【新薬師寺の五重の石塔】
薬師如来坐像を本尊とし、国宝十二神将像で広く知られる新薬師寺(奈良市高畑町)。その本堂に向かう途中、左手に五重の石塔が立つ。いつも一瞥して通り過ぎていたが、その前にある石柱を見るとこう刻まれていた。「實忠和尚御歯塔」。えっ、なぜここに?
実忠は東大寺の開山、良弁(ろうべん)僧正に師事し、二月堂を創建してお水取り(修二会)を始めたというお坊さん。新薬師寺は元々、聖武天皇の病気平癒を願って光明皇后が建立した。それにしても歯を安置した塔だったとは!
【お水取りのお松明を橋の欄干に再利用!】
その新薬師寺の庫裡の前にある池に「観楓橋」という小さな橋が架かる。苔むした欄干の向かい側の片方は長く大きな1本の竹だった。そこには「奉納 二月堂 家内安全」との墨書があり、寄進者の住所と氏名も記されていた。お水取りで使われたお松明を譲り受けたという。
【鏡神社の本殿は春日大社の旧本殿第三殿】
新薬師寺の山門すぐ南側に鏡神社が鎮座する。その本殿は“春日移しの社”と呼ばれる。春日大社の第46次式年遷宮(1746年)の際、旧本殿のうち第三殿を譲渡したとの記録があり、それを裏付けるように鏡神社で1959年に修理したとき屋根裏から「三ノ御殿」という墨書銘が見つかった。奈良市指定文化財になっている。
【古都の風情を残す石垣にブルーシートが!】
新薬師寺東側の小道には石垣や土塀が続く。古代の街道「山の辺の道」の一部を成し、古都の情緒が今も残る。ところが前方の道路脇がその風情を壊すブルーシートで覆われていた。梅雨の大雨で石垣が崩れたのだろうか。「塀⋅石垣キケン 通行注意」という紙が何枚も貼られていた。
【道端に「水草 無料」ホテイアオイなど】
先に進むと水草が入った発泡スチロールが2つ置かれていた。その上には「水草(アナカリス ホテイアオイ)無料」と書かれていた。アナカリスは熱帯魚などの水槽でよく使われる水草で、正式名をオオカナダモという。この2つの水草は環境省が「重点対策外来種」に指定し、日本生態学会による「日本の侵略的外来種ワースト100」にもなっている。このため「水草 無料」の横にも「池や川への投棄厳禁」と注意を呼び掛けていた。
【不空院、縁切りと縁結びの神様が隣り合わせ】
不空院は鑑真ゆかりの真言律宗の古刹。不空羂索観音坐像(重要文化財)を本尊とし、古くから「縁切り寺/駆け込み寺」としても信仰を集めてきた。本堂正面の左脇には「縁きりさん」(法竜大善神)と共に「縁結びさん」(市岐姫大神⋅黒竜大神)の祠が仲良く並ぶ。
【中の禰宜道、立ち枯れの杉(?)の巨木!】
「中の禰宜道」はかつて禰宜(神官)たちが社家町から行き来した道で、春日大社の二の鳥居に通じる。道の両側には原生林が広がり、小川のせせらぎが涼やかな音を奏でる。そんな中、ひときわ目立つ立ち枯れの巨木があった。観光客で溢れにぎやかな参道とは対照的に、この道は昼間でも通る人が少なく森閑としている。