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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

インフレ不況と希望の出口戦略① 天井見えぬ円安と物価高騰

2024-05-29 07:09:02 | 経済・産業・中小企業対策など
インフレ不況と希望の出口戦略① 天井見えぬ円安と物価高騰
物価高騰が国民生活を直撃しています。背景にある自民党政権の経済政策の問題点と打開の道筋について、下関市立大学の関野秀明教授に寄稿してもらいます。
(5回連載)

関野秀明・下関市立大学教授
せきの・ひであき1969年京都府生まれ。1999年九州大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、下関市立大学経済学部教授(理論経済学)。本連載の詳細は近著『インフレ不況と『資本論』―新しい福祉国家という出口戦略』(新日本出版社)参照




10年続いているアベノミクスは深刻な破綻的状況に陥っています。図1は、第2次安倍晋三政権発足前の2012年を基準値1として24年2月までの消費者物価指数と実質賃金指数の変化を示します。生鮮食品など生活必需品として最も頻繁に購入(年間15回以上)する商品「頻度6」44種類は24%上昇、生鮮食品を除く食料品全般も29%上昇、ガソリンは価格激変緩和補助金の投入にもかかわらず23%上昇、総合指数も13%上昇し低下傾向が見えません。他方で賃金は長期にわたり低迷しており、実質賃金指数(5人以上の事業所、きまって支給する給与)は現在、前年同月比25カ月連続マイナスとなり、12年比で10%も下がっています。このままインフレを放置すれば日本は深刻なインフレ不況に陥るでしょう。



通貨価値が下落
現在のインフレは円安による輸入物価高騰から始まりました。特に注目すべきは物価変動を織り込んだ「実質実効為替レート」です。図2は、1986年1月を基準とした「実質実効為替レート」の変化です。86年1月に日本は米国において1ドルで販売される商品を200円で購入していました。しかし、2024年2月に日本は米国において同じ商品を購入するのに353円支払わなければならなくなりました。この円安水準は1970年をもしのぐ通貨価値の実質的下落です。本来、これだけ円安が進めば、日本は割高な輸入を減らし割安な輸出を増やせるはずです。1ドル=110円の時、日本の自動車会社が米国で1万ドルの自動車を販売すると110万円の売り上げになります。しかし、1ドル=150円の時は150万円の売り上げになるので、価格を下げて輸出・販売を伸ばせるはずです。しかし、記録的な円安のもとで日本の貿易収支は2022年に20・3兆円の赤字、23年に9・3兆円の赤字と赤字傾向が定着しています。

進む産業空洞化
図2は、24年2月の製造工業生産能力指数が98・5となり1985年水準まで下がっていることを示します。第2次安倍政権は「成長戦略」と称し、大企業製造業の多国籍化・産業空洞化を促進し、国内労働者のリストラを許しました。このため、日本の製造業は衰退し、①円安でも輸出が伸びない②逆に輸入物価高騰で貿易赤字が増える③貿易赤字を支払うため円を売ってドルを買うので円安が進む④いっそう輸入物価が高騰する―という悪循環に陥っています。
為替レートは①経済成長率②貿易収支③金利差―で決まります。アベノミクスの下で日本は①長期にゼロ成長が続き②貿易赤字が定着し③米欧がインフレ鎮圧のため政策金利を5%に引き上げても日本はゼロ金利を継続中―のため円安と物価高騰の天井が見えない状況に追い込まれています。本来であればインフレを止めるために、日本は量的金融緩和政策を終了、利上げをしなければならないはずです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月28日付掲載


生鮮食品など生活必需品として最も頻繁に購入(年間15回以上)する商品「頻度6」44種類は24%上昇、生鮮食品を除く食料品全般も29%上昇、ガソリンは価格激変緩和補助金の投入にもかかわらず23%上昇、総合指数も13%上昇。
86年1月に日本は米国において1ドルで販売される商品を200円で購入。しかし、2024年2月に日本は米国において同じ商品を購入するのに353円支払わなければならなくなりました。
24年2月の製造工業生産能力指数が98・5となり1985年水準まで下がっている。
本来であればインフレを止めるために、日本は量的金融緩和政策を終了、利上げをしなければならないはず。

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