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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

オックスファム報告書を読む② 政府上回った独占の力

2024-03-02 07:20:15 | 政治・社会問題について
オックスファム報告書を読む② 政府上回った独占の力
政治経済研究所主任研究員 合田寛さん

オックスファムの報告書は、世界の超富裕層は巨大企業の利益を手にする単なる受け身の受益者ではないと指摘します。彼らは支配的株式を保有する企業のオーナーとして巨大な力を持っているからです。

価値移転の役割
巨大企業は集中・合併を繰り返し、ますます巨大化し、その力を利用して経済と政治に大きな影響を与えています。そうすることによって国家の保護を受け、市場を独占する力を持つに至っています。
独占大企業は単に大きいだけではありません。彼らは交換条件やルールを設定し、市場を支配する強大な力を振るうに至っています。独占力を行使することで、低賃金と劣悪な労働条件で労働者を酷使し、中小企業を圧迫するとともに、エネルギーや食品、製薬などの価格を高く設定し消費者から搾り取っています。
報告書が引用した134カ国の7万社を対象にした長期の調査によると、コストに対する価格の比率(マークアップ比率)は1980年の7%から2020年には59%に上昇しています。世界中の企業利益に占める多国籍企業の利益の割合は、1975年の4%から2019年の18%へと増加しました。とりわけ21世紀に入って以降その傾向が顕著になっています。
こうして独占大企業は高い利ザヤで価格をつり上げ、競争者を排除することでますます強大な力を持つに至っています。独占力は経済全体を通じて、労働から資本へと価値を移転する役割を果たしています。可処分所得は配当、株などの売買差益によるキャピタルゲイン、重役報酬などの形で逆進的に再分配されています。



進む市場の集中。25年前は世界の種苗市場の4割を10社で占めていたが、現在は2社で占める(オックスファム報告書から)

民主主義脅かす
今や独占の力は政府を上回るまで肥大しています。アップル社の株式の時価総額は一時3兆ドル(約450兆円)を突破しましたが、これはフランスの国内総生産(GDP)よりも大きな数字です。アップルを含む世界の最大企業5社の株式の時価総額は、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ諸国のGDPの合計を上回っています。
経済力を少数者の手に集中させるうえで、巨大投資ファンドの果たす役割が大きくなっています。なかでもブラックロック、ステート・ストリート、バンガードの3社は合わせて20兆が(約3000兆円)以上の資金を管理・運用する巨大ファンドです。近い将来、米国の主要企業は12人の人物によって支配されるという識者もいます。
元米大統領フランクリン・ルーズベルトが警告したように、企業の力が政府の力を上回れば、民主主義と自由は安全ではありません。「独占は力そのものであり、民主主義の領域から政治的決定を奪い取る力だ」と報告書は強調しています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月28日付掲載


報告書が引用した134カ国の7万社を対象にした長期の調査によると、コストに対する価格の比率(マークアップ比率)は1980年の7%から2020年には59%に上昇。世界中の企業利益に占める多国籍企業の利益の割合は、1975年の4%から2019年の18%へと増加しました。とりわけ21世紀に入って以降その傾向が顕著。
アップル社の株式の時価総額は一時3兆ドル(約450兆円)を突破しましたが、これはフランスの国内総生産(GDP)よりも大きな数字。アップルを含む世界の最大企業5社の株式の時価総額は、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ諸国のGDPの合計を上回っています。
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