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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

近づくG20サミット 断層④ 税逃れの対策にも暗雲

2017-07-10 12:26:44 | 国際政治
近づくG20サミット 断層④ 税逃れの対策にも暗雲

経済協力開発機構(OECD)がとりまとめる多国籍企業の税逃れ(BEPS)対策は、20力国・地域(G20)の後押しで進んできました。税逃れの被害を最も深刻に受ける途上国が参加し、世界規模で対策を実施する画期的な枠組みがつくられてきました。
しかしトランプ米政権の登場で暗雲が垂れこめています。米国が世界最大・最悪のタックスヘイブン(租税回避地)になる危険が生じています。

多国間条約に米国署名せず
6月7日、BEPS対策の一環である多国間条約の署名式がパリで行われました。多国籍企業が税逃れに悪用する租税条約の抜け穴を、多国間の条約で一挙にふさぐ目的です。
署名したのは日本を含む67力国・地域です。ところが米国は署名を見送りました。
パリでの署名式は、主要7力国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(5月)が「期待する」と表明していたものです。そのG7の中で、米国だけが署名を見送る異常事態です。米国との間で各国が結んでいる租税条約の抜け穴をふさがなければ、アマゾンなど米国企業の大規模な税逃れが放置されます。
今回のG20の目玉の一つに、税逃れ対策の「ブラックリスト」(要注意対象の一覧)があります。税情報の交換に非協力的な国・地域のリストを承認し、対策を検討するのです。しかしこれにも疑問符が付いています。
すでにリストは公表されています(6月28日)。基準を満たさず「ブラックリスト」に載るのは中米の小国トリニダード・トバコだけ、という内容です。
「基準が甘すぎる」
そう指摘するのは、国際民間団体タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)です。特に問題視するのが米国です。
G20は、非居住者の金融口座情報を各国の税務当局が自動的に交換する制度を推進してきました。外国口座を使った脱税を防ぐためです。米国はこの制度に参加しようとしません。自国の法律(外国口座税務コンプライアンス法=FATCA)で対応する姿勢です。
FATCAは一方的な制度です。他国の金融機関に米国への情報提供を義務付けながら、米国の金融機関には他国への情報提供を義務付けないのです。
TJNは痛烈に批判しています。
「もし一つの国だけをブラックリストに載せるとすれば、それはカリブ海の小さな島ではない。タックスヘイブンの米国になるであろう」

資金流入狙うトランプ政権
トランプ政権は法人税率を「世界最低水準に引き下げる」といいます。海外子会社から米国の親会社への配当を無税にし、米国企業が過去に海外で蓄えた資金を自国に還流させる際の税率を下げるとも表明しています。
例えば米国企業アップルは20兆円を超す利益を海外に蓄えているといわれます。外国での販売利益をタックスヘイブンのアイルランドに移し、課税を逃れた結果です。そうした膨大な資金を丸ごと米国内に取り込むのがトランプ政権の狙いです。
米国企業の他国での税逃れは放任され、資金はもっぱら世界最大のタックスヘイブン米国に流入する―。
「米国第一を掲げるトランプ政権の一連の動きの先に、不穏な末路が見え始めています。米国に本拠を置く多国籍企業と米国自身の利益だけを追求する利己的な戦略を黙って見過ごすなら、世界各国の税収入はますます空洞化し、格差が拡大します。
税逃れ対策のためには米国の身勝手を許さない取り組みが不可欠です。G20で実質的な議論が行われるかどうか。注目されます。
(おわり)(金子豊弘、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月7日付掲載


タックスヘイブン対策とかいってみても、結局は一番のタックスヘイブンはアメリカだったりして…
アメリカひとり駄々をこねても、それが許されない世界になってきています。
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