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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

オックスファム報告書を読む④ 格差と分断の広がり

2024-03-04 07:13:10 | 政治・社会問題について
オックスファム報告書を読む④ 格差と分断の広がり
政治経済研究所主任研究員 合田寛さん

オックスファムの報告書は、大企業と富裕者の力の増大が、労働者の低賃金と厳しい労働、不安定な雇用を生み出し、とりわけ女性や移民など弱い立場の人たちにもっとも重い負担を押し付けていると指摘します。
男性と女性の賃金格差は大きく、報告書が引用した研究では、男性が労働で1ドルの所得を得る間に女性はわずか51セントしか得られませんでした(2019年)。女性の所得は全世界の総労働所得の35%(22年)というデータもあります。
1600社の大企業を対象にした調査によると、ジェンダー平等に取り組んでいる企業はわずか24%で、男性と女性の賃金比率に関する情報を公開している企業はたった2・6%でした。

無償のケア労働
大企業の力の増大と高収益の背景には、女性や少女による低賃金または無償のケア労働があります。20年のオックスファムの調査によると、女性・少女は世界の無償のケア労働の4分の3を受け持っています。女性・少女による無償ケア労働の経済価値は少なくとも年間10・8兆ドル(約1620兆円)に上り、世界のハイテク産業の3倍以上の規模です。
とりわけ中東、北アフリカなどの貧困な国では、女性の無償ケア労働の従事時間が週17~34時間に上り、男性の1~5時間と大きなジェンダーギャップが見られます。女性に対する差別は民族、移民など他の差別とも結びついています。



女性の無給ケア労働は少なくとも年間10.8兆ドルの経済効果を有し、世界のテクノロジー産業の3倍の規模に匹敵(オックスファム報告書から)

【グローバルサウス】
南半球に多い新興国・途上国の総称。オックスファム報告書は、国連における途上国の連合体「77カ国グループ」の参加国(現在は134カ国)をグローバルサウス、それ以外の国をグローバルノースと定義しています。

ノースとサウス
世界を見るとグローバルノースとグローバルサウスの間の格差が深刻です。ノースの国々は植民地時代のレガシー(遺産)を受け継いで、富裕国に有利な経済ルールをつくり、サウスの富を移転しています。ノースとサウスの間の格差は、25年ぶりに高まっています。ノースの国々には世界の人口の21%しか住んでいないにもかかわらず、世界の民間の富の69%、世界の億万長者の富の74%が集中しています。
気候変動の悪化、戦争、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)はグローバルな富の不平等を一層強めています。サウスのいくつかの国の政府は、燃料、食糧、薬品の輸入のためのコストが高騰し、巨額の債務を積み重ねています。
累積した債務の元利支払いのために、低・中所得国は29年までに1日5億ドル近くを充当しなければなりません。貧困国の57%以上、約24億人の母国は、今後5年間にわたって2290億ドル(約34兆円)の公共支出の削減を迫られています。その額は22年のODA(政府開発援助)の総額を上回ります。公共支出の大幅削減は、とくに女性、片親、移民など差別された人たちに、もっとも厳しく迫ることになることは確実です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年3月1日付掲載


大企業の力の増大と高収益の背景には、女性や少女による低賃金または無償のケア労働が。20年のオックスファムの調査によると、女性・少女は世界の無償のケア労働の4分の3を受け持つ。女性・少女による無償ケア労働の経済価値は少なくとも年間10・8兆ドル(約1620兆円)に上り、世界のハイテク産業の3倍以上の規模。
世界を見るとグローバルノースとグローバルサウスの間の格差が深刻。ノースの国々は植民地時代のレガシー(遺産)を受け継いで、富裕国に有利な経済ルールをつくり、サウスの富を移転。
貧困国の57%以上、約24億人の母国は、今後5年間にわたって2290億ドル(約34兆円)の公共支出の削減を迫られる。その額は22年のODA(政府開発援助)の総額を上回る。
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