く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ショウブ(菖蒲)> 端午の節句に不可欠な植物

2022年05月04日 | 花の四季

【全草に独特な香気、邪気払いや薬用に】

 ショウブ科(サトイモ科とも)ショウブ属の多年草。北半球の水辺や湿地に広く分布する。葉は細長い剣状で長さ50~150cm。中央部分には太い葉脈の中肋(ちゅうろく)が走る。5~7月ごろ、毛筆のような肉穂花序(長さ5~6cm)に無数の淡い黄緑色の小花を付ける。漢字表記は花が美しいハナショウブ(花菖蒲)やアヤメ(菖蒲)と同じ。しかも葉の形がよく似て、ショウブが古く「あやめ」や「あやめぐさ」と呼ばれていたこともあって混同しやすい。だが分類上は全く関係がない。

 ショウブの葉や茎は精油成分を多く含み、揉んだり傷つけたりすると独特な香りを漂わせる。その香気が邪気を払い疫病を除くと信じられてきた。またショウブの読みが「尚武」や「勝負」につながることから、子どもの武運長久を願う端午の節句(5月5日)に欠かせないものとされてきた。端午の節句には「菖蒲の節句」の別名も。奈良の春日大社では毎年この日「菖蒲祭」を執り行う。神前にショウブとヨモギを添えた粽(ちまき)を供えて、五穀豊穣や子どもの健やかな成長を祈る。ショウブは菖蒲湯や菖蒲酒、菖蒲枕などに利用され、乾燥した根茎は生薬「菖蒲根」として健胃や強壮剤として用いられる。

 万葉集には「あやめぐさ」として12首詠まれている。万葉仮名は「菖蒲草」「安夜女具佐」など。うち9首を大伴家持が詠んだ。その一つ「ほととぎす今来鳴き始(そ)むあやめぐさ かづらくまでに離(か)るる日あらめや」(巻19-4175)。万葉人は既にショウブが邪気を払うものと信じ、髪飾りの鬘(かづら)にしたり薬玉の材料として使ったりしていたという。「六日の菖蒲十日の菊」は手遅れで役に立たないことを表す常套句。この菖蒲の読みは「あやめ」だが、もちろん今のショウブを指す。「あやめ草足に結(むすば)ん草鞋(わらじ)の緒」(松尾芭蕉)

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