エネルギーの未来 政府計画案を読む① 若者の願いに応えず
菅義偉政権は3日、エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメントの募集を開始しました。秋に開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までには基本計画が閣議決定される見込みです。この連載では政府案の問題点について、気候危機と原発という角度から論じます。
(日本共産党原発・気候変動・エネルギー問題対策委員会鈴木剛)
今、エネルギー政策にとって最大の課題は、地球温暖化対策です。温室効果ガス排出量の9割近くをエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)が占めているからです。
近年、台風や線状降水帯によってこれまで経験したことのない豪雨が発生しています。九州、中国をはじめ日本各地で洪水や土砂災害が引き起こされるようになりました。
欧米でも、1日で平年の月降水量の1・5倍という集中豪雨・洪水がドイツで発生しています。イタリアでは欧州最高(観測史上)、アメリカでは世界最高(同) とみられる異常高温が観測され、山火事が多発しています。
「未来のための金曜日」運動に参加している若い人たちは、気候危機を自分の未来に直結する問題ととらえています。「あと4年以内に大きく動きださないと、産業革命前に比べて気温の上昇が1・5度を超える」「私が24歳になるとき地球はタイムリミットと言われるとものすごく悲しい気持ちになる」など、切迫感をもって行動しています。
ところが政府案は、こうした気候危機の現実と若者の願いにこたえるものとはなっていません。
表1 各国の温室効果ガス削減目標
(資料)環境省公表資料、国立環境研「温室効果ガスインベントリ」の「付属書1国のガス別分野別温室効果ガス排出量」など
表2 電源構成の現状・目標(%)
●低すぎる目標
地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定(2015年)は、気温上昇を1・5度以内に抑えることを目標としました。そのためには世界の温室効果ガス排出量を、30年に45%削減(10年比)し、50年に実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることが求められています。
日本は安倍政権以来、「30年度26%減、50年度80%減」(13年度比)を目標としていましたが、頻発する異常気象や世論に押されて昨年10月、「50年カーボンニュートラル」を表明しました(世界で123番目)。また、今年4月にアメリカが主催した気候サミットで、30年度に13年度比46%削減という目標を表明しました。
しかし、途上国を含む世界全体で10年比45%削減を達成するためには、歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国には、より大きな削減が求められます。欧州連合(EU)は55%減(1990年比)、ドイツは65%減(同)、イギリスは68%減(同。2035年には78%減)、バイデン政権でパリ協定に復帰したアメリカは50~52%減(05年比)などを目標としています。(表1)
日本も先進国としての責任を果たすにふさわしく、削減目標を5割~6割に引き上げることが求められます。
温室効果ガス削減目標の引き上げを求める若者たち=4月22日、経済産業省前
●30年度の需給
政府案は「50年カーボンニュートラル実現」を掲げ、再生可能エネルギーについては「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入」、原子力については「必要な規模を持続的に活用」としました。そのうえで、30年度のエネルギー需給の姿を次のように示しています。(表2)
▽電力・熱・燃料などを含むエネルギー供給は13年度比21%減。供給量の内訳は石油31%程度、石炭19%程度、天然ガス18%程度、再エネ22~23%程度、原子力9~10%程度など。エネルギー起源CO2は13年度比45%減。
▽発電量は13年度比約14%減。電源構成比は、石油2%、石炭19%、液化天然ガス(LNG)20%、再エネ36~38%、原子力20~22%など。
気候危機を乗り越え持続可能な社会をめざすエネルギー需給構造の転換では、省エネと再エネの大胆な導入、石炭火力からの撤退、原発ゼロが求められます。
(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年9月8日付掲載
「未来のための金曜日」運動に参加している若い人たちは、気候危機を自分の未来に直結する問題と。
しかし、日本政府の温室効果ガス削減目標はあまりにも低い。2050年には実質ゼロとは言うものの、2030年は13年度比46%削減。あまりにも少ない。
途上国を含む世界全体で10年比45%削減を達成するためには、歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国には、より大きな削減が求められます。
日本共産党は、2030年度までに、CO2を50%~60%削減する(2010年度比)ことを目標とすることを提案します。それを省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて実行します。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば、50%~60%の削減は可能です。さらに2050年にむけて、残されたガス火力なども再生可能エネルギーに置き換え、実質ゼロを実現します。
菅義偉政権は3日、エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメントの募集を開始しました。秋に開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までには基本計画が閣議決定される見込みです。この連載では政府案の問題点について、気候危機と原発という角度から論じます。
(日本共産党原発・気候変動・エネルギー問題対策委員会鈴木剛)
今、エネルギー政策にとって最大の課題は、地球温暖化対策です。温室効果ガス排出量の9割近くをエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)が占めているからです。
近年、台風や線状降水帯によってこれまで経験したことのない豪雨が発生しています。九州、中国をはじめ日本各地で洪水や土砂災害が引き起こされるようになりました。
欧米でも、1日で平年の月降水量の1・5倍という集中豪雨・洪水がドイツで発生しています。イタリアでは欧州最高(観測史上)、アメリカでは世界最高(同) とみられる異常高温が観測され、山火事が多発しています。
「未来のための金曜日」運動に参加している若い人たちは、気候危機を自分の未来に直結する問題ととらえています。「あと4年以内に大きく動きださないと、産業革命前に比べて気温の上昇が1・5度を超える」「私が24歳になるとき地球はタイムリミットと言われるとものすごく悲しい気持ちになる」など、切迫感をもって行動しています。
ところが政府案は、こうした気候危機の現実と若者の願いにこたえるものとはなっていません。
表1 各国の温室効果ガス削減目標
2019年実績 | 2030年目標 | 備考 | ||
日本 | 2013年度比 | ▼14%(▼5%) | ▼46%(▼40%) | ()内は1990年度比 |
EU全体 | 1990年比 | ▼28% | ▼55% | |
イギリス | 1990年比 | ▼43% | ▼68% | 35年目標▼78% |
ドイツ | 1990年比 | ▼35% | ▼65% | |
アメリカ | 2005年比 | ▼2%(+2%) | ▼50~52%(▼48~50%) | ()内は1990年度比 |
表2 電源構成の現状・目標(%)
電源 | 2019年度 | 2030年度 | ||
現行目標 | 新目標 | |||
再工ネ | 18 | 22~24 | 36~38 | |
原子力 | 6 | 20~22 | 20~22 | |
火力 | 石炭 | 32 | 26 | 19 |
LNG | 37 | 27 | 20 | |
石油など | 7 | 3 | 2 | |
その他 | 0 | 0 | 1 |
●低すぎる目標
地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定(2015年)は、気温上昇を1・5度以内に抑えることを目標としました。そのためには世界の温室効果ガス排出量を、30年に45%削減(10年比)し、50年に実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることが求められています。
日本は安倍政権以来、「30年度26%減、50年度80%減」(13年度比)を目標としていましたが、頻発する異常気象や世論に押されて昨年10月、「50年カーボンニュートラル」を表明しました(世界で123番目)。また、今年4月にアメリカが主催した気候サミットで、30年度に13年度比46%削減という目標を表明しました。
しかし、途上国を含む世界全体で10年比45%削減を達成するためには、歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国には、より大きな削減が求められます。欧州連合(EU)は55%減(1990年比)、ドイツは65%減(同)、イギリスは68%減(同。2035年には78%減)、バイデン政権でパリ協定に復帰したアメリカは50~52%減(05年比)などを目標としています。(表1)
日本も先進国としての責任を果たすにふさわしく、削減目標を5割~6割に引き上げることが求められます。
温室効果ガス削減目標の引き上げを求める若者たち=4月22日、経済産業省前
●30年度の需給
政府案は「50年カーボンニュートラル実現」を掲げ、再生可能エネルギーについては「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入」、原子力については「必要な規模を持続的に活用」としました。そのうえで、30年度のエネルギー需給の姿を次のように示しています。(表2)
▽電力・熱・燃料などを含むエネルギー供給は13年度比21%減。供給量の内訳は石油31%程度、石炭19%程度、天然ガス18%程度、再エネ22~23%程度、原子力9~10%程度など。エネルギー起源CO2は13年度比45%減。
▽発電量は13年度比約14%減。電源構成比は、石油2%、石炭19%、液化天然ガス(LNG)20%、再エネ36~38%、原子力20~22%など。
気候危機を乗り越え持続可能な社会をめざすエネルギー需給構造の転換では、省エネと再エネの大胆な導入、石炭火力からの撤退、原発ゼロが求められます。
(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年9月8日付掲載
「未来のための金曜日」運動に参加している若い人たちは、気候危機を自分の未来に直結する問題と。
しかし、日本政府の温室効果ガス削減目標はあまりにも低い。2050年には実質ゼロとは言うものの、2030年は13年度比46%削減。あまりにも少ない。
途上国を含む世界全体で10年比45%削減を達成するためには、歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国には、より大きな削減が求められます。
日本共産党は、2030年度までに、CO2を50%~60%削減する(2010年度比)ことを目標とすることを提案します。それを省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて実行します。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば、50%~60%の削減は可能です。さらに2050年にむけて、残されたガス火力なども再生可能エネルギーに置き換え、実質ゼロを実現します。
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