ニセ科学の正体② マイナスイオン
左巻健男
大企業も巻き込んだニセ科学に「マイナスイオン」があります。マイナスという数学用語にイオンという科学用語が結びつけてあるから、そういう科学用語があるように思ってしまうかもしれません。しかし、こんな科学用語はないのです。
どうも日本人がつくった和製英語のようなんです。
科学用語に中学校理科や高校化学の教科書にも出てくる「陰イオン」があるのですが、マイナスイオンは、それとはまったく別物です。
正体もはっきりしません。多くのマイナスイオンを出す機器は、負の高い電圧(数千ボルト)をかけて電子を飛び出させて、その電子を酸素分子や水分子にくっつけるというものです。イメージとして、機器の発生口から電子がくっついて負の電気をもった何らかの微粒子が出ているという感じです。
テレビ番組がマイナスイオンブームの火付け役でした。1999年から2002年にかけてマイナスイオンの特集番組で、マイナスイオンの驚くべき効能がうたわれたのです。プラスイオンを吸うと心身の状態が悪くなるのに対し、マイナスイオンは、空気を浄化し、吸えば気持ちのいらいらがなくなり、ドロドロ血ではなくなり、アトピーにも高血圧などにも効く、つまり健康によい、とされました。番組の説明は、科学的な根拠のないニセ科学でしたが、それでもマイナスイオンは流行語となりました。
大企業もマイナスイオンあるいはそれに似たことをうたって商品を出しました。エアコン、冷蔵庫、パソコン、マッサージ器、ドライヤーや衣類・タオルなどまで広い範囲の商品がマイナスイオン発生をうたいました。

小野絵里
マイナスイオンなるものの実体がはっきりしない、健康によい証拠はない、ものによっては有害なオゾンや窒素酸化物を発生するものもある、などの批判で、ひと頃のブームは終わっています。それでもマイナスイオンがニセ科学であることを知らない消費者をねらって、インチキ商品などの購買意欲をさそうのにいまだに「マイナスイオン」は利用されています。
もう「マイナスイオンは体によい」というイメージがつくられているので、「マイナスイオン発生」などとうたうだけで、勝手に「体によい」というイメージを持たれるようになっているのです。
国民がもっている科学への信頼感を利用して、科学的な装いをした説明で商品を売りつけようとするニセ科学が跋扈(ばっこ)しています。
(さまき・たけお 法政大学教授)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年10月1日付掲載
電化製品、特にパソコンなどで「マイナスイオンを発生」なんて言われると「まゆつばもの」とすぐに分かるのですが…。
森林浴とか、滝とかで「マイナスイオン発生」と言われると、もっともらしく感じられます。
森林浴や滝や湖水のほとりなどは気分爽快になることは確かですが、それと「マイナスイオン」を結びつけることは無理があると思いますネ。
左巻健男
大企業も巻き込んだニセ科学に「マイナスイオン」があります。マイナスという数学用語にイオンという科学用語が結びつけてあるから、そういう科学用語があるように思ってしまうかもしれません。しかし、こんな科学用語はないのです。
どうも日本人がつくった和製英語のようなんです。
科学用語に中学校理科や高校化学の教科書にも出てくる「陰イオン」があるのですが、マイナスイオンは、それとはまったく別物です。
正体もはっきりしません。多くのマイナスイオンを出す機器は、負の高い電圧(数千ボルト)をかけて電子を飛び出させて、その電子を酸素分子や水分子にくっつけるというものです。イメージとして、機器の発生口から電子がくっついて負の電気をもった何らかの微粒子が出ているという感じです。
テレビ番組がマイナスイオンブームの火付け役でした。1999年から2002年にかけてマイナスイオンの特集番組で、マイナスイオンの驚くべき効能がうたわれたのです。プラスイオンを吸うと心身の状態が悪くなるのに対し、マイナスイオンは、空気を浄化し、吸えば気持ちのいらいらがなくなり、ドロドロ血ではなくなり、アトピーにも高血圧などにも効く、つまり健康によい、とされました。番組の説明は、科学的な根拠のないニセ科学でしたが、それでもマイナスイオンは流行語となりました。
大企業もマイナスイオンあるいはそれに似たことをうたって商品を出しました。エアコン、冷蔵庫、パソコン、マッサージ器、ドライヤーや衣類・タオルなどまで広い範囲の商品がマイナスイオン発生をうたいました。

小野絵里
マイナスイオンなるものの実体がはっきりしない、健康によい証拠はない、ものによっては有害なオゾンや窒素酸化物を発生するものもある、などの批判で、ひと頃のブームは終わっています。それでもマイナスイオンがニセ科学であることを知らない消費者をねらって、インチキ商品などの購買意欲をさそうのにいまだに「マイナスイオン」は利用されています。
もう「マイナスイオンは体によい」というイメージがつくられているので、「マイナスイオン発生」などとうたうだけで、勝手に「体によい」というイメージを持たれるようになっているのです。
国民がもっている科学への信頼感を利用して、科学的な装いをした説明で商品を売りつけようとするニセ科学が跋扈(ばっこ)しています。
(さまき・たけお 法政大学教授)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年10月1日付掲載
電化製品、特にパソコンなどで「マイナスイオンを発生」なんて言われると「まゆつばもの」とすぐに分かるのですが…。
森林浴とか、滝とかで「マイナスイオン発生」と言われると、もっともらしく感じられます。
森林浴や滝や湖水のほとりなどは気分爽快になることは確かですが、それと「マイナスイオン」を結びつけることは無理があると思いますネ。
近年、日本人のがんの様相が変わってきました。胃がんが減少し、今や、肺がんが急増しトップです。
肺がんが急増したのは、この15年で、チェルノブイリや福島とは関係なさそうです。タバコの販売総数は、15年連続で低下しているので、これも関係なさそうです。
この肺がんと相関を持つのが、何と、空気清浄機の販売台数です。
記事にもある通り、マイナスイオンは空気清浄機で大量生産されます。マイナスイオンは、電子過剰の状態で、電子を供与する性質を持っています。一方、発ガン物質の多くが、電子供与体で、電子を供与する性質を持っています。
小生、製薬会社の創薬研究員で、がんの研究も行っております。
興味深い指摘ですね。