きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の問題⑪・⑫

2011-05-12 21:03:25 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の問題⑪・⑫

しばらくお休みしていた連載を「しんぶん赤旗」より紹介・・・

海で生きる思い支援を
東北大学大学院教授 片山知史さん


 東日本大震災で、船は津波にのまれ、港や沿岸部の施設も破壊されました。漁業者は、今後の見通しが立たない状況です。
 東北地方には、塩釜、気仙沼、石巻といった全国有数の漁港があり、水産加工業や運送業など関連産業も含め、漁業はまさに基幹産業です。この復興のために、まず必要なことは、漁船の調達です。岩手県では、県漁業協同組合連合会が一括して発注することを検討しています。しかし宮城や福島など他のところでは、まだ漁船の確保のめどが立っていないところも多くあります。

港の機能復旧は
 漁船が調達できても、港が機能不全に陥っているという問題があります。
 港の機能にかかわる問題は、大きく分けて二つあります。一つは、沿岸部のあらゆるところで地盤沈下が起こっていることです。建物を直すにしても、損壊したところを単純に修復すればいいというわけにもいきません。何よりもまず、地盤全体を安定させることをしなければ、港の機能を復旧することはできません。
 二つ目としては、陸上のがれきが港だけでなく、海へ流れて、水深40~50メートルのところまで蓄積しているということがあります。さらに、がれきだけでなく流れ出た網などが船のスクリューに絡まる恐れもあります。こうした障害物を取り除くことが必要です。
 水深数十メートルのところというのは、水産資源がとても豊かなところです。ホッキガイ、アカガイといった貝類などに加え、カレイやヒラメなどの漁場となっており、そこにがれきがあると網を入れることができません。

関連業の復興も
 漁業を立て直すことと同時に、加工業や流通業の再建もしなければなりません。水産物の仲買業者や運送業者の人たちも被災しています。捕ったものを処理して流通させ、消費者に買ってもらうことで全体が成り立っています。
 今回は、震災被害に加え「人災」というべき東京電力福島第1原子力発電所の事故による放射能汚染も重なりました。船の調達や港の機能を回復し、漁業を再開しても、今度は風評被害で消費者が東北の魚介類を買い控えるようになるといったことも想定されます。せっかく捕ってきても売れないということになれば、あまりにも不幸な話です。
 震災で港や町が大きな被害を受けましたが、海の中には生物資源が残っています。漁業は意思と道具さえあれば続けることはできます。乱獲せず適正な漁獲をしていけば、海の生物は再生産されますから、永遠に続けていくことができます。
地元の漁業者は、「海でこそ生きる」「この海でまた漁業をやりたい」という気持ちが強いと思います。
 東北経済を復興させることにおいても、関連産業を含め漁業は非常に重要な位置を占めています。漁業の復興のために、漁業への補償はもちろんのことですが、漁業者が再び漁に出て生活していけるように政府が責任をもって支援することが必要です。
(聞き手 中川亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月26日付



被災者が描く復興こそ
神戸女学院大学教授 石川康宏さん


 東日本大震災の復興について三つの問題を指摘したいと思います。
 一つ目は、東北地方の復興策として日本経団連や経済同友会など財界が発表している提言ですが、内容は「復興」の名目で震災前からの要求を全面実施しようという罪深いものになっています。これには厳しい批判が必要です。
 消費税増税を柱とした「税・財政の一体改革」、大企業支援の新成長戦略を継続し、さらに規制緩和や特区制度などの優遇措置で、東北を国際競争力のある「経済圏」にするといっています。そこには、被災者の苦しみや生活再建の苦労に心を寄せる姿勢はありません。
 復興財源のために高校授業料無償化、子ども手当、農家への所得保障などを削れと主張し、原子力発電推進政策については再検討さえしていません。輸出製造業の利益と引き換えに、農林漁業を破壊する環太平洋連携協定(TPP)への加入を、震災後にも強調しています。
 財界のいう「経済復興」は、大企業の利益の復興ですから、「被災者の生活の再建」「人権の復興」をしっかり対置していくべきです。

「阪神」の再検証
 二つ目に、阪神・淡路大震災の復興過程を改めて検証することが必要です。私は震災の1995年から兵庫県内で働いていますが、行政が実施した「創造的復興」は、震災以前からの大企業の要求を次々実行するものでした。その復興委員会の活動を踏まえるとして、「東日本大震災復興構想会議」がつくられ、そこでただちに「創造的復興」が語られていることには強い警戒が必要です。
 大都市神戸でさえ、幹線道路沿いの大きなビルとは対照的に、路地に入れば空き地がたくさん残っています。住民生活の再建が二の次、三の次とされた結果です。「阪神・淡路の教訓」とは何なのかを、改めてはっきりさせることが必要です。

復興はたたかい
 三つ目に、日本経済の前途については、復興の理念と手順をはっきりさせれば、あるべき姿もおのずと見えてきます。理念は、被災者の生活再建が日本経済の最大の使命だということで、手順は再建の具体的な内容は被災者自身が決めるべきものだということです。
 憲法13条は国民の幸福追求権を「国政の上で、最大の尊重を必要とする」ものと定めています。被災者の幸福の追求を、国政は全力をあげて追求しなければなりません。全国民がそれを求めるべきです。
 財界・政府は道州制で住民自治のさらなる解体を進めようとしていますが、反対に被災者のコミュニティーを守り、それを復興の主体とする工夫が必要です。上からの「おしつけ復興」でなく、「被災者が描き、行政が実現する復興」としていかなければなりません。
 その過程で、大企業は身銭を切るべきです。いかに資本主義といえども、企業は人のためにあるのであって、企業は人闇の幸福を実現する手段でなければなりません。それを、政府は財界に正面から求めるべきです。労働者・下請け切りなどあってはなりません。
 「復興はたたかいだ」というのが震災後16年をへた兵庫での実感です。
(聞き手 中川亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月7日付掲載



確かに、宮城や岩手、福島などは日本の漁獲高の約3割があると言われるほどの地域です。それに首都圏の台所を支えている地域。
その立ち上がり、再建を国を挙げて支援していかないといけないでしょうね。

石川さんは地元神戸の、ワーキングプアや従軍慰安婦と運動をすすめている学者です。やはり、被災者が描く復興を進めるためにも闘わないといけないんでしょうね。実感をもって語っています。
コメント
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