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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保改定60年 第3部⑩ 米軍こそ「安保ただ乗り」 日本の基地 作戦に不可欠 軍事ジャーナリスト 前田哲男さんに聞く

2020-09-15 07:56:12 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第3部⑩ 米軍こそ「安保ただ乗り」 日本の基地 作戦に不可欠
軍事ジャーナリスト 前田哲男さんに聞く


在日米軍の駐留経費をめぐり、米側は「米国は日本を守っているのだからコストを払うのは当然」だと要求し、日本側も「在日米軍は日本を守る抑止力」であるという固定観念にとらわれ、唯々諾々と増額に応じてきました。本当にそうなのか―。軍事ジャーナリストの前田哲男さんに聞きました。



乱暴な議論
安全保障のコストを考える場合、そもそも軍事力が唯一の手段なのか吟味しなければなりません。第2次世界大戦後に国連憲章で戦争行為は違法とされ、国際法や国連の下にある安全保障が構築されました。そういう成り立ちの上に今の国際社会はあります。いきなり軍事力というオプションから入り、コストに結びつけるのは乱暴な議論でしょう。
そもそも米国が日本の全てを軍事力で守っていません。尖閣諸島でさえ、8月29日の日米防衛相会談で「日米安保条約第5条が適用される」と確認しなければならない体たらくです。在沖縄米海兵隊も年間の半分以上はオーストラリアなど海外に展開しており、日本防衛のためだけでないのは明らかです。
このことは日米安保条約を見ても明瞭です。第5条で、条約区域は「日本国の施政の下にある領域」と定め、いずれか一方への武力攻撃に共同して対処するとしています。一方、第6条で基地の使用目的は「極東における国際の平和及び安全の維持」と定めています。さらに、国会で示された政府見解では米軍の行動範囲に限定はありません。①条約区域(日本)②駐留目的区域(極東)③行動範囲(全世界)1の3層構造になっているのです。「日本防衛のために米軍基地がある」のは誤りです。




巨大な権益
米側から見た在日米軍基地とは何か。一言でいえば巨大な資産であり権益です。在日米軍基地なくして朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争はたたかえなかったでしょう。米本土から出撃すれば莫大な時間と費用が必要だからです。トランプ米大統領は“日本は安保にただ乗りしている”と言いますが、むしろ米軍がただ乗りしているのが実態です。
日米地位協定24条は、①土地や既存施設は日本側の負担②必要な施設整備や人件費、光熱水費などの運営費用は米側の負担―だと整理しています。私が長崎県佐世保市で勤務していた1960年代は、基地従業員の給料は米国の予算委員会で審議され、支給されていました。そのため、米海軍佐世保基地の従業員も米議会の予算審議の動向に注目し、最大の関心を払っていました。それが今も変わらぬ日米地位協定の原則です。
78年度に「思いやり予算」が生まれた当時は、どう英訳するのかが日米両政府の悩みの種でした。「思いやり」にあたる英語がないのです。強いて訳せは「シンパシー・バジェット(同情予算)」です。しかし、在日米大使館関係者の話では「同情予算」という名目では米議会が烈火のごとく怒るため、「ホスト・ネーション・サポート(接受国支援)」という名称をつけたそうです。英訳すら困難なほど日米地位協定から見て異常な予算だったのです。


“思いやり予算”廃止しかない
対等は可能
今秋から新たな「思いやり予算」特別協定の交渉が本格化します。日米地位協定からも逸脱した特別協定は廃止するのが当然です。本来であれば「米軍こそがただ乗りしてきた」と批判すべきだし、43年間払い続けてきた思いやり予算は「協定違反の支払い超過だった」とテーブルに乗せて交渉することも可能なはずです。しかし、米国に追随してきた自民党政府には無理でしょう。だからこそ政権を代えなければいけません。
最終目標は日米安保条約に代わる別の枠組みを米側に提示することですが、ドイツやイタリアは地位協定を改定し、米軍の訓練規制や自治体の基地立ち入り権の拡大を実現しました。仮に安保条約に手を付けなくても、日本も地位協定を改定し、これまで過度に提供してきた権益を対等に修正することは可能です。
(第3部おわり、このシリーズは竹下岳、柳沢哲哉、齋藤和紀、石黒みずほが担当しました)

1月から3部構成で掲載してきた「シリーズ安保改定60年」はこれで終わります。このうち、第1部はパンフレットにしています。(日本共産党中央委員会出版局『安保改定60年「米国言いなり」の根源を問う』(650円))

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年9月13日付掲載


在日米軍基地なくして朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争はたたかえなかった。米本土から出撃すれば莫大な時間と費用が必要だから。
むしろ米軍がただ乗りしているのが実態。
この際、思いやり予算とはきっぱり縁を切るべきです。

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