く~にゃん雑記帳

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<奈良県立万葉文化館> 彬子女王と中西進氏が対談「日本の美を語る」

2016年10月24日 | メモ

【開館15周年記念「万葉の日記念フォーラム」で

 奈良県立万葉文化館で23日、開館15周年記念の「万葉の日記念フォーラム」が開かれ、近代美術史の研究者として知られる彬子女王と同館の初代館長で文学博士の中西進氏が「日本の美を語る―文学と絵画」をテーマに対談した。コーディネーターは朝日新聞編集委員の大西若人氏。対談の内容は東西の文化の違いから子どもへの伝統的な日本文化の伝承まで多岐にわたり、抽選に当たった聴衆300人がお二人の熱い対談に聴き入った。

 彬子さまは学習院大学卒業後、英国オックスフォード大学に留学。主に海外に流失した日本美術に関する調査・研究に取り組み、2010年に博士号を取得した。皇族の博士号は秋篠宮さまに次いで2人目、女性皇族としては初めて。現在は各地の大学の特別招聘教授や研究員などとして学究に励む傍ら、子どもたちに日本の伝統文化を伝える目的で立ち上げた「心游舎」や「中近東文化センター」「日本・トルコ協会」などの総裁を務めている。一方、中西氏は日本文化の研究・評論活動で知られ、日本学士院賞、菊池寛など数多くの賞を受賞している。文化功労者。現在は社団法人日本学基金理事長、全国大学国語国文学会長などを務める。

 対談はまず日本文化の〝流失問題〟から始まった。明治維新の時期や終戦直後、日本の多くの美術工芸品が二束三文で欧米に渡ったが、彬子さまは浮世絵を例に挙げながら「日本人が興味を持っていなかったものに外国人が興味を持った。おかげで戦争や震災、火災などで壊れたり焼失したりせず、今外国で見ることができる。しかも体系的なコレクションとなって、日本での評価も高まった」と話された。さらに「日本の美術史は西洋と日本の相互の関係の中で影響を受けながら独自のものが作り上げられてきた」とも。

 中西氏は「絵画と違って文学は(東西の交流が)遅い」とし「ヨーロッパにはヨーロッパの美学・詩学がある。ダブルスタンダードの対極として、常に違った物差しを当てることが大切」と語った。彬子さまは「翻訳本に対する限界を感じることがある。源氏物語の翻訳本には違和感を感じた。日本語は形容詞で語る文学で、英語は動詞で語る文学と思う」とし、ノーベル賞の文学賞に選ばれたボブ・ディランの歌詞についても「原文に当たることが大事では」と話された。

 外国人が理解しにくいものに「余白の美」がある。中西氏は「余白(という表現)には誤解がある。『風神雷神図』(俵屋宗達筆)のあれは〝余白〟ではなく〝有白〟」とし、「カキツバタの絵を見て外国人は宙に浮いて根がないと言うが、根っこを描かなくても根っこはそこにある」と話した。カキツバタは尾形光琳の屏風絵『燕子花(かきつばた)図』などを念頭に置いた発言だろう。彬子さまは「日本人が当たり前と思っていることを外国人はそう思っていない。文化の違いから相容れない部分もあるが、どう折り合いをつけるかが大切ではないか」と話された。

 対談は終盤、子どもへの文化の継承に及んだ。「心游舎」の発起人代表でもある彬子さまは主にお寺や神社で子どもたちに本物の日本の伝統文化を伝える活動に取り組まれている。「トップダウンではなく下からのボトムアップの方式で日本文化を守っていかないといけない。未来を担う子どもたちに(日本文化に触れて)楽しいなと思ってもらいたい」と話す。つい最近も石清水八幡宮(京都府八幡市)で小中学生を対象にワークショップを開いたそうだ。子たちからは「なんで?」と問われることも多い。彬子さまは「大人になると『なんで』と考えなくなりがち。考えると新しく気付くこともある」と話されていた。


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