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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国と新自由主義④ 脱却掲げるバイデン

2022-06-07 07:16:42 | 経済・産業・中小企業対策など
米国と新自由主義④ 脱却掲げるバイデン
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さん

―米国のトランプ前政権の経済政策をどうみますか。
トランプ政権は2017年12月に「減税および雇用法」を制定し、法人税率を35%から21%に引き下げ、加速度的減価償却を企業に認めました。最低賃金の上昇などには一切触れず、金融規制の撤廃を進めました。全国民の医療保険加入をめざした「オバマケア」については、加入義務規定を外しました。「規制改革をすれば経済は発展する」ということをいい続けたのです。明確に新自由主義的な経済政策です。
新自由主義的経済政策の特徴は、企業減税や規制改革によって企業コストを削減し、資本蓄積を擁護することです。レーガン政権期の企業減税がたいへん有名です。サプライサイド(供給側)経済学などといわれたものですが、内実は、実体経済よりも株式などの金融資産の蓄積を優遇する政策だといえるでしょう。人件費や法人税負担などの企業コストが削減されて利益が増大し、株主配当が増額されれば、株価が上昇して金融資産は膨張していくのです。
米国では20年初めに新型コロナウイルス感染症が広がり始めました。ところが、トランプ氏は「春の風と共に感染症は消え去る」などという非科学的な独断で対策の遅れを生じさせました。20年11月の大統領選挙に勝つために経済活動を持続させようとして、米国に新型コロナの大流行を招いた責任は免れないでしょう。



米ニューヨーク証券取引所で働くトレーダー=5月12日(ロイター)

約18万円給付
―バイデン現政権の経済政策はどうなっていますか。
バイデン政権は21年3月11日、新型コロナ大流行への対策を目的とした「アメリカ救済計画法」を成立させました。この救済計画法に基づく財政支出は総額1兆9000億ドルであり、主な支出項目は次の通りでした。
▽国民に1人1400ドル(約18万円)を現金給付する。ただし年収7万5000ドル(約975万円)を超す人への給付は段階的に減額し、年収8万ドルを超す人は対象外とする。
▽9月上旬まで継続して失業給付に週300ドルを加算する。
▽そのほか、ワクチンの普及や感染検査などに1090億ドル、学校の対面授業再開支援などに1700億ドル、中小企業の従業員給与・費用肩代わりに480億ドル、州・地方支援に3500億ドルを支出する。
バイデン政権は、教育、医療、環境保護分野に力を入れるもようです。軍拡を進めたトランプ政権と異なり、軍事に関しては前年並みとなるはずでした。
しかし、今年2月24日に勃発したロシアのウクライナ侵略に対して、ウクライナへの軍事支援を継続的に行う予定で、軍事費の増加が見込まれます。一方で、米国内の世論をみると、ウクライナへの軍事支援で米国が中心となることに賛成する人が減少する傾向にあります。バイデン大統領がどのような判断をするのかが注目されます。

法人税を増税
もう一つ重要なのは租税政策です。バイデン政権は、富裕層や大企業が税金を支払っていないことに批判的です。トランプ政権で21%に引き下げられた連邦法人税率を28%に上昇させ、所得40万ドル以上の納税者には「減税および雇用法」による減税などの優遇措置を停止するという税制改革を掲げています。
さらに、イエレン財務長官は、法人税減税の世界的な「底辺への競争」を終わらせると宣言し、巨大多国籍企業に公正に課税する国際的な最低法人税率の導入を訴えてきました。法人税減税の世界一的な竸争が法人税の基盤をむしばみ、「必要不可欠な公共財投資や危機対応への十分な財源を得る安定した税制度」の実現を困難にしてきたと指摘したのです。そのうえで、「多国籍企業への公平な課税を通じて世界経済を強くするために、国際的最低税率導入を活用できる」と強調しました。
国際協調を推し進めながら自国の法人税率を引き上げ、新自由主義的な租税政策からの脱却をめざす考えを表明したものです。トランプ前政権の新自由主義的経済政策を転換する方向性は明確です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月3日付掲載


バイデン政権は、教育、医療、環境保護分野に力を入れるもよう。軍拡を進めたトランプ政権と異なり、軍事に関しては前年並みとなるはずでした。
米国内の世論をみると、ウクライナへの軍事支援で米国が中心となることに賛成する人が減少する傾向。バイデン大統領がどのような判断をするのかが注目。
トランプ政権で21%に引き下げられた連邦法人税率を28%に上昇させ、所得40万ドル以上の納税者には「減税および雇用法」による減税などの優遇措置を停止するという税制改革。
税制は負担能力に応じて。教育・福祉を充実させると、暮らしが良くなる。
コメント
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