く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ハマゴウ(浜拷、浜香)> 海岸の砂地に根を張る海浜植物の代表格

2017年08月18日 | 花の四季

【真夏、円錐花序に爽やかな青紫の唇形花】

 シソ科ハマゴウ属の落葉小低木。北海道を除く日本各地の海岸の砂地に自生する海浜植物の代表格。砂の上を茎が這って伸び、7~9月頃、枝先の円錐花序に青紫色の唇形花を多数付ける。花冠の上唇は2つに、下唇は3つに裂け、雄しべ4本と先端が2つに分かれた雌しべ1本が花冠から突き出す。葉は楕円形で微細毛が密生し灰緑色。花後に黒い球形(径5~7mm)の果実ができる。

 学名は「ヴィテックス・ロツンディフォリア」。それぞれ「結ぶ」「円形の葉の」を意味する。属名はこの植物のつるでかごを編んだことによるという。花や葉、果実は爽やかな芳香を発し、乾燥したものは「蔓荊子(まんけいし)」と呼ばれて漢方薬に配合される。安眠にも効果があるとして実はかつて枕の詰め物にもされた。和名は茎が砂地を這う様から「ハマハウ」「ハマホウ」からの転訛とする説、葉を乾燥させ抹香を作ったことによる「浜香」からとする説がある。

 ハマゴウは砂地で根を張って群落をつくり、強風などで砂が流されるのを防ぐ役割を果たす。鳥取砂丘をはじめ石川県加賀市の加賀海岸、香川県観音寺市の有明浜など各地の砂浜に大きな群落がある。内陸では滋賀県近江八幡市佐波江町の琵琶湖畔に群落があり、地元では約10年前から保全のため柵の設置や下草刈りなどに取り組んでいる。2013年には県の「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」に基づき保護区に指定された。

 三好達治の詩集『砂の砦』(1946年刊)に「馬鹿の花」と題した詩がある。「花の名を馬鹿の花よと 童べの問へばこたへし 紫の花 八月の火の砂に咲く馬鹿の花」と始まる。この「馬鹿の花」はハマゴウといわれる。達治は大阪生まれだが、一時期、福井県の港町三国町(現坂井市)で暮らした。『日本植物方言集成』の中には見えないが、能登地方ではハマゴウを「馬鹿の花」と呼ぶのだろうか。それとも達治本人が真夏の焼けた砂地で花を付けながら誰も見向きもしないハマゴウをこう呼んだのか。いずれにしろ、この詩には厳しい環境の中で健気に生きるハマゴウへの温かい眼ざしがあふれている。(写真は鳥取県の浦富海水浴場で)


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