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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

軍拡と財政金融危機④ 軍事費が壊す社会保障

2022-10-27 07:10:47 | 予算・税金・消費税・社会保障など
軍拡と財政金融危機④ 軍事費が壊す社会保障
群馬大学名誉教授 山田博文さん

予算のあり方は、その国の姿を忠実に反映します。とくに一般会計の歳出費目は、国民から徴収した税金がどの分野にどれだけ配分されているかを正確に映し出す鏡です。
戦前と戦後の一般会計の歳出費目を比較すると(図)、軍事国家から平和国家へ激変したことがわかります。
太平洋戦争に突入した1941年度の一般会計歳出では、軍事関係費が突出し、予算全体の50・2%を占めました。そのしわ寄せを受けた代表的な費目は社会保障関係費であり、予算全体の2・3%にすぎず、旧軍人とその家族などへの恩給関係費4・3%を大幅に下回っています。国民の社会生活や権利に一切責任を持たない国の姿勢が予算配分に示されています。
他方、戦後77年たった今年度予算では、軍事関係費の占める割合は5・0%です。予算の最大の費目は社会保障関係費であり、全体の33・7%を占めています。




暮らしが犠牲に
周知のように、戦後の憲法は、その第25条で国民の生存権を明記し、国民は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障され、政府は「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上」に努める義務を負っています。
戦前と戦後の予算を比較すると、戦時下で真っ先に犠牲になるのは国民の生活と権利であることがわかります。一定の予算枠の中で、軍事費が増大すると社会保障関係費は削減され、両者は両立しません。
国家予算に占める軍事費の割合が日本の3倍の約15%(円換算で約100兆円)に達する米国では、社会保障関係費は貧弱となり、年金でも保険でも国民は自己負担を強いられています。米国を現地取材した堤未果氏(『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書)によれば、皆保険でなく限定的な公的医療保険しかない米国で民間保険にも未加入の場合、「一度の病気で貧困層に転落」するほど医療費が高額のようです。急性虫垂炎で1日入院した場合の入院費は、日本では数万円程度ですが、ニューヨークやロサンゼルスでは200万円前後もかかってしまうからです。
一般会計の国債費は、今年度の22・6%に比べて戦前の方が14・7%と低くなっています。そのわけは、日清戦争以来の4回の大きな戦争において、国債増発による軍事費の調達・配分、・全体処理を一身に担っていたのは、一般会計から切り離された臨時軍事費特別会計だったからです。一般会計はこの特別会計に軍事関係費の一部を繰り入れていたにすぎません。戦争の始期から終期までを1会計年度とみなして処理する臨時軍事費特別会計は終戦によってなくなりました。



米社レイセオンとロッキード・マーチンが開発し三菱重工などがライセンス生産している地対空誘導弾パトリオットの発射システム(航空自衛隊ホームページから)

経済成長に逆行
軍事関係費が増えても、ごく少数の巨大軍需企業に独占されるので、経済成長に結びつかないどころか、経済成長に直結する社会保障・福祉予算を削減し、むしろ経済成長の基盤を壊してしまいます。軍事と社会保障・福祉は両立しませんが、経済成長と社会保障・福祉は両立します。しかも、社会保障・福祉への予算は従来の公共事業分野よりも経済成長に貢献することが計測されています。
2009年の京極高宣国立社会保障・人口問題研究所所長(当時)の試算によると、需要1億円当たりの雇用創出効果は、介護では24・786人、社会福祉では18・609人にのぼります。他方、公共事業では介護の半分以下の9・97人にすぎません。(「朝日」09年4月19日付)
社会保障分野に予算を振り向け、需要を増やすことが安定した多くの雇用を創出し、経済成長を実現する道です。高度に発達した日本の産業構造では、公共事業で直接利益を得る建設業・製造業とその従業員の割合は2割程度にすぎず、就業者の7割以上はサービス産業に従事しているからです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月21日付掲載


国家予算に占める軍事費の割合が日本の3倍の約15%(円換算で約100兆円)に達する米国では、社会保障関係費は貧弱となり、年金でも保険でも国民は自己負担を強いられる。米国を現地取材した堤未果氏(『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書)によれば、皆保険でなく限定的な公的医療保険しかない米国で民間保険にも未加入の場合、「一度の病気で貧困層に転落」するほど医療費が高額。急性虫垂炎で1日入院した場合の入院費は、日本では数万円程度ですが、ニューヨークやロサンゼルスでは200万円前後もかかってしまう。
軍事と社会保障・福祉は両立しませんが、経済成長と社会保障・福祉は両立します。しかも、社会保障・福祉への予算は従来の公共事業分野よりも経済成長に貢献することが計測されています。

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