く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ユリ(百合)> 気品をたたえた優美な姿が世界で大人気!

2012年07月23日 | 花の四季

【カサブランカ誕生の裏に悲しい秘話も】

 ユリ科ユリ属。日本や中国、北米、ヨーロッパなどの北半球に広く分布する。大別すると、テッポウユリ、ヤマユリ、スカシユリ、カノコユリの4種類。テッポウユリは花の形がラッパ状で、横か下向きに咲く。ヤマユリは杯状の白い花に斑点がつく。これも花は横向きか下向き。スカシユリは斑点のない杯状の花を上向きにつける。花の色は橙黄色が中心。カノコユリは花弁が大きく反り返り、鹿の子模様の斑点が特徴。「カサブランカ」(下の写真)のように花の色が白いものや赤、桃色系統はいい香りを振りまく。一方、黄色や橙色のものは香りがほとんどしないという。

 草丈は僅か10cmほどのヒメエゾスカシユリから、ヤマユリの一種で2m前後まで伸びるサクユリまで幅広い。サクユリの花は直径が30cmにもなりユリの中では最大。ユリの語源は細い茎に大きな花を付けて風に揺れるから当初「ゆる」といわれ、これが「ゆり」に変化したという。漢名の「百合」は球根の鱗茎が重なり合っていることから、その名が付いた。ヤマユリやオニユリの球根はデンプンを多く含み苦味も少ないことから「ユリ根」として雑煮や茶碗蒸しなどに使われる。オニユリなどの球根は「百合(びゃくごう)」という生薬として利尿や咳止めなどの薬効もある。

 歴史は古く、万葉集には大伴家持が詠んだ4首をはじめ11首が掲載されている。貝原益軒は著書「花譜」で「ほとんど百種に及ぶ」と書いた。江戸時代に新品種づくりが盛んだったことをうかがわせる。ユリの球根は明治時代から大正時代にかけ大量に欧米に輸出され、絹に次ぐ主要輸出品として外貨獲得にも貢献した。幕末にオランダ商館医師のシーボルトが母国に持ち帰ったのがきっかけにヨーロッパで大ブームを巻き起こしたという。キリスト教の復活祭では、ユリは「イースターリリー」として欠かせないものになっている。フランスの国の花はユリとアイリス。リヒテンシュタインでも黄色のユリ「オレンジリリー」が国花になっている。

 

 欧米では日本や中国から入ってきたユリをもとに、様々な新品種が作り出された。その代表がカサブランカ。純白の大輪で芳香を放つこの花は「ユリの女王」とも讃えられる。1980年代にオランダで、日本のヤマユリ、カノコユリにタモトユリを掛け合わせて生まれた。タモトユリは鹿児島県・トカラ列島の口之島だけに自生していた純白のユリ。戦後、これに着目した欧米の園芸業者が根こそぎ買い漁った。生活に困窮していた島民は高値に引かれ絶壁に生えていたユリの球根を競って掘ったという。県は1953年、天然記念物に指定したが、時すでに遅くほとんど絶滅状態だった。タモトユリの名は島民が掘り出した球根を次々に着物の袂(たもと)に入れたことから付いたという。カサブランカ誕生の裏にはそんな悲しい物語が隠れていた。

 ユリは多くの品種が生まれる一方で、自生種は減少傾向。環境省は2007年、九州や四国の産地に自生するカノコユリをレッドデータブックの絶滅危惧Ⅱ類に指定した。長崎県の佐世保市や西海市、福岡県宗像市、富山県魚津市などはそのカノコユリを「市の花」に制定している。テッポウユリを市の花としているのは鉄砲伝来の種子島北部にある鹿児島県西之表市や沖縄県名護市、埼玉県川口市など。岐阜県恵那市はササユリ、岩手県釜石市はハマユリ(スカシユリ)、山梨県大月市はヤマユリ。このほかにも名古屋市、福井県坂井市、茨城県結城市、高知県土佐市など、市の花としている自治体は多く、ユリ人気のほどを示している。


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