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AIとルール② 「風呂敷」作ったG7

2023-12-24 07:04:32 | 経済・産業・中小企業対策など
AIとルール② 「風呂敷」作ったG7

経済研究者 友寄英隆さん(寄稿)

12月1日に、日本が議長国を務める主要7力国(G7)が「デジタル・技術閣僚声明」を発表しました。この声明は、今年5月に広島で開かれたG7サミットのさいに設立された、人工知能(AI)のルール作りを継続的に議論する作業(「広島プロセス」)の成果を取りまとめたものです。
G7合意の内容は、声明本体のほか、さまざまな付属文書からなっています。(表)
これらのうちで最も注目されるのは、「全てのAI関係者向けの国際指針」です。このなかには▽「偽情報の拡散」への対応▽「個人データ及び知的財産」の保護▽「電子透かし」などによる「透明性の確保」▽AIがはらむリスク▽脆弱(ぜいじゃく)性検知への協力▽AIリテラシーの向上▽情報の共有―などが盛り込まれています。
しかし、こうしたAーリスクにたいしてどう対応するかという具体的な方策で合意したわけではありません。比喩的に言えば、目指すべきAIルールを包み込む大きな風呂敷は作ったが、その中に入れるべき具体的な方策そのものはこれからだということです。


「広島AIプロセス」の成果文書
G7デジタル・技術閣僚声明
(まえがき)
Ⅰ.広島AIプロセス包括的政策枠組み
Ⅱ.広島AIプロセスを前進させるための作業計画
(別添)広島AIプロセス包括的政策枠組み
(まえがき)
Ⅰ.生成AIに関するG7の共通理解に向けたOECDリポート
Ⅱ.全てのAI関係者向けおよび高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針
Ⅲ.高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範
Ⅳ.プロジェクト・ベースの協力
(付属書1)全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針
信頼性のあるデータ流通(DFFT)の具体化に関するG7デジタル・技術閣僚声明
(付属書)DFFT具体化のための国際枠組み(IAP)の設立およびG7の期待に関するコンセプトペーパー


異なるルール
声明の第3項には、次のような文言があります。
「信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段は、G7メンバー間で異なる場合があることを認識している(太字は引用者)」
つまり、「信頼できるAI」の共通のビジョンと目標は国際的に定めたが、それを実現する具体的な政策手段は各国で異なってもよいということです。これは、現実に欧州連合(EU)、米国、日本などのG7諸国の間で進められているAIのルール作りの大きな相違を追認したものと言えるでしょう。
しかし、米国のオープンAI社のチャットGPTが公開されてわずか1年の間に世界中を席巻したように、AIなどのデジタル技術には国境はありません。はたして、各国バラバラなルールでリスクを規制できるものなのかどうか、たいへん疑問です。


前進始まった
とはいえ、AIの開発と利用についてのルール作りの「国際的指針」をきめたこと自体は、一定の前進だと言えるでしょう。
AIの国際的なルール作りは、ようやく始まったばかりです。
19世紀の産業革命で急速に機械工業が発展し、産業や社会の各分野で機械が普及していったときには、労働条件を守るための工場法が制定されました。イギリスの場合は、1802年に最初の工場法が成立してから、その法的不備が明らかになるたびに、何度も改正が繰り返されて、1878年の包括的な工場法が制定されるまで実に76年もかかりました。この期間に、労働者・国民の粘り強いたたかいが継続的におこなわれました。
AIのルール作りについても、これから長期にわたる課題として、腰を据えてしっかりと監視していくことが求められています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年12月20日付掲載


最も注目されるのは、「全てのAI関係者向けの国際指針」です。このなかには▽「偽情報の拡散」への対応▽「個人データ及び知的財産」の保護▽「電子透かし」などによる「透明性の確保」▽AIがはらむリスク▽脆弱(ぜいじゃく)性検知への協力▽AIリテラシーの向上▽情報の共有―などが盛り込まれていること。
19世紀の工場法づくりは76年もかかった。AIのルール作りについても、これから長期にわたる課題として、腰を据えてしっかりと監視していくことが求められています。


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