コロナ禍と資本主義 見えざる鎖⑥ 需要減少の犠牲は底辺に
新型コロナウイルス感染の世界的拡大は、世界の衣料品サプライチェーン(供給網)における脆弱(ぜいじゃく)性と力の不平等を劇的に示しました。2020年の初め、多くの世界的な衣料品ブランドと大型小売業者は、消費者需要の急激な減少に直面。彼らの対応は、その犠牲をサプライチェーンの底辺に押し付けることでした。大手ブランド・小売業者は、生産を委託している途上国の製造業者への注文を、突然中止したのです。
キャンセル
ペンシルベニア州立大学国際労働者権利センター(CGWR)が発表したバングラデシュの労働者への聞き取り調査(2020年3月21~25日)によると、工場や労働者への「壊滅的な打撃」が明らかになりました。半数以上の工場で仕掛かり品や完成品がキャンセルされました。CGWRは「買い手側は、契約上、これらの発注に対する支払いの義務があるにもかかわらず、違反を正当化するために、(契約違反の責任を負わない)不可抗力条項規定を悪用している」と批判しています。
▽買い手が注文をキャンセルした際、工場側がすでに購入した生地などの原材料の支払いを72・1%拒否。
▽買い手の91・3%が生産コストの支払いを拒否。
▽買い手の97・3%が、バングラデシュの法的権利でもある解雇された労働者の退職金への拠出を拒否。
▽買い手の98・1%が、法律で義務付けられている一時帰休の労働者に部分的な賃金を支払う費用の負担を拒否。
さらに、報告書は、調査対象となった工場の58%が、ほとんど、またはすべての操業を停止した、としました。
その結果、バングラデシュの100万人以上の縫製労働者が解雇、または一時解雇されたといいます。一時帰休となった労働者の72・4%が無給。解雇された労働者の80・4%が、退職金が支払われませんでした。
バングラデシュ衣料品製造・輸出業者協会(BGMEA)のルバナ・バク会長は、20年3月23日、ビデオメッセージを公表し、ブランド企業に対し、生産中あるいはすでに完成している衣服の注文をキャンセルしないように求めました。
「支援がなければ、労働者が路頭に迷ってしまう。私たちには耐えることのできない社会的混乱だ」と訴えました。
BGMEAの報告書「アパレルストーリー」(21年1月~2月号)によると、20年3月、1150の工場で国際的な買い手と小売業者から輸入の取り消しや中止があり、金額にして31億8000万ドル(約3500億円)に上るといいます。
工場は資金難となり、その結果、賃金の支払いが困難となりました。最悪の場合は、倒産や永久閉鎖に追い込まれました。その後、受注が85~90%まで回復しました。ところが、その多くが2割から3割の値引きを押し付けられています。

コロナ禍で困窮する縫製労働者へ緊急食料支援をするバングラデシュ衣料品産業労働者組合連合〈NGWF〉のスタッフ=2020年6月26日、ダッカ(NGWF提供)
街頭で抗議
街頭では抗議行動が発生。サウジアラビアの英字紙アラブ・ニュースは、賃金の支払いを求めた労働者たちが、口々に「脅威はコロナより、飢餓だ」(20年4月13日付)と叫んだと報道しました。
「私たちに、選択肢はない。私たちは飢えている。もし、家にとどまれば、ウイルスから身を守れるかもしれない。でも、だれが、私たちを飢えから救うのか」「2カ月間も賃金を受け取っていない。私たちは飢えている」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月21日付掲載
世界の衣料品サプライチェーン(供給網)における脆弱(ぜいじゃく)性と力の不平等を劇的に。
買い手側が一方的に契約をキャンセル。発展途上国側の工場は、資金力がなく労働者を解雇せざるをえない。倒産する企業も。
街頭では抗議行動が発生。賃金の支払いを求めた労働者たちが、口々に「脅威はコロナより、飢餓だ」
新型コロナウイルス感染の世界的拡大は、世界の衣料品サプライチェーン(供給網)における脆弱(ぜいじゃく)性と力の不平等を劇的に示しました。2020年の初め、多くの世界的な衣料品ブランドと大型小売業者は、消費者需要の急激な減少に直面。彼らの対応は、その犠牲をサプライチェーンの底辺に押し付けることでした。大手ブランド・小売業者は、生産を委託している途上国の製造業者への注文を、突然中止したのです。
キャンセル
ペンシルベニア州立大学国際労働者権利センター(CGWR)が発表したバングラデシュの労働者への聞き取り調査(2020年3月21~25日)によると、工場や労働者への「壊滅的な打撃」が明らかになりました。半数以上の工場で仕掛かり品や完成品がキャンセルされました。CGWRは「買い手側は、契約上、これらの発注に対する支払いの義務があるにもかかわらず、違反を正当化するために、(契約違反の責任を負わない)不可抗力条項規定を悪用している」と批判しています。
▽買い手が注文をキャンセルした際、工場側がすでに購入した生地などの原材料の支払いを72・1%拒否。
▽買い手の91・3%が生産コストの支払いを拒否。
▽買い手の97・3%が、バングラデシュの法的権利でもある解雇された労働者の退職金への拠出を拒否。
▽買い手の98・1%が、法律で義務付けられている一時帰休の労働者に部分的な賃金を支払う費用の負担を拒否。
さらに、報告書は、調査対象となった工場の58%が、ほとんど、またはすべての操業を停止した、としました。
その結果、バングラデシュの100万人以上の縫製労働者が解雇、または一時解雇されたといいます。一時帰休となった労働者の72・4%が無給。解雇された労働者の80・4%が、退職金が支払われませんでした。
バングラデシュ衣料品製造・輸出業者協会(BGMEA)のルバナ・バク会長は、20年3月23日、ビデオメッセージを公表し、ブランド企業に対し、生産中あるいはすでに完成している衣服の注文をキャンセルしないように求めました。
「支援がなければ、労働者が路頭に迷ってしまう。私たちには耐えることのできない社会的混乱だ」と訴えました。
BGMEAの報告書「アパレルストーリー」(21年1月~2月号)によると、20年3月、1150の工場で国際的な買い手と小売業者から輸入の取り消しや中止があり、金額にして31億8000万ドル(約3500億円)に上るといいます。
工場は資金難となり、その結果、賃金の支払いが困難となりました。最悪の場合は、倒産や永久閉鎖に追い込まれました。その後、受注が85~90%まで回復しました。ところが、その多くが2割から3割の値引きを押し付けられています。

コロナ禍で困窮する縫製労働者へ緊急食料支援をするバングラデシュ衣料品産業労働者組合連合〈NGWF〉のスタッフ=2020年6月26日、ダッカ(NGWF提供)
街頭で抗議
街頭では抗議行動が発生。サウジアラビアの英字紙アラブ・ニュースは、賃金の支払いを求めた労働者たちが、口々に「脅威はコロナより、飢餓だ」(20年4月13日付)と叫んだと報道しました。
「私たちに、選択肢はない。私たちは飢えている。もし、家にとどまれば、ウイルスから身を守れるかもしれない。でも、だれが、私たちを飢えから救うのか」「2カ月間も賃金を受け取っていない。私たちは飢えている」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月21日付掲載
世界の衣料品サプライチェーン(供給網)における脆弱(ぜいじゃく)性と力の不平等を劇的に。
買い手側が一方的に契約をキャンセル。発展途上国側の工場は、資金力がなく労働者を解雇せざるをえない。倒産する企業も。
街頭では抗議行動が発生。賃金の支払いを求めた労働者たちが、口々に「脅威はコロナより、飢餓だ」