労働運動総合研究所顧問 大木一訓さん


 今日の大災害は一過性のものではなく、かなり長期に続くことを覚悟しなければならない、三重、四重の複合的災害です。復興事業を成功させるには、被災者をふくむ地域住民の主体的参加のもとに、中長期の展望をもった事業をすすめる必要があります。東北の歴史・文化や人間的なつながりを大切にし、住民自身が意欲的に創造し担っていくような復興事業でなければ、持続可能な経済・社会の再構築はできないでしょう。
 政府は、被災地に全国から「ヒト・モノ・カネ」を短期間に集中的に投入して復興をはかろうとしていますが、これでは住民ぬきの、大手開発企業による一時的な金もうけのための「復興事業」になってしまいます。

上意下達の姿勢
 また、厚生労働省は4月初め、全国の人材ビジネス業者に被災者への就職支援を行うよう要請していますが、こうした政策では、地元のコミュニティーも労働力集団もバラバラに解体されて、復興事業の担い手が失われてしまうでしょう。神戸と違い東北では、自治体主導ではなく政府主導で事業をすすめようという動きがあるようですが、そうした上意下達の姿勢は根本的に改めるべきです。
 「復興構想会議」などの議論で決定的に欠けているのは、東北中心に大量に生み出された失業者たちに、その生活と仕事をどう保障していくか、という問題の検討です。被災市町村の就業者84万1千人に震災・原発事故関連の離職者・内定取り消しなどをあわせると、失業者数は100万人に迫るでしょう。阪神大震災の際の「震災による失業者3万2千人」(政府発表)と比較しても、規模の大きさがわかります。しかも農業・漁業などの自営業者が大きな比重を占めることもあって、その多くは雇用保険など従来の失業保障ではカバーされない人たちです。再就職といっても地元の産業は壊滅状態なので、その機会は絶無に近い。そして失業の発生はまだまだ続いているのです。

社会の再生こそ
 この長期大量失業に対処するためには、復興事業とむすびつけた公的就労事業を創設することが不可欠だと思います。被災者を救援し、失業者の生活や仕事を保障することと、地域の産業・経営やコミュニティーの復旧・復興をすすめる事業とを、一つにむすびつけて社会の再生・発展をはかるのです。かつての米国のニューディール政策やヨーロッパの直接的雇用政策、それに日本での失対事業や地域雇用創出交付金制度などの経験を生かして、公的就労事業を今日にふさわしく創造的に発展させることです。この点では自治体とともに、業者団体や労働組合、生協、ボランティア団体などの住民組織にも、大きな役割をはたしてほしいと思います。
(聞き手 清水渡)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月12日付掲載



住民の声基に復興を
京都大学大学院教授 岡田知弘さん


 今回の東日本大震災の特徴は、あまりにも多くの人命と住宅、農地、漁船、工場や商店などの生活手段、電気、水道などの生活基盤設備までもが一気に失われたことです。したがってこの大震災からの復旧・復興の第一義的課題は、生き残ったすべての被災者の生命・健康の維持と生活の再建、「人間の復興」でなければなりません。そのための必要な手だてを緊急に、スピード感をもって実施することが必要です。
 現実は、震災後2カ月以上がたった今も12万人近くが避難し、避難所での劣悪な生活環境から高齢者が亡くなり、子どもの学習や心の問題、生業や事業の再建の遅れなど、人権を保障する最低限の水準さえ確保できていない深刻な状況です。加えて原発事故で避難している住民は先が見えない生活を余儀なくされています。

生活再建を核に
 今回地震と津波が襲った農山漁村地域は、経済のグローバル化と歴代政府の進めた構造改革により、地域産業が後退し過疎化と高齢化が進み、コミュニティーが破壊され、買い物難民、医療難民、限界集落といわれるような、社会生活基盤が弱体化した地域です。生活再建を核に地域経済・社会そのものの再生が欠かせません。
 復旧・復興にあたり、国や県が上からの計画を押し付けてはなりません。政府の復興構想会議は「創造的復興」をめざすといいます。「漁港の集約化」、「農地の集約・広域化」など構造改革推進論も盛んに登場しています。しかし、阪神・淡路大震災の際も今回と同じ「創造的復興」が叫ばれその下で大型開発が優先され、住宅再建をはじめ住民の生活は10年経ても「7割復興」といわれました。この教訓を忘れてはなりません。

旧山古志村では
 2004年に中越大震災で全村避難を余儀なくされた新潟県旧山古志村では、「山古志へ帰ろう」という住民合意を広げ、住民と行政が協同した取り組みで多数の住民が村に戻り生活を再建しました。
 現地の住民や市町村の要望・要求を基にして立案・策定した復興計画を遂行するシステムを政府に求めます。
 政権党の一部の政治家、財界などは被災市町村の合併を構想し、「道州制」を唱えています。これは被災地域の疲弊を深めるだけです。それは「平成の大合併」による広域合併自治体で、周辺部の地域経済が衰退し、さらに中心部も衰退するという悪循環の広がりからも明らかです。
 今回の大震災では、市役所や役場が人的にも物理的にも甚大な被害を受けました。復旧・復興を担う自治体職員の確保、増員が必要です。国および全国の地方自治体からの専門職員、一般職員の長期派遣だけでは不足しています。私たち研究者や自治体関係者が参加する自治体問題研究所は、国の直接的な財政的支援を求めるとともに、任期付き公務員制度を利用した被災者の直接雇用による復興策等も提案しています。
(聞き手 大小島美和子)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月19日付



生産基盤が崩壊してしまっている中、公的就労支援などで仕事をつくりそれで生産基盤を立て直していくことは効果的でしょうね。
また、「山古志村に帰ろう」などの目標があれば復興にむけての勇気や希望もでてくると思います。
今回も、「〇〇に帰ってコメ作りを」「〇〇に帰って漁業を」に国が支援していかないといけないと思います。
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福島第一原発 収束工程表第2段 またもや「いたちごっこ」のうわ塗りか!?

2011-05-18 23:40:43 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
福島第一原発 収束工程表第2段 またもや「いたちごっこ」のうわ塗りか!?

5月17日、東京電力の福島第一原発収束に向けた「工程表第2段」が発表された。

東電工程表第2段
東電工程表第2段 posted by (C)きんちゃん
【画像をクリックすると大きい画面で開きます】


トップに「滞留水の再利用検討」「最小限の注水による燃料冷却」が・・・

これって、基本的な「熱交換器による冷却」がまったくできていないってことの証明。

いまだに「いたちごっこ」をやっているんですね。



【1か月前に発表された工程表】
工程表1
工程表1 posted by (C)きんちゃん
【画像をクリックすると大きい画面で開きます】

【福島第一原発収束工程表について(2011.4.19)】


「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月18日記事より
東京電力工程表 第2弾

冷却方法を見直し
目標達成時期変更せず

東京電力は17日、福島第1原発事故の収束に向けた課題や目標を示した「工程表」改訂版を公表しました。1カ月たって見直したもの。原子炉冷却は、原子炉格納容器を原子炉圧力容器ごと水で満たす冠水(“水漬け”)作業を見直して、建屋にたまった大量の汚染水を使う「循環注水冷却」を先行させるとしました。数日前には1号機で大半の核燃料が溶融したなど深刻な事態が次々に判明したにもかかわらず、原子炉の安定的冷却を実現する(ステップー)などとした目標達成の時期は、7月中旬のまま変更しませんでした。
この1カ月間で、2号機にくわえ1号機でも格納容器からの汚染水の漏えいが判明したほか、3号機でも同じ危険性が予想されており、注水の継続で建屋地下などにたまる放射能汚染水の大幅な増加が見込まれます。東電は、タービン建屋や原子炉建屋にたまった汚染水を、ポンプでくみ出して除染処理・塩分処理をしたうえで、冷却水として原子炉に再び注水する「循環注水冷却」の早期確立をめざすといいます。
今回の改訂で、余震や津波への対策、食事や休憩施設など作業員の生活・職場環境の改善を追加。汚染水流出が再び確認された海洋や地下水の汚染防止策を強化します。
東電の武藤栄副社長は会見で「大きく変更しなければいけないような状況の変化はなかった。全体的にほぼ考えた通りに進んでいる」と述べました。
これまで東電が1~3号機原子炉内の核燃料の一部損傷しか認めてこなかった原子炉内の状況について、核燃料が溶融していたことが数日前に判明。当初から懸念されていた格納容器からの水漏れも、ようやく最近になって認めています。
さらに余震や津波対策を今になって追加したことは、事態にたいする東電の想定の甘さを浮き彫りにするものです。目標時期など十分な検討をしてきたのか疑問がもたれます。



●格納容器や圧力容器が破損していることは明らか。今回やっとその修復作業が追加されました

●熱交換器による冷却がまだこれから、熱交換器の設置のめどもたっていない

●原子炉建屋やタービン室内の水浸し、地下水の処理の問題が、これも「いたちごっこ」



今回は批判に応えて政府独自の工程表も発表しました。

政府の工程表
東電全面賠償ふれず  原発事故「冷温停止」裏付けなし


政府の原子力災害対策本部(本部長・菅直人首椙)は5月17日、福島第1原発事故の収束に向けた見通しと、被害者への対応策の実施手順を示した「工程表」を決定しました。「東電任せ」との批判を受けて策定された政府の工程表ですが、事故収束の見通しは、2011年10月~来年1月をめどに原子炉を「冷温停止」して安定化させるという東電の工程表が下敷きです。裏づけと根拠を示しておらず、政府の責任を果たしたものとなっていません。
工程表では、事故「収束」の第1ステップとして7月中旬までに「放射線量が着実に減少傾向となっている」と記しました。しかし、1号機の炉心溶融(メルトダウン)に続いて2・3号機も炉心溶融の可能性が明らかになるなどの深刻な事態に対し、対策が実現可能なのかの裏づけは示されないままです。
また、被害者・被害事業者への賠償については7月に中闇指針をまとめ、今秋から受け付けと支払いを始める方向を示しました。
重大なのは、賠償金の仮払いを原発から30キロ圏内で線引きしていることです。政府による出荷制限や、避難指示を受け家畜を処分した事業者などへの仮払いは5月末までに開始する方針ですが、風評被害で収入を失った農漁業者などへの仮払いには触れていません。東電に被害の全面賠償をさせるかどうかにも触れていません。
仮設住宅は、8月前半までに1万5200戸を福島県内に建設する方針を示しています。住民の健康では、被ばくした放射線量などの調査を5月以降に始めるとしています。がれき・汚水・汚泥の除去に向けては6月ごろに現地調査を開始します。
ふるさとへの住民の帰還のため、土壌汚染の除染手法の研究を5月以降スタートさせ、避難区域の解除を受けて除染を実施する方向です。

政府工程表のポイント
1、8月前半までに仮設住宅-万5200戸建設
1、5月下旬から警戒区域内の乗用車持ち出し
1、放射線量が抑えられた後、区域解除を検討
1、線量を推定し、住民の長期的健康を管理
1、環境モニタリングを強化
1、線量測定マップを公表
1、工場、商店の復旧・事業継続を支援
1、福島県と連携し事業資金を提供
1、風評被害への対策
1、7月に賠償の中間指針取りまとめ
1、5月以降に土壌の除染、改良の実証研究

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月18日付掲載



どちらにしても、日本のあらゆる科学技術を結集して早く収束を図ってほしいものです。
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東日本大震災と日本経済の問題⑬・⑭

2011-05-14 13:15:27 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の問題⑬・⑭

応能負担で復興財源
立正大学客員教授 浦野広明さん


 東日本大震災からの復興の財源をめぐって、消費税を増税して確保しようという議論があります。
 消費税はもともと、所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性を持ちます。名目が「復興財源」になろうと、それは変わりません。結局、所得の低い者、被災者に重くのしかかるのです。
 震災後、飲食業を中心に倒産が相次いでいます。中小業者は消費税を価格に転嫁できず、店の売り上げから負担しています。そのもとで消費税を増税すれば、被災地に限らず全国的に景気が後退します。
 しかも、消費税は、建設資材など復興に必要なものにまでかかってきます。税率が引き上げられたら、復興がますます遠のくでしょう。
 結局、消費税はどの点をとっても、復興にもっともふさわしくない財源なのです。
 被災者には消費税を還付しようという議論もあります。還付を実現するためとして、納税者番号制度の導入をにらんでいます。しかし、納税者番号制度はプライバシーを侵害し、国民生活の管理につながるもので、認めるわけにはいきません。

累進課税強化で
 復興財源に消費税をあてることに批判的な論者の中には、所得税や法人税、住民税に復興特別税を上乗せすればいいという人もいます。しかし、住民税は所得にかかわらず10%です。法人税や所得税も単純な上乗せでは低所得者や小規模企業ほど負担は相対的に重くなります。超過累進課税を強化する方向で上乗せしなければなりません。
 当面は、特別国債などを発行して賄うことになります。国債を大企業に引き受けさせ、内部留保を活用させるのはいいアイデアです。国債はいずれ償還しなければなりません。
 そのための財源は、応能負担で行うべきです。たとえば、法人臨時特別税を実施することです。これは、法人の所得や資産に応じて法人税に上乗せするものです。

法人臨時特別税
 法人臨時特別税は1990年の湾岸戦争の際、米軍中心の「多国籍軍」の戦費を負担するために発行した臨時特別公債の返済財源として導入されたことがあります。そのときは憲法違反の「戦争財源」でしたが、今回は復興のための財源として導入するのです。
 長期的には、大企業や大資産家に対する減税によって、空洞化した法人税や所得税も、抜本的に転換していく必要があります。
 税制は、議会で決めるものですから、応能負担原則を掲げ、大企業や大資産家に遠慮なくモノをいえる議員を増やしていくことが大切です。
(聞き手 清水渡)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月10日付掲載



大企業が支える側に
労働運動総合研究所常任理事佐々木昭三さん


 東日本大震災で日本の基幹産業である自動車などの製造業が大きな打撃を受けました。自動車では、被災地からの電子部晶や樹脂原料・ゴム製品などの供給が停滞し、生産停止や休業に追い込まれました。これは、日本だけでなく、アメリカや世界の生産にも影響を及ぼしました。

親企業には責任
 東北地方は、日本や世界の基幹産業の部品供給や生産の一翼を担う重要な役割を果たしていたのです。農業、漁業、林業、観光業やそれを支える商業とともに、東北の地域経済と国民経済を支え、世界経済にも影響を与える位置をもっていました。
 被災した自動車をはじめ大企業の関連・協力・下請け企業・業者の再建復興にとって、現在、重要なことは、支えられてきた大企業が社会的責任として全面的に支援・援助・協力することです。それと国・自治体が復興に積極的に関与して、金融・財政支援を含め行財政で本格的に支援することです。
 大企業では、再建復興のため、技術者の派遣、工場・設備の投資と無償貸与、金融支援などを行い、再建と正常化まで親企業として責任を持つことです。これは、労働者・業者の雇用や生活にも責任をもって保障することです。大企業にとって、内部留保と経済力を使えば可能なことです。
 今、震災・原子力発電所事故を理由にした労働者の解雇、関連下請けへの契約打ち切りなど「企業利益最優先」の企業行動があります。被災者・家族、国民が大きな困難をかかえ、それを乗り越えるための協力・援助が社会的に求められる中では、「許されない行為」です。こうした利益最優先の、労働者・国民に犠牲を強いる企業行動に対しては、社会的に糾弾する必要があります。
 一方で、被災地域や関連企業・業者の多くは、経営や雇用、再建復興に膨大な困難があります。これに対しては、最大規模な緊急の支援・援助・協力が、大企業と国・自治体に求められています。

日本社会の転換
 経済の復興・再建に向けて、日本社会は大きな転換が求められています。国民の安全と健康がしっかりと守られる災害防止を国づくりの基本に置き、「人災」原発の収束と安心安全なエネルギー政策への転換です。
 国民が働き、生活する地域で、衣食住が確保できる地域経済、東北の豊かな自然と共生する農業、漁業、林業と観光業での地域経済の確立、基幹産業関連の再建・復興、これらを大企業の経済力と国・自治体の行財を使い、この中で雇用の確保・拡大と震災復興、地域経済の再建をはかることです。しかも、これを、関係する被災者、関連団体、関係自治体が参加・発言し、「上から」ではなく「下から」、地域経済・地域社会の主人公が中心となって進めることが決定的に重要です。
 このことは、国民的課題として、日本の経済・社会にも問われています。また、エネルギー政策の転換にもかかわって、「大量生産、大量消費、大量廃棄」や「24時問型社会」のあり方、長時闇過重労働や夜勤労働の規制、年次有給休暇・連続休暇の取得など健康で人間らしい働き方と生き方、社会のあり方を本格的に考えてゆく課題として提起されています。
(聞き手 中川亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月11日付掲載



お二方とも、経済力のある大企業が復興財源を負担すべきだとの事ですね。社会保障でも応能負担ってことが言われますが、震災復興でもそうでないといけませんよね。
特に佐々木さんが言われているように、いままで自動車や電器産業などを下で支えてきた関連企業が被災したわけですから、親企業あげて支援するのは当然ですよね。
湾岸戦争の時に「法人臨時特別税」が導入されたなんて知りませんでした。当時は憲法違反の「戦争財源」だったわけですが、今回は国民の命と暮らしを守るため、まさに憲法にのっとった財源ですから大いに負担してほしいと思います。

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東日本大震災と日本経済の問題⑪・⑫

2011-05-12 21:03:25 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の問題⑪・⑫

しばらくお休みしていた連載を「しんぶん赤旗」より紹介・・・

海で生きる思い支援を
東北大学大学院教授 片山知史さん


 東日本大震災で、船は津波にのまれ、港や沿岸部の施設も破壊されました。漁業者は、今後の見通しが立たない状況です。
 東北地方には、塩釜、気仙沼、石巻といった全国有数の漁港があり、水産加工業や運送業など関連産業も含め、漁業はまさに基幹産業です。この復興のために、まず必要なことは、漁船の調達です。岩手県では、県漁業協同組合連合会が一括して発注することを検討しています。しかし宮城や福島など他のところでは、まだ漁船の確保のめどが立っていないところも多くあります。

港の機能復旧は
 漁船が調達できても、港が機能不全に陥っているという問題があります。
 港の機能にかかわる問題は、大きく分けて二つあります。一つは、沿岸部のあらゆるところで地盤沈下が起こっていることです。建物を直すにしても、損壊したところを単純に修復すればいいというわけにもいきません。何よりもまず、地盤全体を安定させることをしなければ、港の機能を復旧することはできません。
 二つ目としては、陸上のがれきが港だけでなく、海へ流れて、水深40~50メートルのところまで蓄積しているということがあります。さらに、がれきだけでなく流れ出た網などが船のスクリューに絡まる恐れもあります。こうした障害物を取り除くことが必要です。
 水深数十メートルのところというのは、水産資源がとても豊かなところです。ホッキガイ、アカガイといった貝類などに加え、カレイやヒラメなどの漁場となっており、そこにがれきがあると網を入れることができません。

関連業の復興も
 漁業を立て直すことと同時に、加工業や流通業の再建もしなければなりません。水産物の仲買業者や運送業者の人たちも被災しています。捕ったものを処理して流通させ、消費者に買ってもらうことで全体が成り立っています。
 今回は、震災被害に加え「人災」というべき東京電力福島第1原子力発電所の事故による放射能汚染も重なりました。船の調達や港の機能を回復し、漁業を再開しても、今度は風評被害で消費者が東北の魚介類を買い控えるようになるといったことも想定されます。せっかく捕ってきても売れないということになれば、あまりにも不幸な話です。
 震災で港や町が大きな被害を受けましたが、海の中には生物資源が残っています。漁業は意思と道具さえあれば続けることはできます。乱獲せず適正な漁獲をしていけば、海の生物は再生産されますから、永遠に続けていくことができます。
地元の漁業者は、「海でこそ生きる」「この海でまた漁業をやりたい」という気持ちが強いと思います。
 東北経済を復興させることにおいても、関連産業を含め漁業は非常に重要な位置を占めています。漁業の復興のために、漁業への補償はもちろんのことですが、漁業者が再び漁に出て生活していけるように政府が責任をもって支援することが必要です。
(聞き手 中川亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月26日付



被災者が描く復興こそ
神戸女学院大学教授 石川康宏さん


 東日本大震災の復興について三つの問題を指摘したいと思います。
 一つ目は、東北地方の復興策として日本経団連や経済同友会など財界が発表している提言ですが、内容は「復興」の名目で震災前からの要求を全面実施しようという罪深いものになっています。これには厳しい批判が必要です。
 消費税増税を柱とした「税・財政の一体改革」、大企業支援の新成長戦略を継続し、さらに規制緩和や特区制度などの優遇措置で、東北を国際競争力のある「経済圏」にするといっています。そこには、被災者の苦しみや生活再建の苦労に心を寄せる姿勢はありません。
 復興財源のために高校授業料無償化、子ども手当、農家への所得保障などを削れと主張し、原子力発電推進政策については再検討さえしていません。輸出製造業の利益と引き換えに、農林漁業を破壊する環太平洋連携協定(TPP)への加入を、震災後にも強調しています。
 財界のいう「経済復興」は、大企業の利益の復興ですから、「被災者の生活の再建」「人権の復興」をしっかり対置していくべきです。

「阪神」の再検証
 二つ目に、阪神・淡路大震災の復興過程を改めて検証することが必要です。私は震災の1995年から兵庫県内で働いていますが、行政が実施した「創造的復興」は、震災以前からの大企業の要求を次々実行するものでした。その復興委員会の活動を踏まえるとして、「東日本大震災復興構想会議」がつくられ、そこでただちに「創造的復興」が語られていることには強い警戒が必要です。
 大都市神戸でさえ、幹線道路沿いの大きなビルとは対照的に、路地に入れば空き地がたくさん残っています。住民生活の再建が二の次、三の次とされた結果です。「阪神・淡路の教訓」とは何なのかを、改めてはっきりさせることが必要です。

復興はたたかい
 三つ目に、日本経済の前途については、復興の理念と手順をはっきりさせれば、あるべき姿もおのずと見えてきます。理念は、被災者の生活再建が日本経済の最大の使命だということで、手順は再建の具体的な内容は被災者自身が決めるべきものだということです。
 憲法13条は国民の幸福追求権を「国政の上で、最大の尊重を必要とする」ものと定めています。被災者の幸福の追求を、国政は全力をあげて追求しなければなりません。全国民がそれを求めるべきです。
 財界・政府は道州制で住民自治のさらなる解体を進めようとしていますが、反対に被災者のコミュニティーを守り、それを復興の主体とする工夫が必要です。上からの「おしつけ復興」でなく、「被災者が描き、行政が実現する復興」としていかなければなりません。
 その過程で、大企業は身銭を切るべきです。いかに資本主義といえども、企業は人のためにあるのであって、企業は人闇の幸福を実現する手段でなければなりません。それを、政府は財界に正面から求めるべきです。労働者・下請け切りなどあってはなりません。
 「復興はたたかいだ」というのが震災後16年をへた兵庫での実感です。
(聞き手 中川亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月7日付掲載



確かに、宮城や岩手、福島などは日本の漁獲高の約3割があると言われるほどの地域です。それに首都圏の台所を支えている地域。
その立ち上がり、再建を国を挙げて支援していかないといけないでしょうね。

石川さんは地元神戸の、ワーキングプアや従軍慰安婦と運動をすすめている学者です。やはり、被災者が描く復興を進めるためにも闘わないといけないんでしょうね。実感をもって語っています。
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地球~イトカワ 宇宙60億キロの旅②

2011-05-11 22:19:09 | 科学だいすき
地球~イトカワ 宇宙60億キロの旅②

科学技術は「加点法」
小惑星探査機はやぶさ責任者
川口淳一郎さんに聞く

はやぶさの探査は、チャレンジ精神にとんだ計画でしたね。

川ロ プロジェクトの提案段階から挑戦的でした。日本の実力で堅実に行こうと思ったらとてもできないことを、「こういう方法ならできる」と。そして、こだわりと意地が大事だったと思います。「やるべきことを、すべてやり尽くしたのか」ということの自己点検の意味で、“神だのみ”もしました。
 ハイリスク・ハイリターンの新しいことへの挑戦は、科学・技術に限らずあらゆる分野で大切だと思います。何かを少しずつ積み上げていくと全体が太って、ついにどこかを突破するということはありえない。どの分野でも、何かを革新的に進めるためには、地道な努力も必要ですが、やはり思い切った挑戦がないと実現しません。



7年間のオペレーションを終えた、はやぶさの運用室(JAXA提供)

挑戦する活動へ
はやぶさ計画を国の予算として認めるかどうかで、宇宙開発委員会は“加点法”で評価し、ゴーサインを出しましたね。

川口 加点法は「挑戦するべきだ」という意思表示になります。だから挑戦する活動ができるのです。行政はそういう考え方で、途中までに得られた成果も生かす視点が大切です。地球に帰還できなければ減点というような、最初から天井を定めて、満点が取れるか、何が欠けているかをみる“減点法”ではダメだと思うのです。「世界初」をめざす活動を、国が裏切ることのないようにしてほしい。
 私はよく「ミミのない煎餅をつくるな」という例え話をします。煎餅の「型」に材料を流し込むと、はみだしてミミができる。最近、予算をギリギリまでカットして無駄を省こうと、事業仕分けをしています。予算1億円の「JAXAi」(東京・丸の内にあった広報施設)を切った。確かに「煎餅のミミ」を1億円くらいは切り取れました。
でも、煎餅の型に材料を入れるときに、ちょうど1枚分を入れたらミミはできないかもしれないけど、絶対に煎餅は型よりも大きくなりませんね。
 事業仕分けを政府がやると民間まで始めるのをみて、私は恐ろしくなりました。一生懸命、煎餅のミミを切り取っていくことが、将来をつくる道だと思わない。だんだん負の悪循環に入っていくだけです。ミミがあるからこそ、煎餅は大きく広がっていけるのです。


ミッション達成度〈加点法〉
▽50点…電気推進エンジン(イオンエンジン)稼働開始(3台同時運転は世界初)【達成】
▽100点…電気推進エンジン1000時間稼働【達成】
▽150点…地球スウィングバイ成功(電気推進では世界初)【達成】
▽200点…自律航法でイトカワとランデブー成功【達成】
▽250点…イトカワの科学観測成功【達成】
▽275点…イトカワに離着陸して岩石試料採取【達成】
▽400点…地球帰還。大気圏に突入してカプセル回収【達成】
▽500点…イトカワの試料を入手【達成】



オーストラリアに軟着陸した、小惑星探査機「はやぶさ」の着陸カプセル(JAXA提供)

国民スポンサー
科学・技術のあり方について、どう考えますか。

川口 研究者と政府と国民の関係は、演奏家と興行主と聴衆の関係と同じだと、私は思います。演奏家はレベルの高い演奏をしたいと思い、興行主は少し簡単な曲でもいいから文化の向上をめざす。聴衆は案外、別の曲を聴きたいかもしれない。それぞれ微妙なずれがあるのです。お互いにレベルアップできればいいのですが、忘れがちなのは、スポンサトが聴衆である国民だということです。
 研究者が挑戦するのはいいが、成果は国民に向かなければいけないし、国民へのわかりやすさも必要です。国に希望するのは、ポリシーをもって長期展望をみせてほしいということ。国民は、研究や文化にたいして、また国がポリシーをもって進むことにたいして、よき理解者であってほしい。三者が相互に理解することがないと、うまく進まないのではないでしょうか。



木星のそばを通り過ぎるソーラー電力セイル探査機の想像図(JAXA提供、池下章裕さん)

最後に、宇宙探査の将来像について教えてください。
川口 次に狙いたいのは、新しい推進機関「ソーラー電力セイル」で飛ぶ宇宙船による「トラヤ群」という小惑星の探査ミッションです。
 これまでどこかにあった技術をもってくるのではありません。私たちが実証した、はやぶさの電気推進エンジンと、「イカロス」のソーラーセイル(太陽帆)とを融合した新しい技術です。1990年代から、ずっと続けてきた研究です。
宇宙探査の領域は、尽きることはないと思っています。まずは数年の飛行で届くところをめざしたいですね。(おわり)


宇宙ヨット「イ力口ス」
 14メートル四方の帆を宇宙空間に広げ、太陽光の圧力を受けて進む、燃料のいらない夢の宇宙船。JAXAが2010年5月に鹿児島から打ち上げました。太陽光圧で推進するソーラーセイル(太陽帆)の着想は100年ほど前からありましたが、実現したのはイカロスが初めて。操縦技術の向上をめざし、現在も運用中です。


「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月7日付掲載

科学技術は「加点法」ですか。いい思考ですね。活動にも反映させていきたいと思いました。
それにしても、民主党政府の事業仕分けって、いかにみみっちいかが分かります。1億円は確かに削れたかもしれませんが、それ以上に可能性を削っているような気がします。

宇宙ヨット「イカロス」にも第2次バージョンがあるんですね。ギリシャ神話の太陽に向かって飛ぼうとした神の名を借りた「イカロス」。夢がありますね。
コメント (1)
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