「人口減少社会」を考える② 将来推計人口 50年後8808万人に縮小
経済研究者 友寄英隆さんに聞く
―日本の人口は大幅に減少すると言われています。誰が推計しているのですか?
人口の将来推計は、厚生労働省に所属する国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研と略す)が5年おきにおこなっています。新しい将来人口推計は、今年4月に発表されました。
それによると、2015年の国勢調査の総人ロ=1億2709万人にたいし、50年後の65年には8808万人に、現在の3分の2近くにまで縮小するとなっています。さらに、100年後の2115年には、最も厳しい仮定の場合には3787万人にまで減少すると推計されています。
母親と遊ぶ子
拡大投影の帰結
―日本の人口が大幅に減少するという推計には、どれだけ科学的な根拠があるのでしょうか?人口の将来推計は、天気予報のような自然現象の予測とは根本的に意味が違います。社人研は、次のように解説しています。
「将来人口推計は、少子化等の人口動向について、観測された人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢(すうせい)を将来に投影し、その帰結としての人口がどのようになるかを科学的に推計するものである」(ホームページから)「人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢を将来に投影」すると説明されていますが、このことを国連などでは「人口投影」と呼んでいます。
―「人口投影」とはどういうことですか?
子どものころに、小指と人差し指を立ててキツネの形をつくって障子や白壁に影絵を大きく映して遊んだ経験をお持ちでしょう。「人口投影」とは、こうした影絵と同じ原理です。別図のように、手元の小さな物体に光を当て、スクリーンに拡大投影することです。
つまり、「人口投影」の意味は、「直近の人口動態に隠された兆候を、将来というスクリーンに拡大投影して詳細に観察するための作業」なのです。「将来推計人口は、現在わが国が向かっている方向にそのまま進行した場合に実現するであろう人口の姿」をそのまま表わしているのです。
長期に減少続く
社人研の推計人口では、日本の過去から現在に至る人口学的データを将来に「投影」すると、日本はこれからしばらくの間、厳しい「人口減少モメンタム」の時代が続くと予測しています。
―「人口減少モメンタム」とはどういうことですか?
モメンタムとは、「勢い」とか「慣性」という意味です。「人ロモメンタム」とは、人口変動のタイムラグ(時間的ずれ)による独特の人口現象のことです。
「人口減少モメンタム」とは、長期にわたって低い出生率が続くと、若い世代ほど人口が少なくなり、しばらくの間は、親となって子どもを産む人口(再生産年齢人口)が減り続けます。そのために、仮にある時点から出生率が上昇して人口置換水準(人口が増えも減りもしない出生率の水準)になったとしても、その時点以後も子どもを産む女性の総数はまだ減り続けているので、社会全体として生まれてくる子どもの総数は減り続けることになります。
つまり、65年(50年後)に日本人口が8808万人に減少するという推計は、過去・現在の日本社会の人口学的な指標―それ自体は、現代日本の経済、社会、政治のゆがみを客観的に反映した指標―を、忠実に将来に拡大して「投影」した姿だということです。とりわけ1970年代以降の出生率の低下―人口置換水準を下回る「少子化」状態が長年にわたって継続してきた結果を表しているわけです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月26日付掲載
将来推計人口は、現在の出生率がすぐに反映するのでなく、数十年のタイムラグがある。出生率が減って久しいのに、日本の人口は増え続けてる。
経済研究者 友寄英隆さんに聞く
―日本の人口は大幅に減少すると言われています。誰が推計しているのですか?
人口の将来推計は、厚生労働省に所属する国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研と略す)が5年おきにおこなっています。新しい将来人口推計は、今年4月に発表されました。
それによると、2015年の国勢調査の総人ロ=1億2709万人にたいし、50年後の65年には8808万人に、現在の3分の2近くにまで縮小するとなっています。さらに、100年後の2115年には、最も厳しい仮定の場合には3787万人にまで減少すると推計されています。
母親と遊ぶ子
拡大投影の帰結
―日本の人口が大幅に減少するという推計には、どれだけ科学的な根拠があるのでしょうか?人口の将来推計は、天気予報のような自然現象の予測とは根本的に意味が違います。社人研は、次のように解説しています。
「将来人口推計は、少子化等の人口動向について、観測された人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢(すうせい)を将来に投影し、その帰結としての人口がどのようになるかを科学的に推計するものである」(ホームページから)「人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢を将来に投影」すると説明されていますが、このことを国連などでは「人口投影」と呼んでいます。
―「人口投影」とはどういうことですか?
子どものころに、小指と人差し指を立ててキツネの形をつくって障子や白壁に影絵を大きく映して遊んだ経験をお持ちでしょう。「人口投影」とは、こうした影絵と同じ原理です。別図のように、手元の小さな物体に光を当て、スクリーンに拡大投影することです。
つまり、「人口投影」の意味は、「直近の人口動態に隠された兆候を、将来というスクリーンに拡大投影して詳細に観察するための作業」なのです。「将来推計人口は、現在わが国が向かっている方向にそのまま進行した場合に実現するであろう人口の姿」をそのまま表わしているのです。
長期に減少続く
社人研の推計人口では、日本の過去から現在に至る人口学的データを将来に「投影」すると、日本はこれからしばらくの間、厳しい「人口減少モメンタム」の時代が続くと予測しています。
―「人口減少モメンタム」とはどういうことですか?
モメンタムとは、「勢い」とか「慣性」という意味です。「人ロモメンタム」とは、人口変動のタイムラグ(時間的ずれ)による独特の人口現象のことです。
「人口減少モメンタム」とは、長期にわたって低い出生率が続くと、若い世代ほど人口が少なくなり、しばらくの間は、親となって子どもを産む人口(再生産年齢人口)が減り続けます。そのために、仮にある時点から出生率が上昇して人口置換水準(人口が増えも減りもしない出生率の水準)になったとしても、その時点以後も子どもを産む女性の総数はまだ減り続けているので、社会全体として生まれてくる子どもの総数は減り続けることになります。
つまり、65年(50年後)に日本人口が8808万人に減少するという推計は、過去・現在の日本社会の人口学的な指標―それ自体は、現代日本の経済、社会、政治のゆがみを客観的に反映した指標―を、忠実に将来に拡大して「投影」した姿だということです。とりわけ1970年代以降の出生率の低下―人口置換水準を下回る「少子化」状態が長年にわたって継続してきた結果を表しているわけです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月26日付掲載
将来推計人口は、現在の出生率がすぐに反映するのでなく、数十年のタイムラグがある。出生率が減って久しいのに、日本の人口は増え続けてる。