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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

2025年度予算 概算要求の焦点② 軍事 ミサイル・無人機などに巨費

2024-09-28 07:14:50 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2025年度予算 概算要求の焦点② 軍事 ミサイル・無人機などに巨費

2025年度の防衛省の概算要求は8兆5389億円です。24年度当初予算より5893億円増え、11年連続で過去最大を更新しました。米軍再編経費など金額が確定していない「事項要求」があり、さらに膨れ上がる可能性があります。



3年で約3・2兆増
安保3文書が閣議決定された22年度以降の3年間で約3・2兆円増と異常に膨張しています。ミサイルなどの兵器をはじめ小型無人機(ドローン)、宇宙、軍事研究など幅広い分野で巨額の予算を充てました。
敵基地攻撃に使える長射程ミサイルの関連経費が並びます。射程を1000キロメートル程度に延ばす「12式地対艦誘導弾能力向上型」の艦艇発射型や、潜水艦から発射する誘導弾の取得費を初めて計上。音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の生産・量産体制の準備に2569億円充て、24年度比で約30倍に急増させました。小笠原諸島の南鳥島(東京都)に地対艦ミサイルの射撃場を整備する費用として48億円を初めて計上しました。
敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させる「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」も強化します。各部隊を一元的に指揮する、次世代「自動警戒管制システム(JADGE)」の整備に126億円を計上。米軍システムと連携するため、米軍のIAMDに組み込まれる危険があります。「イージス・システム搭載艦」の試験費用で808億円を要求しました。
英国とイタリアで共同開発する次期戦闘機の開発に1127億円を計上。同機は、無人機との連携が想定されており、無人機用のネットワーク戦闘システムの研究に38億円を盛り込みました。
攻撃型用ドローン310機の取得費に30億円を初計上。同省は一般競争入札で取得するとしていますが、イスラエル製を有力な選択肢にあげています。同国製ドローンは、パレスチナ・ガザ地区での虐殺に使われており、購入は事実上虐殺の加担につながります。ほかに情報収集用のドローンの取得などを初めて盛り込みました。
宇宙での能力強化に全体で約5974億円(24年度比約4・2倍)を計上。小型の人工衛星を多数展開し、ミサイルの攻撃目標を補足する「衛星コンステレーション」の整備に3232億円を要求しました。

新たなツケ6・9兆
先端軍事技術を開発する「ブレークスルー研究」に252億円を計上。同研究は10月に新設する「防衛イノベーション技術研究所」(仮称)で行うもので、民間の研究者や企業を軍事研究に動員することが狙いです。武器・装備開発に役立つ研究に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」に143億円を盛り込みました。
新たなツケ払いとなる「新規後年度負担」は6兆9192億円でした。軍事ローンの総額は15兆7489億円に上り、過去最大を更新しました。膨張する軍事ローンが財政を圧迫しており、過去の契約のローン返済に充てる「歳出化経費」が約4・5兆円に上り、初めて軍事費の半分を超えました。
新たな2施設を含む13施設の司令部の地下化などに932億円、弾薬庫の新設に358億円を盛り込みました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月26日付掲載


敵基地攻撃に使える長射程ミサイルの関連経費が並びます。射程を1000キロメートル程度に延ばす「12式地対艦誘導弾能力向上型」の艦艇発射型や、潜水艦から発射する誘導弾の取得費を初めて計上。音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の生産・量産体制の準備に2569億円充て、24年度比で約30倍に急増。
新たなツケ払いとなる「新規後年度負担」は6兆9192億円でした。軍事ローンの総額は15兆7489億円に上り、過去最大を更新。膨張する軍事ローンが財政を圧迫しており、過去の契約のローン返済に充てる「歳出化経費」が約4・5兆円に上り、初めて軍事費の半分を超え。
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2025年予算 概算要求の焦点① 税財政 過去最大 軍拡が押し上げ

2024-09-27 07:11:38 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2025年予算 概算要求の焦点① 税財政 過去最大 軍拡が押し上げ

2025年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求と「税制改正」要望が8月末に出そろいました。特徴をみます。

25年度の概算要求の一般会計総額は117兆6059億円で過去最大となりました。デフレ完全脱却と成長型経済を実現するとの触れ込みで「重要政策推進枠」(特別枠)を設けたほか、要求段階で金額を示さない「事項要求」も認めました。物価高対策や「賃上げ促進」など岸田文雄政権が目玉とする分野で要求が相次ぎぎました。年末に閣議決定する当初予算案も過去最大となる可能性があります。
物価高騰などで家計が疲弊しているもとでの予算編成です。しかし、社会保障など国民生活を支える予算が抑制される一方、軍事費は昨年に続き大幅増額です。岸田政権が7月29日に閣議了解した概算要求基準の段階から特別の仕組みが持ち込まれているからです。




例外扱いを明記
概算要求基準は次年度予算編成に向けて各省庁が財務省に予算要求する際のルールです。予算を①地方交付税交付金②年金・医療など社会保障③裁量的経費④軍事費(防衛力整備計画対象経費)⑤人件費など義務的経費―に分類。24年度予算に対して25年度予算で要求できる額は、地方交付税交付金(①)と義務的経費(⑤)は同水準、社会保障(②)は自然増分を加算、裁量的経費(③)は1割削減、軍事費(④)は防衛力整備計画を踏まえた「所要の額」―と定めました。その上で各省庁は削減した裁量的経費の3倍の額を「特別枠」で要求できる仕組みです。
その結果、軍事費は突出して増加。6月に閣議決定した「骨太の方針」で「防衛力強化」のための歳出については「多年度にわたり計画的に拡充する」と例外扱いする方針を明記し、5年間で43兆円の軍拡に固執する姿勢を示したことを受け、8兆5389億円を要求しました。米軍再編関連経費は事項要求とされ、総額はさらに膨らみます。
厚生労働省は過去最大の34兆2763億円を要求。年金・医療など高齢化に伴う自然増は4100億円を見込みます。例年、予算編成過程で自然増分は圧縮されており、25年度も同様のおそれがあります。また、「三位一体の労働市場改革」と銘打ち、▽リスキリング(学び直し)の推進▽ジョブ型人事(職務給)の導入▽労働移動の円滑化―のために1695億円を盛り込みました。

国債費1・9兆円増
財務省は国債の利払いや償還に充てる国債費として1兆9026億円増の28兆9116億円を要求。日銀の追加利上げを受けて利払い費の積算に使う想定金利を24年度概算要求時の1・5%から2・1%に引き上げたためです。デジタル庁はマイナンバー制度の推進等に4億円を盛り込むなど総額5960億4300万円を要求しました。
法務省はサイバー攻撃や経済安保の脅威に対応することを名目に公安調査庁の情報収集・分析能力の強化として、24年度比7億8300万円増の39億1900万円を要求。同時に、128人の公安調査官の増員を求めました。
各省庁から「税制改正要望」も提出され、内閣府は、「企業版ふるさと納税制度」について、今年度までとしていた企業の法人税を大幅に軽減する特例措置を、29年度まで延長するよう求めました。また、国民の批判を恐れ先送りされて きた軍拡増税の開始年度を明記するかも焦点です。
(つづく)(9回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月25日付掲載


軍事費は突出して増加。6月に閣議決定した「骨太の方針」で「防衛力強化」のための歳出については「多年度にわたり計画的に拡充する」と例外扱いする方針を明記し、5年間で43兆円の軍拡に固執する姿勢を示したことを受け、8兆5389億円を要求。
厚生労働省は過去最大の34兆2763億円を要求。年金・医療など高齢化に伴う自然増は4100億円を見込みます。例年、予算編成過程で自然増分は圧縮されており、25年度も同様のおそれが。
財務省は国債の利払いや償還に充てる国債費として1兆9026億円増の28兆9116億円を要求。日銀の追加利上げを受けて利払い費の積算に使う想定金利を24年度概算要求時の1・5%から2・1%に引き上げたため。
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法人税減税の実態⑤ 献金の見返りに優遇

2024-08-16 06:49:32 | 予算・税金・消費税・社会保障など
法人税減税の実態⑤ 献金の見返りに優遇

不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん

さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。

大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)

租税特別措置法に規定された政策減税です。企業が研究開発を行う場合に、試験研究費の2%から14%を法人税額から控除(控除上限は法人税の25%)できる制度です。
租税特別措置法の減税額では最多の項目となっています。2022年度は全体で7636億円となっており、そのほとんどが大企業への適用です。研究開発費に毎年1兆円規模を投じるトヨタ自動車は、22年度は915億円の減税を受けたと推定されています。
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
租税特別措置法に規定された政策減税です。その事業年度の控除対象雇用者給与支給増加額の15%から40%相当額の法人税額の特別控除ができる制度です。22年度の減税額は全体で5150億円となっており、最近では研究開発減税に次ぐ減税額です。
法人に利益が出て、法人税額が発生した時に法人税から控除できる仕組みのため、赤字の中小企業には何の支援にもなりません。大企業優遇税制を廃止して、それを財源に、中小企業には社会保険料の減免など直接支援することが求められています。
③受取配当益金不算入
子会社などからの受取配当金について、法人税法上の利益から除き課税しないものです。持株比率3分の1以上の株式の配当のすべて、5%以上3分の1未満の株式の配当の50%、5%未満の株式の配当の20%が、受取配当益金不算入として利益から除かれて減税になります。受取配当はたとえ100%子会社からの配当であっても、別法人から所得が移転した収入です。これを利益から除くことは、その企業に対する優遇措置です。
④外国子会社配当益金不算入
国内の法人が外国子会社(持株比率25%以上)から受ける配当の95%を、法人税法上の利益から除き課税しないものです。外国子会社に蓄積した利益を国内に還流するためと説明されますが、③の受取配当益金不算入と同様の理由により、グローバル大企業優遇措置です。
⑤連結納税(グループ通算制度)
22年度からグループ通算制度に改定されました。グループ内の各法人を納税単位として、各法人が法人税額の計算および申告を行い、その中で損益通算(赤字と黒字の相殺)を行うものです。グループ内の課税所得が減り、減税となる大企業優遇税制です。


国民政治協会に2000万円以上の献金をした企業・団体
(2022年・万円)
日本自動車工業会7800
日本電機工業会7700
日本鉄鋼連盟6000
住友化学5000
石油連盟5000
トヨタ自動車5000
キヤノン4000
不動産協会4000
日産自動車3700
野村HD3500
日立製作所3500
三菱重工3300
大和証券G本社3200
東レ3000
プレハブ建築協会3000
パナソニックHD2850
伊藤忠商事2800
住友商事2800
丸紅2800
三井物産2800
三菱商事2800
日本製鉄2700
ゼンショーHD2500
本田技研2500
日本鉱業協会2100
ソニーG2000
JR東日本2000
日野自動車2000
みずほFG2000
三井住友銀行2000
三井不動産2000
三菱電機2000
三菱UFJ銀行2000
JR東海2000
総務省「政治資金収支報告書」から作成。HDはホールディングス、Gはグループ、FGはフィナンシャルグループ


公平を犠牲に
なぜ税の公平を犠牲にして、大企業優遇税制が続くのでしょうか。自民党への企業・団体献金があるからです。財界人は「企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」と述べています。
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月11日付掲載


さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。
大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
③受取配当益金不算入
④外国子会社配当益金不算入
⑤連結納税(グループ通算制度)
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。

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法人税減税の実態④ 大企業に隠れた補助金

2024-08-15 06:54:05 | 予算・税金・消費税・社会保障など
法人税減税の実態④ 大企業に隠れた補助金

不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん

消費税導入後35年、法人税率は半分に減税された上、大企業はその法人税の半分しか負担していない実態を見てきました。
大企業減税の原因は何でしょうか。「租税特別措置」といわれるさまざまな大企業優遇税制です。特定の者がもっぱら優遇を受ける租税特別措置とはどういうものでしょうか。

租税特別措置
税法学者の北野弘久日大名誉教授(故人)は次のように述べていました。
「租税特別措置とは、広く合理的な理由なしに憲法の応能負担原則を犠牲にして、特定の納税者の税負担を傾斜的に軽減する措置を意味する。
この意味における租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などをあげています。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道しました。
研究開発減税や賃上げ減税について「投資額などに応じて減税規模が大きくなるため、結果として大企業に恩恵が偏る傾向がある。企業全体の約0・2%しかない『資本金100億円超』の企業が研究開発減税の約65%、賃上げ減税の約24%を占めている」と指摘しました。


2021年度の大企業減税額の試算
(1)租税特別措置による大企業の減税額
減税項目減税額概要
租税特別措置法関係1兆2374億円試験研究費の税額控除など
法人税法の租税特別措置受取配当益金不算入2兆3255億円受取配当を利益から除き、減税するもの
外国子会社配当益金不算入1兆4483億円外国籍企業の外国子会社からの配当の95%を利益から除く減税
連結納税9147億円国内子会社の所得を親会社の所得と合算して法人税を計算する仕組み。連結納税グループ企業の中に赤字法人があると、各企業の黒字と赤字が相殺されるため課税所得が減り、個別に納税するより法人税が減税になる
合計①5兆9259億円
財務省「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」、国税庁「会社標本調査結果」(税務統計から見た法人企業の実態)、「2021事務年度、法人税等の申告(課税)実績の概要」から菅隆徳税理士が計算、作成。


1年約6兆円
同時に、法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。
では、租税特別措置による大企業の減税額は一体いくらあるのでしょうか。21年度について、財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」、国税庁の「会社標本調査」(税務統計から見た法人企業の実態)などからみました(表)。大企業というのは資本金10億円超の大法人と連結法人のことです。
減税額は租税特別措置法関係で1兆2374億円、法人税法関係で4兆6885億円、合計で5兆9259億円にも達しています。
ちなみに、21年度の法人税収は14兆円ですから、いかに多額な大企業減税が行われているかわかります。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月10日付掲載


租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などを。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道。
法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。

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法人税減税の実態③ 法人税は「5億円の壁」

2024-08-14 06:34:21 | 予算・税金・消費税・社会保障など
法人税減税の実態③ 法人税は「5億円の壁」

不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん

岸田文雄首相は以前、「所得税には1億円の壁がある。これは是正すべきだ」と言っていました。
所得税は所得が増えると税率も上がる累進課税だから、高所得者ほど税負担率は高いはずです。ところが統計によると、所得が1億円になるまでは徐々に税負担率は上がっていきますが、1億円の26・6%をピークにして逆に下がり始めます。所得100億円の人は19・0%まで下がってしまうのです。(2021年分)
応能負担原則により税金は能力に応じて負担すべきものですから、これは不公平です。原因は富裕層の所得の大部分を占める、株の配当や譲渡に対する課税が、他の所得と合算されず、極端に低い15%の税率になっていることにあります。ところで、法人税には「5億円の壁」があるのです。




優遇税制受け
大企業と中小企業の法人税の実質負担率を政府の統計資料から計算しました(グラフ)。法人の資本金規模ごとに、法人税の実質負担率がどうなっているかを示したものです。資本金1億円以下の中小企業は15・7%から19・8%ですが、資本金1億円超5億円未満の法人は21・0%になります。それをピークに資本金が50億円、100億円と増えるにしたがって税負担率は15・6%、13・3%と逆に下がっています。
なぜでしょうか。法人税率は累進税率ではなく、一律の23・2%ですから、大企業も同じ税負担率のはずです(中小企業は所得800万円まで低い税率の適用があるので、若干低くなります)。大企業は前回も触れたように、大企業優遇税制の恩恵を受けているために結果的に低い実質負担率となっているのです。
連結法人は5・9%と極端に低くなっています。連結法人というのは、大企業が100%子会社を含めてグループで法人1単位として申告・納税することができる連結納税制度を適用している法人です。子会社に赤字法人があると、親会社の黒字と所得が椙殺されて、課税所得が減ってしまうので減税になります。大企業優遇税制です。(22年度からグループ通算制度へ改定)
このグラフのデータを中小企業(資本金1億円以下)、中堅企業(資本金1億円~10億円)、大企業(資本金10億円超+連結法人)と区分して、実質法人税負担率を計算しました。(表)


大企業、中小企業の実質法人税負担率(2021年度)
所得金額①法人税額②負担割合③(②/①)
中小企業
資本金1億円以下
302,723億円56,417億円18.6%
中堅企業
資本金1~10億円
81,82317,05320.8%
大企業
資本金10億円超+連結法人
603,34158,9939.8%
(出所)国税庁2020、21年度分「会社標本調査」「2021事務年度、法人税等の申告(課税)事績の概要」をもとに、菅隆徳税理士が喫質所得金額を計算し、作成。


逆累進構造に
中小企業の法人税の負担率は18・6%、中堅企業は20・8%、大企業は9・8%となりました。大企業は中小企業の半分しか法人税を支払っていないのです。こういう現実について、富岡幸雄中央大学名誉教授(故人)は「日本の法人税をほぼ法定税率通りに払っているのは、黒字を出した中小企業で、日本の法人税の現状は巨大企業が極小の税負担で中小企業が極大の税負担となり、企業規模別の視点では逆累進構造となっている」(『文芸春秋』12年5月号)と述べています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月9日付掲載


資本金1億円以下の中小企業は15・7%から19・8%ですが、資本金1億円超5億円未満の法人は21・0%になります。それをピークに資本金が50億円、100億円と増えるにしたがって税負担率は15・6%、13・3%と逆に下がっています。
なぜでしょうか。法人税率は累進税率ではなく、一律の23・2%ですから、大企業も同じ税負担率のはずです(中小企業は所得800万円まで低い税率の適用があるので、若干低くなります)。大企業は前回も触れたように、大企業優遇税制の恩恵を受けているために結果的に低い実質負担率となっている。
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