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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国と新自由主義⑤ 民主的社会主義に共感

2022-06-08 06:21:07 | 経済・産業・中小企業対策など
米国と新自由主義⑤ 民主的社会主義に共感
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さん

―バイデン政権の雇用政策はどうなっていますか。
トランプ前大統領はただの一度も連邦最低賃金の大幅上昇を政策に掲げていません。低賃金でも働きたい人がいるなら結構なことだと主張しています。
それに対してバイデン大統領は、連邦最低賃金時給15ドルを公約に掲げ、2021年3月11日に成立した「アメリカ救済計画法」に含ませることを目指しました。この条項は下院議会を通過したものの、共和党の反対に加えて民主党議員からも反対が出て上院を通りませんでした。
けれどもバイデン大統領は4月27日、連邦政府と契約する業者の従業員に最低賃金時給15ドルを保障する大統領令に署名しました。さらに米国の各州で最低賃金を時給15ドルに引き上げる法案が通過しています。
連邦最低賃金時給15ドルを実現するためには、連邦議会に進歩派議員を増やさなければなりません。ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員、マサチューセッッ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員のような人たちです。

若者が変えた
―バイデン政権が新自由主義からの脱却をめざす背景にどんな運動がありますか。
米国で新自由主義からの転換をめざす政策が始まったのは、世界経済危機のさなかの09年に誕生した民主党オバマ政権のときです。しかし10年11月の中間選挙で大富豪のコーク兄弟に操られたティーパーティー派の運動によって連邦下院の多数を共和党が占め、まともな政策が一向に通らない危機的状況に追い込まれました。
この政治状況を変え始めたのが、若者を中心とする「ウォール街を占拠せよ」の運動でした。1%の富裕層に乗っ取られた政治を99%の普通の国民の政治に変えようと呼びかけたのです。この運動の力でオバマ大統領が12年11月の選挙で再選されました。
オバマ政権の政策実行は共和党に阻まれ、16年11月の大統領選ではトランプ政権が誕生して新自由主義的経済政策が復権しました。しかしその大統領選で「民主的社会主義」を掲げるサンダース候補が旋風を巻き起こしました。サンダース氏の政策は1933年に誕生したローズベルト民主党政権の政策を踏襲したものでした。公的年金や最低賃金、金融規制などのローズベルト政権の政策は当時「社会主義的」だと批判されました。サンダース氏は、それらの「社会主義的」政策こそが米国を形作り、中間層の基盤になったのだと訴え、大きな共感を得たのです。
2018年11月の中間選挙では、サンダース氏の提唱する「メディケア・フォー・オール」(すべての人に健康保険を)というキャッチフレーズで、多くの進歩派民主党議員が誕生しました。この運動が土台となり、20年大統領選でトランプ大統領の再選が阻止され、バイデン民主党大統領が誕生しました。バイデン氏は中道派の政治家ですが、民主党進歩派との連携で大統領になりましたから、新自由主義政策からの転換を進めようとしているのです。米国版「市民と野党の共闘」によってバイデン政権は誕生したといえます。



米国ペンシルベニア州ピッツバーグで開かれた集会で発言するバーニー・サンダース上
院議員=5月12日(ロイター)

99%を主役に
サンダース氏は自伝の中で「ユージン・ヴィクター・デブスは私のヒーローだ」と書いています。デブスはアメリカ社会党を創設したマルクス主義者で、気骨の人でした。
「彼は、大企業ではなく働く人々が国の経済的・政治的生活を支配するような、本当の民主主義社会を実現するために闘った。彼はアメリカ鉄道労働組合を創設し、この国の最も強い権力のいくつかに対する激しいストライキを指導した。彼は労働者階級の国際連帯を信じ、第1次世界大戦に反対したために何年か投獄された」(『バーニー・サンダース自伝』)
米国議会にはサンダース氏を中心として進歩派議員連盟の議員が100人存在し、革新的な政策を掲げて米国の政治変革に立ち向かっています。その底流には、「99%の普通の国民が政治・経済の主役になる」という「民主的社会主義」思想への共感の広がりがあるといえるでしょう。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月4日付掲載


バイデン大統領は4月27日、連邦政府と契約する業者の従業員に最低賃金時給15ドルを保障する大統領令に署名しました。さらに米国の各州で最低賃金を時給15ドルに引き上げる法案が通過。
連邦最低賃金時給15ドルを実現するためには、連邦議会に進歩派議員を増やさなければなりません。
若者を中心とする「ウォール街を占拠せよ」の運動。1%の富裕層に乗っ取られた政治を99%の普通の国民の政治に変えようと呼びかけ。
バイデン氏は中道派の政治家ですが、民主党進歩派との連携で大統領になりましたから、新自由主義政策からの転換を進めようとしている。
「99%の普通の国民が政治・経済の主役になる」というのは、アメリカでも日本でも共通の思いですね。
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