く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<奈良市写真美術館> 「新鋭展」山田省吾・正岡絵里子

2023年07月05日 | 美術

【入江泰吉「大和の路」展も同時開催中】

 入江泰吉記念奈良市写真美術館で「新鋭展」が始まった。若手写真家の作品を紹介する場として継続的に開催しており、今回は山田省吾さん(1977年兵庫県伊丹市生まれ)が「影の栞」、正岡絵里子さん(1983年愛媛県松山市生まれ)が「目の前の川で漕ぐ」というタイトルで2人の作品を取り上げている。入江泰吉の「大和の路」展も同時開催している。会期はいずれも9月10日まで。

 山田さんは1997年、ビジュアルアーツ専門学校・大阪を卒業し、2004年には大阪市北区に同校卒業生を中心とする自主運営ギャラリーを立ち上げた。タイトルの「影の栞」について山田さんはこう記す。「路上を歩いている時ふと視界の届かない向こう側では写真を撮る上で刺激的な場所が待っているかもしれないと思う事がある┄┄シャッターを切る一瞬の間だけは、目の前がそんな街である事に賭けている」。

 主な展示作品は2020~22年発表の写真集『何処彼処(どこかしこ)列記』やそれ以前の『黒い壺』『十方街(じっぽうがい)』などで発表されたもの。『何処彼処列記』はこれまでに3冊が出版され、それぞれパリ、大阪、レー・ラダック地方(インド北端)の街や人物の表情などが切り取られている。会場の導入部ではカラー写真が両壁を埋めるが、そのほかはモノクロの暗い色調の写真が大半。路地裏の闇のうごめきを感じさせるような作品もあった。バーの開店祝いだろうか、贈り主の名前を記した無数の花束がまるでごみの山かと思わせるように積まれた光景にしばし釘付けになった(写真㊤=部分)。

 正岡さんは山田さんと同じビジュアルアーツ大阪を2005年に卒業し、16年には東川町国際写真フェスティバル(北海道)の「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション」でグランプリを受賞。2017年にフランス人の夫の仕事の都合でドイツ・ミュンヘンに渡り、今は南フランスの小さな村で暮らしているという。「目の前の川で漕ぐ」というタイトルの今回の写真展は「日本を離れてから異国の地で子育てに追われる日々の中で撮った作品」。

 それに続く一文に一瞬絶句した。そこには「この春に夫との離婚を決めた」とあった。さらに「夫と離婚を決意しても尚、フランスで暮らしていくことを決めた私は、この展示のタイトルの通り毎日転覆してしまわないように、目の前の川を必死で漕ぎ続けています」。正岡さんには7歳の男児とドイツで生まれた3歳の女児がいる。会場にはこの7年間にスマホで撮り続けた家族写真などが壁4面に所狭しと展示されていた。その中には枝で作った小屋の中で寝転ぶ夫と娘の姿も。その説明文は「夫の趣味は森の枯れ木を集めて家を作ること。みんなで一緒に」。僅か1年少し前の2022年3月に撮った写真だった(写真㊦=部分)。

 「大和の路」展では入江泰吉が撮影したモノクロとカラーの写真41点を展示中。入江は生前「大和の路はすべて古社寺につながっている。すばらしい古美術にふれる感動への、いわば前奏曲のような、情緒にみちた路すがらである」と語っていたという。その大和路の中でも特にお気に入りが西の京だった。また山の辺の道については「大和路の古寺風物詩的な情趣とは隔絶した、人間的な心情の触れあいを感じさせるものがある」と書き残している。下の写真㊤「斑鳩西里柿の秋」(1968年頃)、㊦「二上山落陽」(1970年頃)=いずれも部分


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <日本音楽コンクール> 大... | トップ | <ハイタムラソウ(這田村草... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿