く~にゃん雑記帳

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<和歌山県立博物館> 特別展「きのくにの名宝」

2021年11月19日 | 考古・歴史

【飛鳥時代の仏像から芦雪・応挙の襖絵まで】

 和歌山県は文化財の宝庫だ。国宝だけで36件(建築7件、美術工芸・古文書など29件)もあり、全国では東京・京都・奈良・大阪・滋賀に次いで6番目に多い。重要文化財も394件で全国7位。県内に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の高野山や熊野三山があり、江戸時代には御三家の一つとして城下町が発展し多様な文化が育まれたことなどが背景にある。これらのお宝を一堂に集めた特別展「きのくにの名宝 和歌山県の国宝・重要文化財」が和歌山県立博物館(和歌山城南側)で開かれている。

 

 県立博物館の創立50周年を記念した展覧会で、①きのくにの仏像と神像②きのくに荘園の世界③国宝・熊野速玉大社の古神宝類④紀州東照宮の名宝⑤芦雪・応挙 紀南寺院の障壁画――の5章で構成する。総展示数は前後期合わせて156点で、国宝35点と重文51点を含む。そのほかのものも大半が重要有形民俗文化財や和歌山県の文化財などに指定されている。展示内容は社寺に伝わる仏像・神像から奉納された名刀や武具、荘園にまつわる古文書、さらには江戸時代の絵師長沢芦雪や円山応挙の襖絵まで実に多岐に渡る。

 ①では飛鳥・奈良時代~鎌倉・南北朝時代の仏像・神像がずらりと並ぶ。県内最古の仏像といわれるのが極楽寺(かつらぎ町)所蔵の金銅仏菩薩半跏像(7世紀、高さ22㎝)で、本尊の如意輪観音半跏像の像内から見つかった。那智の滝への参道沿いの那智経塚から1918年に発見された仏像群も展示されている。熊野速玉大社(新宮市)の国宝神像4体は平安時代の作。主神の「熊野速玉大神坐像」が髭を蓄え威厳があるのに対し、女神像の「夫須美大神坐像」はふくよかで柔和な面持ちと、対照的な表情を浮かべる。

 ②で目を引いたのが金剛峯寺(高野町)蔵の国宝「阿弖河荘(あてがわのしょう)上村百姓等申状」。現在の有田川町の農民たちが1275年(鎌倉時代)、地頭による横暴なやり方をカタカナで言上状を記し荘園領主に訴えた。地頭が逃亡した百姓の田に麦をまかないなら妻子の「ミミヲキリ ハナヲソリ カミヲキリテ アマニナシテ…」と恫喝する様子などをリアルに13項目にわたって列挙する。国宝指定の古文書としてすぐ思い浮かぶのは天皇の宸翰(しんかん)や勅書、名僧の墨蹟や経典など。一般庶民が書いたこうした文書は数少ないに違いない。③には「金銀装鳥頸太刀」など熊野速玉大社の国宝古神宝類25点、④には紀州和歌山藩初代藩主徳川頼宣が創建した紀州東照宮に伝わる父家康の遺品などが並ぶ。

 ⑤の展示品はがらっと変わって江戸時代の絵師長沢芦雪の作品が中心。芦雪は1786~87年、師・円山応挙の名代として南紀の寺院を訪ね歩き180面もの障壁画を残した。現在展示中の作品は成就寺(串本町)の「唐獅子図」4面、草堂寺(白浜町)の「牛図」5面と「朝顔に鼬図」2面、高山寺(田辺市)の「寒山捨得図」1幅など。「朝顔に鼬図」はアサガオの根元でイタチがトンボに狙いを定め前足を上げて身構える構図。濃淡の墨で描かれているはずなのに、気のせいかアサガオの花が青っぽく見えるのが不思議だった。応挙の「雪梅図」10面と「松月図」4面=いずれも草堂寺蔵=も展示している。会期は11月23日まで。


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