原発拒否の島はいま～山口・祝島（いわいしま）①

2013-01-22 20:00:30 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー

原発拒否の島はいま～山口・祝島（いわいしま）①
推進派の巻き返し～建設あきらめていない

自公政権が復活したもとで、原発の新設が息を吹き返そうとしています。安倍首相の地元、山口県で中国電力が工事再開を狙う上関（かみのせき）原発（上関町）もその一つです。原発予定地から約４キロの離島、上関町祝島（いわいしま）では島民の９割が原発を拒否し、３０年間にわたる反対運動を続けています。（本田祐典）

瀬戸内海の入り口に浮かぶ祝島は人口４８０人。上関町と１日３便の定期船で結ぶ、ハート形をした周囲１２キロの小さな島です。
定期船を下りて港から少し歩くと、漁協前の広場に掲げられた「原発絶対反対」の看板が目に入ります。

朝市の風景にとけこむ、原発絶対反対の看板＝山口県上関町祝島

海は売れん
島の漁師らは、「みんなの海をカネで売ることはできん」と中国電力からの補償金を受け取らずにきました。
小さな漁船の生簀（いけす）をのぞかせてもらうと、タイやメバルが。この豊かな漁場も、原発から大量の温排水が流れれば激変します。
訪れた日、漁協前の広場は月に１度の朝市でにぎわっていました。
島で放牧する豚の肉やソーセージを並べた氏本農園の氏本長一さん（６２）。原発をめぐる情勢に気をもみ、「安倍さんと自民党には困ったもんじゃ」と眉をひそめます。
「この島のお年寄りは毎朝、太陽がのぼる東の方角を拝む。そこに原発をつくって拝ませるなんて、非人道的じゃろ」
氏本さんが指さす先は、原発予定地の田ノ浦です。海を挟んで島の真東に位置します。
島内の家やお墓はほとんどが東に向かって立ち、島民にとって田ノ浦は特別な存在です。
その田ノ浦にはいま、抗議行動を監視するために中国電が建てた鋼管のやぐらが三つ、浜を見下ろすように並んでいます。
田ノ浦を訪ね、誰のものでもないはずの砂浜を歩いていると突然、スピーカーから「立ち入っている方は、すみやかに退出してください」と録音された女性の声が流れました。
それでも、中国電が強行していた埋め立て準備工事は止まっています。工事車両や作業船の姿は見当たりません。
転機は、一昨年３月の東京電力福島第１原発事故でした。
「ハチマキを巻いて大賛成しちょったが、もう原発はいらん」。推進派を３０年続けた上関町の７０代男性は心境の変化を語ります。
隣接する自治体にも原発事故後、「賛成できない」（光市の市川煕市長）、「認められない」（周防大島町議会の意見書）などと建設反対が広がります。
原発建設は不可能になったかに見えました。ところが―。

原発予定地の田ノ浦から見た祝島(奥)

強い危機感
「安倍政権の誕生で、巻き返しが起きている。中国電や推進派は決してあきらめていない」
上関原発を建てさせない祝島島民の会、清水敏保代表は強い危機感を口にします。
安倍首相は就任後、「国民の理解を得ながら（原発を）新規につくっていくことになる」（昨年１２月３０日、ＴＢＳ番組）と明言しました。
中国電も、「建設を断念することは考えておりません」との文書を、町内各戸に配ります。
田ノ浦の埋め立て免許を延長しないと公約して昨年７月の知事選で当選した山本繁太郎県知事も、当選後は建設計画の存続に手を貸しています。昨年１０月に失効するはずの埋め立て免許は、中国電の延長申請を県が審査する形で継続しています。
県は中国電に３回にわたって補足説明を求め、そのたび判断は延期。島民の目には、「県は国の意向をうかがって、引き延ばし作戦をしている」（清水代表）と映ります。
つぎの節目は中国電の補足説明を受けて県が判断を示す今月２５日。免許延長か、失効か、また引き延ばしか―。（つづく）

「しんぶん赤旗」日刊紙　2013年1月19日付掲載