く~にゃん雑記帳

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<ムギ(麦)> 古く大陸から渡来した五穀の一つ

2022年05月12日 | 花の四季

【奈良時代には各地で栽培、万葉集にも2首】

 イネ科の1年草または越年草で、米・稗(ヒエ)・粟(アワ)・豆とともに「五穀」の一つに数えられている。麦は大麦、小麦、燕麦、ライ麦などの総称。原産地は中央アジア~西アジアの高原地帯で、乾燥や寒さに強い。日本には弥生時代に中国から朝鮮半島を経てまず大麦が伝わり、少し遅れて小麦が入ってきた。登呂遺跡(静岡市)など弥生時代の遺跡からは炭化した麦の粒が見つかっている。鎌倉時代以降、麦は稲の裏作物として国内各地で広く栽培されるように。かつては麦といえば利用範囲が広い大麦を指した。一説によると、大麦の「大」にも小麦より「価値が大きい/上等」といった意味が込められているという。大麦には実が6列に並ぶ六条大麦(小粒大麦)と2列の二条大麦(大粒大麦)があり、六条は主に北陸や関東以北、二条は九州など西日本で多く栽培されている。(写真は六条大麦)

 麦という言葉は日本最古の書物『古事記』の穀物起源神話の中に登場する。奈良時代前期の女帝元正天皇(在位715~24)は722年、大干ばつに備え晩稲・蕎麦(ソバ)とともに大麦・小麦を栽培するよう詔(みことのり)を発した。平城宮・京跡からは「小麦五斗」と記された荷札木簡や「麦埦」(むぎまり)と書かれた墨書土器などが出土している。万葉集にも麦を詠み込んだ歌が2首(いずれも作者不詳)。その一つ「馬柵(うませ)越しに麦食む駒の罵(の)らゆれど なほし恋しく思ひかねつも」(巻12-3096)。これらから奈良時代には小麦や大麦が各地で広く栽培されていたことが分かる。

 小麦はたんぱく質のグルテンを多く含み粘り気があるのが特徴。その特性から主にパンや麺類などに用いられる。一方、大麦のたんぱく質ホルデインは吸水性に富み、麦飯やビール、焼酎、醤油、味噌、麦茶などの原料として幅広く活用される。大麦や秋蒔き小麦は秋に発芽して越冬し、翌年の春には青々として穂先に花を付け、5月末~6月に収穫期を迎える。麦畑を黄金色に染める「麦秋(ばくしゅう/むぎあき)」は初夏の季語。麦にはそのほかにも「麦蒔」から始まって「麦踏」「青麦」、そして「麦刈」「麦打」「麦藁」「新麦」……と季節の移ろいを表す季語が多い。中島みゆき作詞・作曲の『麦の唄』はかつてNHK連続テレビ小説『マッサン』の主題歌になった。「なつかしい人々 なつかしい風景……」。映画のオールドファンにとって思い浮かぶのは原節子主演の映画『麦秋』(1951年、小津安二郎監督)かもしれない。「うれしけに犬の走るや麦の秋」(正岡子規)

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