く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<和歌山県立近代美術館> 「和歌山の近現代美術の精華」展

2021年12月01日 | 美術

【和歌山県ゆかりの芸術家を網羅、建築家黒川紀章も】

 和歌山県立近代美術館(和歌山市)で「紀の国わかやま文化祭2021」との連携による展覧会「和歌山の近現代美術の精華」が開かれている。「観山、龍子から黒川紀章まで」と「島村逢紅と日本の近代写真」の2部構成。第1部では下村観山(1873~1930)や川端龍子(1885~1966)ら明治期以降の近現代美術界で大きな足跡を残した和歌山県ゆかりの画家や彫刻家、版画家らに、県立博物館と県立近代美術館を設計した黒川紀章(1934~2007)も加えて代表的な作品や資料などを展示(前後期で一部入れ替え)、第2部では和歌山市出身の島村逢紅(1890~1944)を中心に、交流のあった写真家の作品も合わせ約250点を紹介している。(写真は黒川紀章が設計した和歌山県立近代美術館、手前の銅像は「徳川吉宗公之像」)

 下村観山の作品では前期に「魔障」(東京国立博物館蔵)とその下絵の「魔障図下図」(永青文庫蔵)、試作の「白描魔障図」(和歌山県立近代美術館蔵)の3点が一堂に展示された。魔障は僧侶の修行を妨げる魔物を意味する。下絵や試作の白描画の段階では僧が対峙する相手は餓鬼のような怖い表情。ところが本画では相手が如来の姿に一変している。魔物が如来に化けたということだろうか? 本画に至るまでの試行錯誤が垣間見えるようで興味深かった。観山の作品は現在、六曲一双の屏風絵「唐茄子畑」(東京国立近代美術館蔵)などを展示中。観山の長兄で能面師や彫刻家として活躍した下村清時(1868~1922)の作品も6点展示されている。

 大作の制作で知られる川端龍子の作品は通期の「筏流し」(東京・大田区立龍子記念館蔵)と「南飛図」(和歌山市立博物館蔵)のほか前期2点、後期3点を展示。「筏流し」は熊野で切り出した木材を筏で新宮まで運ぶ光景を描いたもの。横長の大画面からせめぎ合う激流の音が聞こえ筏師の緊迫感も伝わってきた。その迫力は圧倒的! 前期展示の六曲一双「草炎」(東京国立近代美術館蔵、写真は部分)は闇夜のような紺地に金泥で描かれたクズやアザミ、タケニグサなどの野草が鮮やかに浮かび上がる。まるで蒔絵のような輝きだ。紺色に染めた料紙に金泥で経文や仏画を書写した紺地金泥経に着想を得たといわれる。現在は「新樹の曲」(東京国立近代美術館蔵)、「狩人の幻想」(県立近代美術館蔵)などの大作も展示されている。

 田辺市出身の日本画家稗田一穂(1920~2021)は戦後山本丘人に師事し、1960年代には法隆寺金堂壁画の再現模写に携わった。今年3月百歳の天寿を全うした。那智の滝など南紀地方の風景画も多く残しており、今展では海の上から那智山を仰ぎ見た「幻想那智」(県立近代美術館蔵)などを展示中。新宮市出身で画家や教育者、建築家などとして広く活躍した西村伊作(1884~1963)、有田川町出身で観山や龍子らと共に「南紀美術会」を結成した彫刻家建畠大夢(1880~1942)、東京美術学校在学中に23歳の若さで亡くなった和歌山市出身の版画家で、遺作が萩原朔太郎の第一詩集「月に吠える」に挿絵として収録された田中恭吉(1892~1915)、広川町出身の世界的な版画家で銅版画のメゾチント技法の復興に尽力した浜口陽三(1909~2000)らの作品も並ぶ。会期は12月19日まで。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <鯖江・西山公園㊦> 無数... | トップ | <飛鳥京跡苑池> 北池北側... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿