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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

長時間労働 電通過労死で問われるのも② 命奪い続ける「自己申告制」 労働時間管理は会社責任

2017-01-16 08:53:01 | 働く権利・賃金・雇用問題について
長時間労働 電通過労死で問われるのも② 命奪い続ける「自己申告制」 労働時間管理は会社責任

電通が労働基準法違反で書類送検された昨年12月28日、石井直社長が記者会見で辞任表明しました。このときの発言が驚きです。
「過去に受けた労働基準法違反等の是正勧告を踏まえ、さまざまな対策を講じてきたが、その取り組みの途上で、前途ある社員が亡くなるという悲しい事態が発生した」



新入社員の過労自殺をめぐり、記者会見で謝罪する電通の石井直社長=昨年12月28日、東京都中央区(共同通信)

25年もかけてなお「途上」と
過去の違反を改める対策を講じてきた「途上」というのは本当でしょうか。強い疑問を覚えます。
電通の過去の事例といえば、1991年8月、入社2年目の男性社員が過労自殺した事件です。会社側が業務との関係を認めなかったため、両親が訴訟を起こしました。2000年3月、最高裁が会社の安全配慮義務違反を認定し、損害賠償支払いを命じました。
この違反対策が25年たってなお「途上」だという主張を誰が信じるでしょうか。
何が違反だったのかをみてみます。男性社員は、91年1月から自殺する8月までの残業時間が1カ月平均147時間というすさまじい長さでした。
厚生労働省がその後につくった「過労死認定基準」は医学的な研究をふまえて「月80時間」。男性社員の残業がいかに異常だったかがわかります。
ところが、男性社員が自己申告していた残業時間は実態とは大違い。少ない月が48時間、多い月が85時間で大半が50時間、60時間台です。
社員の申告が実情より椙当に少なく、徹夜することもあり、健康状態が悪化していることに上司らは気づいていました。最高裁は「それにもかかわらず、上司らは業務を所定の期限までに行うことを前提として指導しただけで、業務量を適切に調整する措置を取らなかった」と認定しています。これが安全配慮義務違反です。
この事件と今回の女性社員のケースはほとんど同じです。実際の残業時間は130時間超なのに、申告されていたのは労使協定(三六協定)70時間ギリギリの69時間台。これを上司らは知っていたのに、期限を守らせる指導をしただけで、業務量の調整措置をとらず、パワハラをしていました。
過去の事件の最大の問題点だった自己申告制をそのままにしていた電通の経営姿勢にあ然とさせられます。

「4・6通達」守っていれば
この間、日本共産党は、自己申告が過労死にいたる長時間労働の原因だとして、是正を求める論戦を展開しました。それが実り、厚生労働省が2001年4月6日に使用者に労働時間の把握を義務付けた「サービス残業根絶通達(4・6通達)」を出しました。
自己申告制について、次の3点を定めています。
①労働者に対して労働時間を正しく申告するよう十分な説明をする
②自己申告された時間が実際と合致しているかどうか、実態を調査する
③労働者の適正な申告を阻害する目的で残業時間数の上限を設定するなどの措置を講じない
電通がこの通達を守っていれば、女性社員の不幸は起こっていなかったといえます。
しかも三菱電機でも「三六協定」を超える月100時間以上の残業をさせ、過少に自己申告させていたことが発覚し、労働基準監督署が今月11日に会社と上司を書類送検しました。労働者はうつ病になって回復せず解雇されていました。
自己申告で使用者の労働時間管理責任をあいまいにするやり方を抜本的に規制しない限り、労働者が病み命を落とす異常な働き方は後を絶ちません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年1月13日付掲載


労働時間をタイムカードなどで管理しないで、労働者からの自己申告制にしている。それも、残業時間の「枠」をあらかじめ決めておいて、その「枠」内で申告させる。
「枠」を決めるなら、業務の量を「枠」の時間内に収まるように調整するのが会社の責任なのだが、それは「自己責任」だとする。

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