【眼下にコバルトブルーの太平洋が広がる景勝地「知念岬」】
16年前の2000年、「琉球王国のグスク(城)及び関連遺産群」がユネスコの世界遺産に登録された。沖縄県南部の南城市にある「斎場御嶽(せーふぁうたき)」はその関連遺産群の一つ。「御嶽」は沖縄の聖なる祈りの場を意味し、斎場御嶽は琉球の創世神話に登場する7つの御嶽の中で最も格式が高いとされる。琉球王国で神の声を聞き祭祀を司るのは国王の親族の女性と決まっていたという。今でこそ誰でも御嶽に足を踏み入れることができるが、もともとは男子禁制で国王でさえ途中までしか入ることができなかったそうだ。
石碑のそばの「御門口」から入って緩やかな上りの石畳を進むこと10分あまり。樹木が鬱蒼と茂る中、「大庫理(うふぐーい)」「寄満(ゆいんち)」などと呼ばれる拝所(祈りの場)を過ぎると、間もなく三角形の巨大な岩のトンネルで有名な「三庫理(さんぐーい)」が見えてきた。なるほど神秘的な光景。奥に進むと、左手の樹間から久高島(くだかじま)が見えた。琉球開闢(かいびゃく)の祖神が降り立った場所といわれ「神の島」と呼ばれる。琉球王国時代、国家的な祭事の際にはその島から聖なる白砂を運び御嶽全体に敷き詰めたという。
「大庫理」「寄満」「三庫理」の三カ所はいずれも首里城内にある部屋と同じ名前を持っており、当時の首里城と斎場御嶽の深い関わりを示す。「三庫理」などからは金製の勾玉(まがたま)や中国の青磁気、銭貨なども見つかっており、国の重要文化財に指定されている。石畳の中ほどに水がたまった「艦砲穴」があった。1945年の沖縄戦の際に撃ち込まれた砲弾の跡。終戦直後には沖縄本島内の至る所にあったが、大半は埋められたりして残っていないという。この穴はいわば沖縄戦の凄まじさを物語る〝生き証人〟だ。
斎場御嶽に向かう途中、太平洋に突き出た「知念岬公園」に立ち寄った。公園といっても東屋と岬の突端に下りる散策路があるぐらい。ただ眼下に広がるリーフとコバルトブルーの海、その先に伸びる水平線の眺めはまさに絶景の一言だった。ここからも神の島・久高島が望める。知念岬は日の出を拝む絶好の場所という。また夜になると満天の星空を満喫できるそうだ。そんな幻想的な光景をいつでも体感できる地元の方々がちょっとうらやましく思えた。