パイプオルガン 命満ちる音色めざし
中世以来の伝統的な製法よみがえらせた職人 パイプオルガン建造家・横田宗隆さん
壮厳で時に力強く、時に優しい音色を奏でるパイプオルガン。その音色に魅せられた横田宗隆さん(67)は、中世以来の伝統的な製法をよみがえらせました。“パイプオルガン建造家”として45年にわたり、世界各地で古い様式のパイプオルガンを製作し、5年前に日本に拠点を移しました。横田さんを神奈川県相模原市の工房に訪ねました。
加來恵子記者

パイプオルガンの音を確認する横田さん 撮影・野間あきら記者
役者そろえるように一つ一つパイプ仕上げる
オーケストラのような無数の音が飛び出してくるパイプオルガン。パイプに鞴(ふいご)で風をおくり、空気を振動させることで音が鳴ります。パイプ一本で一つの音色しか出せません。そのため大きなものは、一台に数千本ものパイプが使用されています。
パイプの長さは爪ようじ大から5メートルを超えるものまであります。
長さの違いで音階をつくり、形、太さ、素材によって音色の違いを生み出します。
横田さんはパイプオルガンづくりの魅力を語ります。「パイプオルガンの職人は一つのドラマをつくるために、役者をそろえるディレクターのような役目です。どんなドラマに仕上げるかは、監督である演奏者次第です。パイプオルガンは癖のある楽器です。演奏者との相性もあり、無理やり弾こうとしても、うまくいきません。すべてが一体となった時、素晴らしい音を奏でてくれます」
目指す音色は、温かくて奥深い、太陽や生命のように力強い、宇宙を感じられるようなものです。
天然素材使用
横田さんは、この巨大な楽器を一から作り上げます。一台の製作に6年かかることもあります。
パイプは、鉛と錫(すず)を溶かすとこうから始めます。
パイプに風を送る「ふいご」。革と木でできています。その革を張り付ける時に使うのは、伝統的な接着剤の膠(にかわ)。膠は、温度管理や扱いが難しい天然素材です。なぜ膠を使うのか―。
「化学接着剤は接着力が強すぎます。そのため、年月がたち、傷んだ革をはがす時に、木部を傷めてしまいます。木よりも早く消耗する革を張り替えることを前提に、膠を使っています」
パイプオルガンは100年、200年後まで音を奏でることができます。「効率のよさばかりが追求されるなか、パイプオルガンは国連のSDGS(持続可能な開発目標)そのものです」

ニューヨーク州のコーネル大学のアナベル・テイラーチャペルに作ったパイプオルガン(製作2011年)=横田氏提供
出会いは10代
クラシック音楽が好きな両親に育てられた横田さん。子どものころから、時計やトースターなど機械の仕組みを知りたくて、分解しては組み立てていました。
パイプオルガンの音色に魅了されたのは、中学生のころ。手にしたバッハのレコードに、優れたパイプオルガンがあったからこそバッハはいい曲がつくれた、と解説していました。
学生運動が大きく盛り上がっている時期に大学に入学し、経済学を専攻。「社会に役立つことをしたい」と悩んでいた時に再びパイプオルガンの音色に救われました。秘めていた思いに火がつきました。
大学卒業後、著名なパイプオルガン建造家辻宏氏に弟子入りしました。3年学んだあと、ヨーロッパを巡り、アメリカに渡りました。さらに5年間、古い様式のオルガン製作を勉強した後、独立しました。
1983年。米カリフォルニア州立大学の依頼で、バッハが奏でたバロック時代の伝統的なオルガン製作過程をよみがえらせることに世界で初めて成功しました。
伝統的な製作過程とは、注文を受けた土地で生活をしながら、その土地の職人とともに、地元の材料を使ってつくるというもの。6年の歳月がかかりました。
1994年、スウェーデンの国立イエーテボリ大学の客員教授に招かれ、ヨーロッパの古いオルガンの製作技術を調査研究し、それを基に修復をアドバイス。また世界各地に新しいオルガンを作りました。
日本では、宮崎市の福音ルーテル教会のパイプオルガンを手がけました。
後継者育てる
現在は東京芸術大学でオルガン製作の理論や歴史について講義しています。
「自分が死んだ後も、長く奏で続けられるパイプオルガンの製作には誇りを感じます。同時にプレッシャーもあります。優秀な弟子たちと日本でオルガンをつくり、文化の普及や後継者育成をしていきたい」
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年3月8日付掲載
パイプオルガンのパイプって、長さが爪楊枝の様なものから5メートルを超えるものもあるのですね。
太さも長さも色々組み合わせて、音の高さだけでなく、音色も変わる。
部屋に合わせて、一台一台オリジナルに造りこむパイプオルガン。まさに職人技ですね。
中世以来の伝統的な製法よみがえらせた職人 パイプオルガン建造家・横田宗隆さん
壮厳で時に力強く、時に優しい音色を奏でるパイプオルガン。その音色に魅せられた横田宗隆さん(67)は、中世以来の伝統的な製法をよみがえらせました。“パイプオルガン建造家”として45年にわたり、世界各地で古い様式のパイプオルガンを製作し、5年前に日本に拠点を移しました。横田さんを神奈川県相模原市の工房に訪ねました。
加來恵子記者

パイプオルガンの音を確認する横田さん 撮影・野間あきら記者
役者そろえるように一つ一つパイプ仕上げる
オーケストラのような無数の音が飛び出してくるパイプオルガン。パイプに鞴(ふいご)で風をおくり、空気を振動させることで音が鳴ります。パイプ一本で一つの音色しか出せません。そのため大きなものは、一台に数千本ものパイプが使用されています。
パイプの長さは爪ようじ大から5メートルを超えるものまであります。
長さの違いで音階をつくり、形、太さ、素材によって音色の違いを生み出します。
横田さんはパイプオルガンづくりの魅力を語ります。「パイプオルガンの職人は一つのドラマをつくるために、役者をそろえるディレクターのような役目です。どんなドラマに仕上げるかは、監督である演奏者次第です。パイプオルガンは癖のある楽器です。演奏者との相性もあり、無理やり弾こうとしても、うまくいきません。すべてが一体となった時、素晴らしい音を奏でてくれます」
目指す音色は、温かくて奥深い、太陽や生命のように力強い、宇宙を感じられるようなものです。
天然素材使用
横田さんは、この巨大な楽器を一から作り上げます。一台の製作に6年かかることもあります。
パイプは、鉛と錫(すず)を溶かすとこうから始めます。
パイプに風を送る「ふいご」。革と木でできています。その革を張り付ける時に使うのは、伝統的な接着剤の膠(にかわ)。膠は、温度管理や扱いが難しい天然素材です。なぜ膠を使うのか―。
「化学接着剤は接着力が強すぎます。そのため、年月がたち、傷んだ革をはがす時に、木部を傷めてしまいます。木よりも早く消耗する革を張り替えることを前提に、膠を使っています」
パイプオルガンは100年、200年後まで音を奏でることができます。「効率のよさばかりが追求されるなか、パイプオルガンは国連のSDGS(持続可能な開発目標)そのものです」

ニューヨーク州のコーネル大学のアナベル・テイラーチャペルに作ったパイプオルガン(製作2011年)=横田氏提供
出会いは10代
クラシック音楽が好きな両親に育てられた横田さん。子どものころから、時計やトースターなど機械の仕組みを知りたくて、分解しては組み立てていました。
パイプオルガンの音色に魅了されたのは、中学生のころ。手にしたバッハのレコードに、優れたパイプオルガンがあったからこそバッハはいい曲がつくれた、と解説していました。
学生運動が大きく盛り上がっている時期に大学に入学し、経済学を専攻。「社会に役立つことをしたい」と悩んでいた時に再びパイプオルガンの音色に救われました。秘めていた思いに火がつきました。
大学卒業後、著名なパイプオルガン建造家辻宏氏に弟子入りしました。3年学んだあと、ヨーロッパを巡り、アメリカに渡りました。さらに5年間、古い様式のオルガン製作を勉強した後、独立しました。
1983年。米カリフォルニア州立大学の依頼で、バッハが奏でたバロック時代の伝統的なオルガン製作過程をよみがえらせることに世界で初めて成功しました。
伝統的な製作過程とは、注文を受けた土地で生活をしながら、その土地の職人とともに、地元の材料を使ってつくるというもの。6年の歳月がかかりました。
1994年、スウェーデンの国立イエーテボリ大学の客員教授に招かれ、ヨーロッパの古いオルガンの製作技術を調査研究し、それを基に修復をアドバイス。また世界各地に新しいオルガンを作りました。
日本では、宮崎市の福音ルーテル教会のパイプオルガンを手がけました。
後継者育てる
現在は東京芸術大学でオルガン製作の理論や歴史について講義しています。
「自分が死んだ後も、長く奏で続けられるパイプオルガンの製作には誇りを感じます。同時にプレッシャーもあります。優秀な弟子たちと日本でオルガンをつくり、文化の普及や後継者育成をしていきたい」
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年3月8日付掲載
パイプオルガンのパイプって、長さが爪楊枝の様なものから5メートルを超えるものもあるのですね。
太さも長さも色々組み合わせて、音の高さだけでなく、音色も変わる。
部屋に合わせて、一台一台オリジナルに造りこむパイプオルガン。まさに職人技ですね。