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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

法人税減税の実態② 上位20社負担 14%のみ

2024-08-13 05:59:05 | 予算・税金・消費税・社会保障など
法人税減税の実態② 上位20社負担 14%のみ

不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん

上場企業は3年連続最高益と報道されています(「日経」5月24日付)。2023年度(24年3月期)の純利益は前期比20%増の46兆8285億円。値上げ、販売増、円安が貢献しているといいます。大企業は21年度から23年度まで史上最高益を続けています。
これらの大企業はどれくらい税金を支払っているのか、公開されている22年度の有価証券報告書から分析しました。(表)
税引前純利益の大きい順に上位20社(持株会社、金融業は除く)について、①税引前純利益②法人3税(支払った税金)③法定実効税率(各社が公表している法定税率)④実質負担率(②÷①)―を計算しました。
法人3税というのは、利益の出た法人の支払う税金で、①法人税(国税)②法人住民税(地方税)③法人事業税(地方税)―の合計のことです。
出た利益に対して減税措置などがあるので、利益=所得とはなりませんが、所得に税率をかけて税額が決まります。つまり、利益に税率をかけたものが、ほぼ本来支払うべき税額と考えられます。


主な大企業の法人3税負担率
企業名 2022年度
①税引前純利益(億円)②法人3税(億円)③法定実効税率(%)④負担率②÷①(%)
トヨタ自動車 35,2085,91930.116.8
日本電信電話18,1765,24931.528.8
三菱商事 12,99230430.62.3
ソニーグループ11,8032,36631.520.0
日立製作所 10,32476530.57.4
三井物産 8,97517631.02.0
KDDI 7,5891,93330.625.5
伊藤忠商事 7,05775931.010.8
本田技研工業 6,47471130.211.0
任天堂 6,2991,58230.525.1
日本郵船 6,2441328.60.2
東京エレクトロン 5,8551,08830.618.6
日本製鉄 5,3337030.61.3
中外製薬 5,1921,60930.531.0
ソフトバンク 4,8121,36230.628.3
商船三井 4,6543128.70.7
住友商事 4,092-1731.0-0.4
川崎汽船 3,960-2128.5-0.5
丸紅 3,388-1131.0-0.3
日本たばこ産業 3,10117730.45.7
合計・平均 71,52824,06530.414.0
(注)持株会社、金融業は除く。法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)の負担金額を税引前純利益の金額で除して実際の負担率を計算。法定実効税率は各社の有価証券報告書に記載されている税率。
(出所)各社の有価証券報告書に記載された個別損益計算書から菅隆徳税理士が作成。「連」とある会社は連結損益計算書から作成。個別損益計算書が実質持株会社化している場合などに、連結損益計算書を採用している。


大企業優遇で
トヨタ自動車の場合、税引前利益は3兆5208億円、法人3税は5919億円、法定実効税率は30・1%です。税引前利益に30・1%をかけると1兆597億円となりますが、実際に支払った税金は5919億円でした。そこで実質負担率は、分子に法人3税5919億円、分母に税引前利益3兆5208億円で計算すると16・8%となりました。
なぜこんなに少ない税負担になっているのでしょうか。それは大企業優遇税制による減税があるからです。有価証券報告書の資料からわかる範囲で、「受取配当益金不算入」という減税制度で4401億円、研究開発減税制度で810億円、合計で5211億円の減税になっていると推定されます。
三菱商事の場合、税引前利益は1兆2992億円、法人3税は304億円、法定実効税率は30・6%です。税引前利益に30・6%をかけると3975億円となりますが、実際に支払った税金は304億円でした。実質負担率は2・3%となりました。有価証券報告書の資料からわかる範囲で「受取配当益金不算入」で3755億円の減税になっていると推定されます。

税率半分未満
このようにして上位20社の実質負担率を計算してみると、法定実効税率平均30・4%に対して、実質負担率の平均はわずか14・0%でした。
「法人税の税収力の低下」の理由の第二に、大企業優遇税制で大企業が多額の減税になっていることを述べましたが、これが史上最高益を上げている大企業の減税の実態なのです。消費税導入後、法人税率は半減しました。その半減した法人税の半分も、大企業は支払っていないという実態が明らかになったのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月8日付掲載


利益に税率をかけたものが、ほぼ本来支払うべき税額と考えられます。
トヨタ自動車の場合、税引前利益は3兆5208億円、法人3税は5919億円、法定実効税率は30・1%。税引前利益に30・1%をかけると1兆597億円となりますが、実際に支払った税金は5919億円。そこで実質負担率は、分子に法人3税5919億円、分母に税引前利益3兆5208億円で計算すると16・8%となりました。
なぜこんなに少ない税負担になっているのでしょうか。それは大企業優遇税制による減税があるからです。有価証券報告書の資料からわかる範囲で、「受取配当益金不算入」という減税制度で4401億円、研究開発減税制度で810億円、合計で5211億円の減税になっていると推定。
消費税導入後、法人税率は半減しました。その半減した法人税の半分も、大企業は支払っていないという実態。
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法人税減税の実態① 穴埋めに消えた消費税

2024-08-12 07:10:12 | 予算・税金・消費税・社会保障など
法人税減税の実態① 穴埋めに消えた消費税

日本では大企業ほど税負担が減る傾向があります。そのからくりについて、不公平な税制をただす会共同代表を務める税理士の菅隆徳さんが解説します。(寄稿)

不公平税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん

1989年に消費税が導入されてから35年になります。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入されました。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというものです。消費税が導入された後も、財界は法人税減税と消費税増税を繰り返し要求してきました。その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税されています。これによって、大企業と富裕層は潤い、中小企業と庶民は消費税の重みに苦しんできた―。これがよく言われる「失われた30年」の実態ではないでしょうか。


国の税収の推移(兆円)
税目1990年度①2020年度②増減(②-①)
所得税26.019.2△6.8
法人税18.411.2△7.2
小計44.430.4△14.0
消費税4.621.016.4
その他11.19.4△1.7
税収合計60.160.80.7
国税庁ホームページ「一般会計税収の推移」等をもとに、菅隆徳税理士が作成


「減税は失敗」
最近この法人税減税というのは失敗だったのではないかということが話題になっています。昨年12月に発表された2024年度の「与党税制改正大綱」は、法人税の引き下げで前向きな投資や継続的・積極的な賃上げを目指してきたものの賃金や国内投資は低迷し、企業の内部留保や現預金が大幅に増える結果となったとして、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」「法人税の税収力が低下している」と失敗を認めています。
この法人税減税の実態について一目でわかるグラフを作りました。消費税が導入されてから30年間で、法人税率、法人所得、法人税収はどう変わったかを示したものです。
法人税というのは法人所得に課税されるものなので、法人所得が増えれば法人税収も必ず増えるはずです。ところが法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っているのです。なぜこういうことが起こるのでしょうか。




応分の負担を
第一に、法人税率を大幅に引き下げてきたことです。第二に、大企業優遇税制で、大企業が多額の減税となっていることです。第三に、法人税率が累進税率ではなく、一律23・2%の税率なので、大きな利益を上げている大企業には応分の負担となっていないということです。
消費税導入30年の国の税収の税目別明細を比べると1990年度と2020年度で税収合計は約60兆円と、ほとんど変わらないのに、所得税収は6・8兆円減、法人税収は7・2兆円減、消費税収は16・4兆円増でした(表)。消費税収は法人税と所得税の減税の穴埋めに使われてしまったのです。(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月6日付掲載


1989年に消費税が導入されてから35年に。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというもの。
その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税。
法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っている。
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経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑩ エネルギー 露骨な原発回帰方針

2024-08-01 07:18:52 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑩ エネルギー 露骨な原発回帰方針

骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出しています。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったものです。
岸田文雄政権の原発回帰を受け、財界や投資家の熱量も上がっています。東京電力をはじめ原発を保有する大手電力の株価が春から大幅に上昇。経団連は7月19日まで開いた「夏季フォーラム」で「(原発の)再稼働、新増設・リプレース計画の具体化を急ぐ」よう求める提言をまとめ、その場で岸田首相に手渡しました。



女川原発の再稼働反対と廃炉を訴えて町内をデモ行進する人たち=7月7日、宮城県女川町

特定企業を優遇
骨太方針は、24年度中をめどに「GX国家戦略」を策定するとともに、「エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」を改定するとしています。
GX(グリーントランスフォーメーション)は化石燃料に依存した社会を転換することです。しかし、岸田政権のGXは、電気自動車やグリーンスチール(鉄鋼)、グリーンケミカル(化学製品)など特定の大企業に対する税制優遇が中心です。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍です。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているからです。GX国家戦略の策定やエネルギー基本計画の改定をめぐる動向に注意が必要です。
岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、石炭に水素やアンモニアを混ぜて使う火力発電の混焼技術の開発推進を掲げています。混焼による温室効果ガス排出の削減効果は極めて限定的です。主要7力国(G7)のうち日本以外の6力国は、温室効果ガスを大量に排出する石炭火発の廃止年限をすでに明示しており、石炭火発に固執する岸田政権の姿勢は世界でも異常です。
原発は東京電力福島第1原発事故はじめ重大事故を繰り返し、そのたびに火力発電の稼働率を高める結果を招いてきました。原発回帰は危険なだけでなく、電力の安定供給や脱炭素にも逆行します。

再エネこそ本道
岸田政権は、石炭について「調達に係る地政学リスクが最も低く」「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」(エネルギー基本計画)と位置づけてきました。しかし、ロシアのウクライナ侵略を契機とした価格高騰や円安によって電気料金値上げの一因となっています。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道です。(佐久間亮)
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月31日付掲載


骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出し。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったもの。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているから。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道。
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経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑨ 食料安全保障 農業崩壊の反省なし

2024-07-31 07:14:09 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑨ 食料安全保障 農業崩壊の反省なし

骨太方針は通常国会で成立した食料・農業・農村基本法の改定を受けて初動5年間で食料安全保障強化に向けた「農業の構造転換を集中的に推し進め」ると表明し、そのために「24年度中に基本計画を改定し、施策を充実・強化する」ことなどを提起しています。
改定基本法は食料自給率の低迷、農村の崩壊の広がりなど今日の危機を招いた根本原因―農産物の際限ない輸入自由化や農業の市場まかせ、競争力のない中小経営の淘汰(とうた)など―へのまともな検証や反省もないまま、その延長線上で農政の方向を打ちだしたものです。それを受けた骨太方針に危機の根本的打開を期待することはできません。



「食料・農業・農村基本法」改定案の衆院採決強行に抗議する人たち=4月19日、衆院第2議員会館前

海外依存の宣言
骨太方針は食料安全保障の強化にむけ「食料自給率その他の新たな目標設定」を掲げますが、これまで唯一の目標としてきた自給率向上を「その他の課題」の一つに格下げした改定法にあわせた提起です。また「安定した輸入の確保」も改定法で新たに明記した項目であり、不安定化する海外に食料を今後も依存し続ける宣言にほかなりません。
骨太方針は「輸入依存度の高い食料・生産資材の国内生産力拡大等の構造転換を推進する」とうたいます。しかし輸入自由化や市場まかせの路線のままでは本格的な実現の展望は開けないでしょう。
法改定では、高騰する生産費の販売価格への「適正な転嫁」も焦点の一つになりましたが、骨太方針は「食料の合理的な価格の形成」のための「法制度について次期通常国会への提出を目指す」としています。
改正法が「需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ、…生産から消費に至る各段階の関係者が合理的な費用を考慮しなければならない」としたことを受けたものですが、市場原理を前提に民間企業の取引に考慮せよと求めているのにすぎません。
骨太方針は「所得の向上」について「収益力の向上の実現」を通じて図るとしています。農業者などに努力を求めるだけで、欧米諸国のように政府の責任で手厚い価格保障や所得補償で農業所得を支える姿勢はありません。これでは、「農業の持続的発展」「農村の振興」は望めません。
環境負荷低減の取り組みを強調し、「(各種補助金の支給と関連させる)クロスコンプライアンスの実施や有機農業等の先進的な取組への後押し」をするとしています。環境負荷の低減は必要ですが、農業者の選別や負担の強化になってはなりません。
また「サービス事業体の育成」「食品産業と連携した農業法人の経営基盤強化」「スマート技術の開発と生産方式の転換」「人口減少に対応した…土地改良法制について次期通常国会提出」などを列記しています。これらは、担い手の減少という現実への対応という面もありますが、農外企業の農業・農村支配を拡大し、農業者のいっそうの減少、農村の崩壊を加速することになりかねません。

抜本的予算増を
中山間地域の農地保全や粗放的利用対策、農村関係人口の増加、鳥獣害対策、棚田地域の振興など農山村が直面する切実な課題にも言及しています。これらの対策は、農業者が安心して営農に励み、農村に暮らせる土台を国の責任で整えることと結びついてこそ本格的に生きます。そのためには、農業を国の基幹的生産部門に位置づけ、農林水産予算を既存の枠にとらわれず抜本的な増額が必要です。
(日本共産党国民運動委員会 橋本正一)
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月30日付掲載


骨太方針は食料安全保障の強化にむけ「食料自給率その他の新たな目標設定」を掲げますが、これまで唯一の目標としてきた自給率向上を「その他の課題」の一つに格下げした改定法にあわせた提起。また「安定した輸入の確保」も改定法で新たに明記した項目であり、不安定化する海外に食料を今後も依存し続ける宣言にほかなりません。
骨太方針は「輸入依存度の高い食料・生産資材の国内生産力拡大等の構造転換を推進する」とうたいます。しかし輸入自由化や市場まかせの路線のままでは本格的な実現の展望は開けないでしょう。
骨太方針は「所得の向上」について「収益力の向上の実現」を通じて図ると。農業者などに努力を求めるだけで、欧米諸国のように政府の責任で手厚い価格保障や所得補償で農業所得を支える姿勢はありません。これでは、「農業の持続的発展」「農村の振興」は望めません。

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経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

2024-07-30 07:23:27 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

この30年間、日本の大企業は国内雇用を減らし、成長の源泉となるイノベーション(新技術開発)でも後退した結果、国内経済をけん引し、維持する能力をますます低下させています。
岸田文雄政権は「成長分野への労働・資本の移動・新陳代謝の促進」(「経済産業政策新機軸部会第2次中間整理」2023年6月27日)による打開を掲げています。これは中小企業などの再編・淘汰(とうた)を進め、技術や知的財産、専門人材、労働力を吸収し、大企業の競争力強化につなげる狙いです。

大企業へと再編
この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進するとしています。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわになっています。
例えば「大企業と中小・小規模企業・スタートアップの間の協力関係の確立」を掲げていますが、日本商工会議所が「知財侵害の抑止強化が不可欠」(「知的財産政策に関する意見」24年4月18日)と訴えるほど中小企業の特許やノウハウなどの知的財産が大企業に奪われる問題が深刻化しており、実行計画も「下請代金法の執行強化」を言わざるを得ません。
M&Aの推進をめぐっても、規制業法が存在しないもとで悪質な仲介業者が跋扈(ばっこ)してトラブルが多発。事態を放置できず、実行計画で対策を示しましたが、場当たり的で部分的な内容にすぎません。
経営難に陥った企業が金融機関などの債権者と調整しながら再建をめざす「私的整理」については、迅速な事業再生のためとして債権者の多数決で進められるようにする法改定を盛り込みました。しかし、芳野友子連合会長ですら新しい資本主義実現会議(24年3月26日)で「手続きの透明性や関係者間の公平性が確保できない」と反対。岸田政権はこうした矛盾を強権的に突破しようとしています。



「新しい資本主義実現会議」で中小企業のM&Aなどについて発言する岸田文雄首相(右から2人目)=3月26日(首相官邸のホームページから)

規制骨抜き恐れ
他方、多くの中小企業が望む価格転嫁対策や賃上げ支援については「労務費等の価格転嫁の推進」に向けて下請代金法の改正検討の記述があるものの、5月28日の自民党政務調査会の提言が「下請け」の定義そのものの撤廃を迫るなど、下請けいじめ根絶の責任を放棄し、規制を骨抜きにする恐れがあります。
また税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
一握りの成長企業への支援政策は既に破たんしています。1999年の中小企業基本法改定で市場原理主義的理念に基づいて中堅企業やベンチャー企業への重点支援に転換した結果、企業数が2021年までに150万社も減少し、社会に貧困と格差をもたらしました。4月24日の衆院経済産業委員会で笠井亮議員にこの認識を問われた斎藤健経産相は「いろいろなケースがあり得る」などと言い放ちました。
「失われた30年」への反省もなく大企業・財界や政権与党の都合で中小企業を利用し、淘汰に誘導するのが岸田政権の「新しい資本主義」です。
(日本共産党国会議員団事務局 中平智之)^(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月28日付掲載


この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進すると。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわに。
税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
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