く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<戸畑祇園大山笠㊤>27~29日 昼の幟山笠が夜は一変、光の大ピラミッドに!

2012年07月24日 | 祭り

【重さ2.5トン、お囃子に合わせ担いで競争】

 7月の福岡県は祇園祭一色。博多祇園山笠(1~15日)に始まって小倉祇園太鼓(20~22日)、黒崎祇園(20~23日)と続き、北九州市戸畑区の戸畑祇園大山笠(27~29日)が毎年トリを飾る。200年を超える伝統を持ち、博多祇園とともに国の重要無形民俗文化財に指定されている。昼夜で山笠が姿を一変する祭りは全国的にも珍しい。昼は幟12本を立てた幟山笠。日が沈むと高さ10m、12段・309個の提灯のピラミッドに早替わりする。重さは2.5トン。これを担いで競争する。ロウソクの灯が揺れ、たまに提灯に燃え移ることも。豪快な山笠の競演は真夏の暑さも忘れさせてくれる。

   

 戸畑祇園は享和3年(1803年)、前年の悪疫退散祈願がかなったことに感謝を込めて始まった。区内の4地区から「東」「西」「天籟寺」「中原」の大山笠4基と、中学生が担ぐ小若山笠4基が繰り出す。その全8基がそろって「競演会」が行われるのは毎年、祭り中日の第4土曜日、今年は28日だ。会場は戸畑区役所前の三角形の浅生1号公園。大山笠は1基を300~500人が担当し、80~100人が交代に入れ替わりながら担ぐ。競演会ではまず昼間の幟山笠の姿で1周し、その後、飾り物を一切取り外し、夜の山笠に姿を変える。

【見どころは昼から夜への姿替えと、抜きつ抜かれつの競演】

 競演会での最初の見どころは5段上げ。山笠の台上に高さ4mの柱4本でやぐらを組み、最上段の提灯5段分を一気に上げる。次いで上から1段ずつ提灯を取り付けていく。一番下の一辺12個の提灯まで組み上がると提灯山笠の完成だ。「運行開始!」の合図で、当番山を先頭に競演が始まる。太鼓・鉦・笛の勇壮な「おおたろう囃子」に合わせ「ヨイトサ、ヨイトサ」。山笠はムカデ競走のように歩調を合わせた法被姿の男衆に担がれ、たまに斜めに傾きながら進む。毎年20万人近い観客が詰め掛け、抜きつ抜かれつの競演に大きな歓声とどよめきが起きる。

 

 山笠は京都祇園の山鉾同様、釘1本使わないで組み立てる。京都祇園は荒縄だが、戸畑祇園は自然の藤蔓(ふじかずら)で縛る。それを〝文字練り〟と呼ぶ。その蔓をどこの山林で採取するかは各山笠の〝最高機密〟。「弾力のあるいい蔓かどうかで、山の盛衰が決まる」。中にはこう言い切る人もいる。組み上がると山笠台の下部に太鼓、上部の匂欄(こうらん)台に鉦を取り付ける。運行する時には囃子方など約10人が乗り込む。囃子は「おおたろう囃子」のほかに「居神楽」「大下り」など5種類。同じ囃子でも大山笠ごとに少しずつ調子が違う。担ぐ時の掛け声「ヨイトサ」は「良い神様」から来ているとも、「どんなことでも力を合わせれば大丈夫」という意味が込められているともいわれる。

【提灯を針金で固定し、叩き落とせず丸焼けになったことも】

 提灯は麻の紐で木枠に固定する。ロウソクから燃え移ったら叩き落し、動く山笠の中ですばやく新しい提灯に付け替える。消えた時にも、すぐロウソクに灯を入れる。山笠は担ぐ速さとともに、提灯のピラミッドの美しさも競う。戦後まもなく、ある大山笠が提灯を強く固定しようと麻紐の代わりに針金で固定した。ところが提灯に灯が燃え移り、叩き落とそうとしてもできずに山笠が丸焼けになったこともあった。競演会の翌日(最終日)、山笠はそれぞれの地元に帰って運行するが、昨年はある大山笠の上部から火が出て、5段分ほどの提灯が焼け落ちるというハプニングもあった。

 山笠を担ぐのは飾りを付けない空山を含めると4日間。この間に肩の皮がむけて血がにじみ、法被に日の丸のような赤いしるしが付くことも。担ぎ手にとってそれはいわば〝勲章〟のようなもの。祭り期間中、決して弱音ははかない。が、祭りが終わると病院に駆け込む人も多いという。各大山笠は最終日の深夜から未明にかけ「狐落とし」という行事で締めくくる。祭り期間中のバカ騒ぎは〝祇園風〟にあたって狐にとりつかれていたため。それを洗い落として明日からはまともな生活に戻ることを誓うわけだ。厳粛な中、神官が「オ~」と狼のおたけびのような声を上げて白い布の上を走っていくという。「狐落とし」が終わったら、各宿に戻って後始末。くたくたの中での深夜の作業は「地獄の道具納め」とも呼ばれているそうだ。


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