大企業の決算どうみる④ 鉄鋼 本業不振、利益押し下げ
鉄鋼大手3社の2019年3月期連結決算は、いずれも本業の鉄鋼事業が振るわず、利益が押し下げられました。新日鉄住金から改称した日本製鉄と、JFEホールディングス(JFEHD)が今回から国際会計基準(IFRS)を採用しました。
鉄鋼大手3社の2019年3月期連結決算
各社の決算短信から作成。( )内は神戸製鋼所のみ。%は前期比増減率。▲はマイナス
自然災害響き減益
日本製鉄は連結で、前期比16・7%増となる3369億円の事業利益を上げたものの、本業の稼ぎを示す営業利益では同8・2%減の2651億円にとどまりました。
単体の営業利益は251億円で、390億円の在庫評価益を差し引くと139億円の赤字でした。前期は、営業利益が64億円、630億円の在庫評価益を差し引いて566億円の赤字だったため、2期連続赤字となりました。
建設関連などの需要の追い風を受け、鋼材の値上げも行ったものの、自然災害による損失が響くとともに、原料費や物流費などのコスト上昇を値上げで吸収できませんでした。
JFEHDは、連結の事業利益で前期比6・3%増の2320億円を上げました。しかし、鉄鋼の連結部門利益では、前期比13・8%減の1613億円となりました。
高炉の操業トラブルや自然災害などの影響で、連結の粗鋼生産量が前期に比べ減少しました。それに加え、資材費、物流費などのコストが上昇し、鋼材価格の改定などを行ったものの、鉄鋼部門が前期比で減益となりました。
神戸製鋼は、営業利益が482億円、経常利益が346億円と、それぞれ前期比45・7%減、51・3%減の大幅減益でした。
鋼材の販売数量は、国内の自動車同け中心に需要が堅調だったにもかかわらず、加古川製鉄所の生産設備のトラブルや自然災害の影響で、前期を下回りました。鉄鋼価格の改定を行ったものの、設備トラブルや自然災害による販売数量の減少、設備トラブルによる保全費の増加、物流費の増加などに加え、在庫評価影響も悪化し、大幅減益となりました。

日本製鉄の君津製鉄所=千葉県君津市
世界経済への懸念
20年3月期の業績予想については、各社とも、鉄鋼需要は内外ともに堅調に推移するとみています。しかし、米中貿易摩擦や、欧州連合(EU)からの英国の離脱などの影響を受け、世界経済の成長が鈍化する可能性を懸念材料として指摘しています。
日本製鉄は、鋼材価格の改定について需要側と交渉中であり、19年3月期決算の時点では、「合理的な算定・予想」を行うことができないとして、公表を見送りました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年5月31日付掲載
鉄鋼各社は、本業の鉄鋼事業が不調なことと、自然災害で減益。世界経済の鈍化の影響も懸念材料です。
鉄鋼大手3社の2019年3月期連結決算は、いずれも本業の鉄鋼事業が振るわず、利益が押し下げられました。新日鉄住金から改称した日本製鉄と、JFEホールディングス(JFEHD)が今回から国際会計基準(IFRS)を採用しました。
鉄鋼大手3社の2019年3月期連結決算
社名 | 売上収益 (売上高) | 事業利益 | 営業利益 | 税引前利益 (経常利益) | 当期利益 | |||||
億円 | % | 億円 | % | 億円 | % | 億円 | % | 億円 | % | |
日本製鉄 | 61,779 | 8.1 | 3,369 | 16.7 | 2,651 | ▲8.2 | 2,487 | ▲8.5 | 2,511 | 38.9 |
JFEHD | 38,736 | 6.3 | 2,320 | 6.3 | 2,093 | 36.9 | 1,635 | 67.5 | ||
神戸製鋼所 | 19,718 | 4.8 | 482 | ▲45.7 | 346 | ▲51.3 | 359 | ▲43.1 |
自然災害響き減益
日本製鉄は連結で、前期比16・7%増となる3369億円の事業利益を上げたものの、本業の稼ぎを示す営業利益では同8・2%減の2651億円にとどまりました。
単体の営業利益は251億円で、390億円の在庫評価益を差し引くと139億円の赤字でした。前期は、営業利益が64億円、630億円の在庫評価益を差し引いて566億円の赤字だったため、2期連続赤字となりました。
建設関連などの需要の追い風を受け、鋼材の値上げも行ったものの、自然災害による損失が響くとともに、原料費や物流費などのコスト上昇を値上げで吸収できませんでした。
JFEHDは、連結の事業利益で前期比6・3%増の2320億円を上げました。しかし、鉄鋼の連結部門利益では、前期比13・8%減の1613億円となりました。
高炉の操業トラブルや自然災害などの影響で、連結の粗鋼生産量が前期に比べ減少しました。それに加え、資材費、物流費などのコストが上昇し、鋼材価格の改定などを行ったものの、鉄鋼部門が前期比で減益となりました。
神戸製鋼は、営業利益が482億円、経常利益が346億円と、それぞれ前期比45・7%減、51・3%減の大幅減益でした。
鋼材の販売数量は、国内の自動車同け中心に需要が堅調だったにもかかわらず、加古川製鉄所の生産設備のトラブルや自然災害の影響で、前期を下回りました。鉄鋼価格の改定を行ったものの、設備トラブルや自然災害による販売数量の減少、設備トラブルによる保全費の増加、物流費の増加などに加え、在庫評価影響も悪化し、大幅減益となりました。

日本製鉄の君津製鉄所=千葉県君津市
世界経済への懸念
20年3月期の業績予想については、各社とも、鉄鋼需要は内外ともに堅調に推移するとみています。しかし、米中貿易摩擦や、欧州連合(EU)からの英国の離脱などの影響を受け、世界経済の成長が鈍化する可能性を懸念材料として指摘しています。
日本製鉄は、鋼材価格の改定について需要側と交渉中であり、19年3月期決算の時点では、「合理的な算定・予想」を行うことができないとして、公表を見送りました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年5月31日付掲載
鉄鋼各社は、本業の鉄鋼事業が不調なことと、自然災害で減益。世界経済の鈍化の影響も懸念材料です。
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